第37話:潜入 後編
■――潜入 続――
女は殴り飛ばし大きく後ろに跳んだ。
しかし、数が多く、全く離せず苦戦しているようだった。
「やばいな」
ヒロシは、その女の人に向かって走り出した。
その女性は家の屋根に飛び乗ってすごい勢いで走って行った。
追いつけそうにも無いことを、認識するとヒロシは心の中で舌打ちをして、
――行くぞ――
と、魂に寄生する影に声をかけた。
そして、力を入れるとヒロシの顔のあざが赤く光り、背中から黒い翼が生えた。
そして、その翼をはばたかせると、一気に空に飛び立った。
「うわっ、多いな」
上空に上がると、女性の後ろについているシガールの量に目を見張った。
80・・・いや、100はいるか。
その集団から、鳥のようなシガールの集団がヒロシに向かって飛んで来た。
「うわっ」
その鳥の、集団はそのままヒロシに突っ込んできたので、ヒロシはあわてて剣で防いだ。
通り過ぎざまに、視界の片隅にコウモリの翼が見えたので、
あの集団はコウモリの群れのようだ。
その群れはUターンしてまた向かってこようとしてきている。
ヒロシはそれを無視して女性のほうに向かって飛んだ。
そのスピードはかなり速く、一気にシガールの集団に追いついた。
ヒロシは、シガールを切り伏せながら女性を助けるスキをうかがっていた。
後方のコウモリの群れももうすぐ追いつきそうだった。
「うっ・・」
その時、かすかに声が聞こえた。
さっきの、女性が人形のシガールに、すすで汚れた長い銀髪をつかまれていて、
包丁を振り上げていた。
ヒロシは、あわててそのつかんでいるシガールを光のムチで切り払ったが、
シガールの刃がその女性の肩をかすめて赤い血が吹き出た。
そのまま、彼女は家の間に落ちていき、シガールもその後に続いていった。
ヒロシは、顔から血の気が引いていくのが分かった。
翼を思い切りはばたかせて、シガールの集団を一気にぬいて、
気を失っている彼女をかかえると、
そのまま、真上に飛び去った。
去り際に数箇所切られたが、まだ問題はない。
そのまま、シガールの死角に入って建物の中に逃げ込んだ。