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2話-10

ある夜、姉が勉強していた時、突然髪を一房引っ張られたそうだ。

振り向いた時にプラスチックの焼けるような臭い、姉曰く「ダイオキシンの臭い」が漂ってきた。不審に思いドアを開けて僕の部屋の方を見ると、横向きになったおっさんの頭が床から1m位のところに浮いていたらしい。


姉も僕と同じく目が悪い。普段はコンタクトレンズだが、寝る前などはメガネになっている。この時もメガネだったのだけど、姉はアレなものを見たかな?と思った時はメガネを外して見る事にしているらしい。

どういう仕組みになっているのか分からないが、アレなものは裸眼でもはっきりと見えるのだと言う。

ここまで聞いて僕はあのおっさんを見たときのことを思い出してみた。確かに顔の造形も目に何の感情が浮かんでいない様も、更にはなぜか被っていたハンチング帽もその詳細全てが今も脳裏に焼き付いている。その時は僕も寝る前でメガネもかけていなかったのに。そう言えばメガネをかけていなかったという理由で「気のせい」だと流そうとした時期が僕にもありました。。。


で、その首はじっと僕の部屋を覗き込んでいた。ただ何の悪感情も感じなかったようで、姉もしばらく眺めて飽きたらしい。おいおいとツッコミたい気分満載だ。僕的にはその時に追い払ってくれていればあんなものを見ることもなかったのにと恨めし気な視線だけを精一杯姉に送っておいた。豪快にスルーされたけど。


数日後、ソレは再び現れた。しかしピッタリと閉ざされた扉を前にふわりふわりとしばらく漂った後に、目を押し付けるように扉を押し始めたらしい。この時の姉の感想は「そんなに中が見たいの?カッコワライ」だった。この感想を持つだけでも十分姉がアレだと分かるエピソードではないだろうか。「(笑)」はないだろう・・・僕は姉の説明の「目を押し付けるように」のくだりで鳥肌がぶわっと出たというのに。


翌朝僕の部屋からは並々ならぬ緊張感が漂っていたらしい。で件の「大丈夫?」と聞いたところ、僕から大丈夫と言われたので特に気にしなかったようだ。ただ僕の様子がいつもと違うのは姉にも分かったようで、「まぁ、覗きに全身全霊をかけてる輩に毎晩来られても困るよね」と僕の状況を判断した。・・・うん、随分軽いけど大体あっては・・・いる。


そして、あの夜姉は「毎晩覗きに来るそのモチベーションを保つ何かが部屋にあるのかも?」という嫌な結論に達したらしい。僕が部屋にいる時に来たのも、僕がいることで完成する何かがあるのかと思ったからだという。それもまた嫌な話だ。結局部屋にはアレが興味を引きそうなものは何もなかったらしいが、部屋に入る時に違和感を感じたらしい。よく見るとそこが境界になっていたのが分かったので納得したと姉は言う。なぜ部屋に何もないのが分かるのか、境界なんてものが「良く見る」と分かるのかは、教えてくれなかったし、きっと聞いてもまた謎スパイラルに陥るだけだろうから思い切ってぶん投げておいた。

まだ続きます。

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