第28話:闇
■――闇の心――
ミリアは軽い揺れで目を覚ました。
「ミリアはん、ミリアはん」
目をゆっくりとあけるとアリアがミリアの頬を叩いていた。
アリアはそれに気がつき、
「大丈夫ですか?」
と訊いて来て、ミリアはまだあまり働いていない頭で、
「うん・・・」
とゆっくり答え立ち上がろうとした。
「うっ」
ミリアはふらつき、塀に手をついた。
アリアは心配そうな表情をして、
「本当に大丈夫なん?」
と聞いた。ミリアはそれに答えず、動こうとしない右足を見た。
「骨・・・折れたかな・・・」
そうアリアに聞こえないようにつぶやいて、逆足に力をこめて、立ち上がった。
「ヒロシは・・・どうしたの?」
ミリアは、痛みを声に出さないようにしながらアリアに尋ねた。
するとアリアは一瞬、悲しげな表情を浮かべ、うつ向き気味に上を指差した。
ミリアは、不思議そうに首をかしげ、アリアの指差した先に目を向けた。
そこには大きく真っ黒な翼をつけた鳥が、滞空していた。
「なに・・・あれ?」
ミリアは目をこらしてその鳥を確認していると、アリアは小さく、
「ヒロシ・・・はん・・です・・・」
「えっ」
アリアの言った言葉に、ミリアは思わず驚きの声を出してしまった。
「まさか・・・だってあれ・・・もう人間じゃないじゃない」
ミリアはジッとその鳥を見つめ、動揺を隠し切れず、しどろもどろにつぶやいた。
「でも・・・本当なんです」
アリアは今にも泣きそうな声で話し始めた。
「ヒロシはんがジーベルに殺されそうになって・・・、
そしたら急に、ヒロシはんの首のあざが顔にひろがっていって・・・
それで、・・・簡単に・・・ジーベルを消し去りました・・・」
説明をしている途中、ミリアはポロポロと涙を流し、
「あんなの、ヒロシはんじゃない!」
アリアはそう強く言うと、顔を手で覆い隠し、静かに泣き出した。
ミリアはその涙を見て、アリアの頭を優しくなでるとミリアは赤い羽を背中から出した。
「・・・どうするん?」
アリアは涙目のまま、ミリアに尋ねた。
ミリアはアリアに少し笑いかけて、
「ちょっと、ヒロシに話してくるだけだよ」
と言い、空に浮いているヒロシをジッと見た。
アリアはそれを聞き少し考えるようにうつむくと、
「うちも行く」
とミリアの肩に座ってこぼれかけていた涙をぬぐった。
「うちだって、ヒロシはんが心配やもんな」
アリアは少し笑ってミリアに伝えた。
その言い方はまるで、自分に言い聞かせるような口ぶりだった。
ミリアはうなずいてヒロシに向かって飛び立った。
ヒュゥゥゥゥゥ
ヒロシのいる上空は、かなり強い風が吹いていた。
ヒロシは静かに町を眺めていたが、おもむろに握っていた剣をゆっくりと振り上げて、
足元の民家に狙いを定めた。
「ヒロシッ!!」
急にかけられた声で、剣を持つ手が止まった。
ヒロシの後ろには少し息を弾ませたミリアが後ろに飛んでいた。
「ヒロシ。今、何するつもりだったの?」
ミリアが、そう尋ねるとヒロシはゆっくりと振り返りミリアを見つめた。
ゾクッ
ミリア達は、ヒロシの目を見て背筋に寒気がはしった。
「誰だ?お前は」
そうヒロシは不気味にほくそ笑んだ顔は、いままで見たことの無い表情だった。
「誰って・・・ミリアよ!分からないの?」
ミリアは悲しそうにヒロシを見つめ返したが、ヒロシは表情も変えずに、
「知らんな」
と背を向けた。
そしてまた町に目を向けて、剣を構えた。
その時、ヒロシの視界の端に青い光を見た。
ヒロシは瞬時にその光をはじき、銃をヒロシにかまえているミリアを睨んだ。
「何のつもりだ・・・」
ヒロシは静かにだが、完璧な殺意をこめて訊いた。
ミリアは黙ってジッとうつむきながら、銃を握っている手が、小刻みに震えていた。
「町を・・・壊す気・・・なんでしょ・・・」
ミリアは何かを恐れるように、小さくつぶやいた。
アリアもミリアの肩で小さく縮こまっている。
そして、ミリアはゆっくり顔をあげて、
「そんな事、私がさせない!!」
とヒロシに向かい、銃弾を放った。
ヒロシはそれを軽く身をそらしてかわすと、
「今の俺に勝てると思うのか?」
とミリアに向き直った。
ミリアもただならぬ殺気を感じたのか、肩に座っているアリアに、
「危ないから、離れな」
と声をかけた。しかし、アリアは首をふり、
「うちも戦うからええ」
と笑った。
ミリアは少し困ったように顔をしかめたが、うなずき、
ヒロシをキッと睨みつけ銃を放つと同時に真横に飛び始めた。
ヒロシはミリアの飛ぶ方向にその球を跳ね返した。
その球は、正確にミリアに向かって飛んでいった。
「くっ」
とミリアは少し声をもらしながら、体をそらしてギリギリかわした。
その時、目の前に黒い影がよぎり、
「ギンッ」
と鈍い金属音がして、目の前でヒロシの剣がピタリと止まった。
「弱いな」
いつの間にか、近づいていたヒロシが、耳元でそっとつぶやき、
そのままミリアを思い切り弾き飛ばした。
ミリアの髪が少し切れてパラパラと舞った。
