第36話:潜入 前編
■――潜入――
その夜、ヒロシはアリアが眠りについたことを確認して体を起こした。
ミリアの一件のあと、アリアに色々と問いただされたが、
軽くごまかして話はしなかった。
アリアはそれを不快に思ったらしくずっと機嫌が悪かった。
それをさらに悪くすることを今からしようとしている。
――ごめんな・・・アリア――
ヒロシは、心の中で誤りアリアの髪をなでると、
必要最低減の荷物を持ち記憶にあるロシアのシガール本部に向かった。
「・・・ヒロシはん」
アリアは寝言でそうつぶやいた。ヒロシは悲しい表情で扉を開けた。
ヒロシがロシアについた時には、もう朝日が昇っていた。
そして今、シガールの本部があるといわれる場所にいた。
「着いたか・・・」
ヒロシは、辺りをうかがって平然としていることを確認すると、
ゆっくりと中に足を踏み入れた。
ピリッと頬を焼くような感覚があり、張られていたミストの中に入った。
そこには、何の音もしない静かな世界だった。
その中を、ヒロシは建物の影に隠れながら街中を進んでいた。
少し進むと、小さな兵士の姿をしたシガールが3匹ほどうろついていた。
「なんで、集団行動してるんだよ・・・」
ヒロシは、息を殺して剣を取り出すと、
3体が後ろを向いた瞬間に光のムチで、一体を消し去った。
「ギッ」
そのシガールは、短く音を出して消えていった。
「うしっ」
ヒロシは、少しつぶやいてまた様子をうかがった。
シガール達は、いつの間にか消えていたのに気がつきあわて始めていたが、
急にシガールの動きが止まり、移動を始めた。
――何だ?――
ヒロシは、剣をかまえたまま気づかれないようにその後をつけていった。
しばらく進むと、大きな爆発音とともに、大きな土煙が見え始めた。
2体のシガールは、その中に飛び込んで行き、中では時折、火花が出ていた。
「誰かが戦ってるのか?」
ヒロシが、建物の影に隠れながら様子を見ていると、
土煙の中から、黒い塊が飛び出した。
それは、女性でその人に続いてぞろぞろとついてくるシガールを、
殴り飛ばし大きく後ろに跳んだ。
しかし、数が多く、全く離せず苦戦しているようだった。