第41話:起床
■――日本支部――
「マーシャはーん!!大変、大変やで」
「静かにしなさい。ここは病室よ」
そう、ここはミリアの病室。
ミリアはいまだに目覚めていなかった。
マーシャのその言葉に、アリアは口をつぐんだ。
しかし、すぐに用事を思い出し今度は小さな声でしゃべり始めた。
「そんな事よりも、マーシャはん、ヒロシはん、見てへん?」
「見てないわね。ヒロシがどうかしたの?」
「朝から見あたらへんのよ。まさかとは思うけど・・・」
マーシャは、そのはぐらかそうとした言葉を聞きのがさなかった。
「まさかとはって、何?」
「え?あっ・・・」
「正直に言いなさい。アリア」
「うう・・・」
その言葉に、何も言い返せずにいたアリアだったが、
しばらく問い詰められてとうとう観念したらしく、
昨日の出来事を全てマーシャに話した。
「はぁ、全くなんでそんなことをするのかしら?」
「すみません・・・」
アリアは、ただうなだれて謝るしかなかった。
少し、マーシャは考えてアリアにもう一度尋ねた。
「それで?朝、起きたらヒロシがいなかったのね?」
「あ、そうなんですよ。いつの間にかどっかに行っちゃったみたいで・・・」
アリアは思い出したようにあわてながら、ブツブツとつぶやいていた。
マーシャは、額に指を当てながらまた少し考えると、
「ヒロシの行きそうなところは、見たのね?」
「はい、もうどこを探してもいなくて・・・」
(そうなると・・・)
マーシャは、一番最悪な結論を尋ねた。
「部屋の中にヒロシの荷物はあった?戦闘に向かうときに持っていく物とか」
アリアは動きを止め、しばらくの間考えた結果。
「そういえば、荷物だけ無くなっていたような・・・」
それを、聞いたマーシャは、大きくため息をつくと病室の扉を開けた。
「どこ行くんですか?マーシャはん」
「今から、戦闘地域に向かう許可をもらってくるわ。
昨日あなたたちが聞いた、その場所のね」
アリアが、首をかしげてなぜそうなるのか考えていると、
マーシャは冷たい声で言った。
「あの子はね、予想だけど。その戦闘地域に向かったのでしょうね。
ミリアが運ばれた時、この戦いを早く終わらすとかなんとかいってたから」
その言葉を聞いて、アリアの顔から血の気が引いた。
「そ、そんな。だって・・・そしたら、何でうちのこと置いていったんや!?」
マーシャは、アリアを黙って見つめた後、静かにつぶやいた。
「あなたを巻き込みたくなかったでしょうね。ミリアの事もあるし・・・」
アリアはその言葉に、動揺を隠そうともしなかった。
動揺していたためか、後ろでかすかに動く気配にも気づかず。
「急がないと、あの子、死ぬわよ」
その言葉が、アリアの心に突き刺さった瞬間。
誰もいないはずの後ろから声がした。
今は、眠っているはずの人間の声、背後から。
「ヒロシが・・・どうしたの?」
マーシャは、驚いて目を見張った。
そこには、ベットから起き上がり、こちらをジッと見ているミリアの姿があったから。
「ミリア?」
ポツリと、こぼれるようにマーシャの口から出た言葉に、ミリアは笑顔で答えて、
「おはよう、マーシャ。アリア」
と付け加えた。