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3話-5

あの時か。転んだだけだと姉は言ったが、その時に盗られたって事なのだろう。頭までずぶ濡れになっていた姉の姿を思い出す。そこまで考えた僕はそれが何なのかという事と、そんな物が近くにいたということ、そして訳の分からないものに姉が襲われた(?)という事実がただただ恐ろしくて、口を一文字に結んだまま僕は黙り込む事しかできなくなってしまった。先程姉が何を睨んでいたのか気にはなったが、怖すぎて座卓の方を見るなんて事、到底できなかった。


しばらくそうしていたが、姉は祖母に呼ばれたことで部屋から出て行った。立ち上がり際に僕の顔を覗き込んでから、少しバツの悪そうに微笑むと頭をよしよしと撫でて「盗られたことは内緒にしておいてね」と言った。


屋根を強く叩いていた雨粒も、少しはその勢いに陰りが見られ、黒雲も北の方へと動いていく。煙っていた庭も幾分か霞が取れた感じで少し空も明るさを取り戻したようだった。


「もう少ししたら、また晴れるかな」


そう呟いた僕の声に返事が来ることはなく、誰もいない部屋に言葉が吸い込まれたみたいだった。急に心細さを感じた僕は祖母と姉がいる居間へと慌てて走って行った。結局座卓の方は見れなかった。


その後数日間、特筆すべきことは起こらなかったと思う。怠惰な夏休み小学生再びだ。きっと絵日記も代わり映えしなかっただろう。いや、ちょっと待てよ・・・この時絵日記なんてなかったかも。そんな絵を描いた記憶もないし。僕達は父の仕事の影響で何回も引っ越している、いわゆる転勤族というやつだ。中2で田舎に引っ越して父が単身赴任になるまで、通算5回の引っ越しを経験している。そのお陰で荷物のパッキングなどお手の物である。まぁこれは家族全員がそうなのだけど。何が言いたいかというと、夏休みの宿題なんかも県が違えば形態も微妙に違うし、絵日記か観察日記かとかあるよな~って話なんだけど・・・いや、こんな話はどうでもいい。


ともかく、数日後の夜にまた叔父がやって来た。


「今度は海へ行くぞー!」


祖父は今度は特に表情を崩したりはしなかった。祖母と一緒になって「誰と行くのか」とか、「どうやって行くのか」とか行先などの話を聞いていた。

叔父の話を要約すると、会社で仕事納めがあるのだが、それが毎年朝一の朝礼だけで終わるらしい。そこから盆休みが始まるそうだ。前日も大掃除だけだったようで、実に羨ましい。古き良き時代ってやつかもしれない。

で、終了後に会社の有志と打ち上げ(?)で海へ行こうとなったようだ。海へ行くならウチのチビ達もって話が動いたらしく、先日の同僚も一緒になって誘ってくれたらしい。


この時のことを姉は「あれは叔父ちゃんが彼女を誘う口実にされたんだよ」と笑っていた。

事実、叔父の車に乗って行ったのだけど、その助手席に乗っていた彼女さんと叔父は後に結婚した。よって今は僕の叔母という事になる。そんなおませさんな一面も姉にはあったのだ。

まだ続きます。

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