ミリアは体勢を整えながら、
危なかった・・・。
と心の中で冷や汗をかきながら、思った瞬間、
目の前にヒロシの顔が現れて、ニヤリと笑みを浮かべた。
ヒロシの顔は、3分の1ほどが黒い影におおわれていて、
その瞳は血をこぼしたように赤く輝いていた。
その瞳に見つめられた時、ミリアは頭の中に自分の死んだビジョンを想像してしまった。
「弱すぎるな・・・」
ヒロシはポツリとつぶやいて、ゆっくりと目をつぶった。
ドスッ
鈍い音があたりに響いた。
ミリアは剣を銃でわずかにずらしたが、わき腹に広がる痛みは確かだった。
ヒロシは顔に返り血をあびた。
それと同時に何か顔にとても温かいものが落ちてくるのを感じた。
「?」
何だ・・・
ヒロシがゆっくり目をあけると、ミリアの瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「ミリアはん!!」
アリアが悲鳴に近い声でうつろな瞳のミリアを呼んだ。
「やっぱり・・・」
ミリアはわき腹に突き刺さる剣を片手で握りながらポツリと言葉をこぼした。
「やっぱり・・・私には・・出来ないよ・・・」
ミリアの銃が、手を離れ、ゆっくりと地面に落ちていく。
ミリアは剣を握っていた手をヒロシの頬にあてて、ゆっくりとなでた。
じっとヒロシの瞳を見つめながら。
ヒロシはその見据えられた瞳から、少しも視線をはずすことが出来なかった。
「元に戻ってよ・・・ヒロシ・・」
ミリアは苦しそうに、口から血を流しながら笑った。
その言葉を最後に、頬に触れていた手から力がぬけだらんと地面に向かってたらした。
「ミリアはん?・・ミリアはん!」
アリアはミリアの頬を叩きながら叫んだ。
その様子を見ていたヒロシは、目を見開きしだいに剣を持つ手が小刻みに震え始めた。
「離れろ!ミリアはんから離れろや!!」
アリアが必死にヒロシの顔をたたき、ミリアから引き離そうとしたが、
「え・・・」
たたいていた手を止めてジッとヒロシを見上げた。
なぜか、ヒロシの目から一筋の涙が流れていた。
「ヒロシ・・・はん?」
アリアが名前をつぶやくと、ヒロシの顔の影がじょじょにはがれ落ちていった。
「ミリア・・・」
何が起きた!!
影は心の中、大きく動揺していた。
すると、すぐ後ろにただならぬ殺気を感じた。
影の首にゆっくりとその者の腕がまわった。
そこをどけ・・・。
その声は、強い怒りをふくんだ声だった。
それを、感じたのを最後に影は暗闇に押し込まれ、闇の中に溶けていった。
ヒロシはゆっくりとミリアに刺さっている剣を抜き取り、片手に抱きかかえた。
そして、剣先についたミリアの血を見て、また少し涙を流した。
パチパチパチ
ヒロシの後ろから拍手が聞こえた。
ヒロシはそれに振り向きもせず黙ってその音を聞いた。
「すばらしい、見せてもらいましたよ。あなたの戦い」
その声の主は、小さなめがねをかけた緑色の髪の青年だった。
「私は、バリア・レ・シガールと言います。私たちのチームに入りませんか?ヒロ・・・」
バリアが言い終わる前に、ヒロシはバリアに剣を突きつけて、
「黙れ・・・」
と、静かに言いながら視線はミリアの顔から離さず、絶えず涙を流していた。
バリアは口元だけに笑みを浮かべて、
「交渉・・・決裂ですか」
と懐にしまっていた、杖のようなものを取り出した。
ヒロシはその瞬間、剣を真上に振り上げると、剣先に光が集まり、
その光が赤くなると光が紐のように伸びた。
ヒロシはその紐を、バリアを少しも見ずに剣を振り下ろし、
バリアの杖を持った手に紐をからめた。
「くっ」
バリアは身動きが取れなくなり、その様子をヒロシは横目でバリアを睨んだ。
バリアがその目を見た時、蛇に睨まれた蛙のように動かなくなり、一筋、汗が流れた。
ヒロシは涙をながしながらバリアを正面から見据えると、
「消してやろうか・・・」
とポツリとはき捨てると、剣の光がより一層、真っ赤にひかりバリアの服が焦げ始めた。
「フッ、そんなにその女が死んだことが悲しいのですか?」
ヒロシが皮肉まじりのその言葉を聞いたとき、目を見開き、
「黙れ!!」
と怒鳴ると、思い切り剣を引きバリアの腕を引きちぎった。
「ぐあぁぁぁぁ」
バリアは腕を押さえながら悲鳴を上げた。
アリアはその様子を信じられないように黙ってみていた。
「くそっ!!、ふざけるなよ、若造が!!」
とはき捨て、ヒロシに攻撃を加えようとすると、ヒロシは今度、
紐をバリアの首に巻きつけた。
「うぐっ」
苦しそうに顔をゆがめるバリア。その様子を、ヒロシはじっと睨みつけ、
「今度は首ももぎ取ってほしいのか?」
と言うとバリアは顔を青くして、どこかに消えていった。
ヒロシは空間に剣を戻すと、かすかに呼吸をしているミリアを両腕にかかえ、
静かに涙を流した。その涙から逃げるように広がったあざももとに戻っていった。
そして、いつの間にか色が戻った空で静かに、
「ごめん・・・」
とつぶやいた。アリアは黙ってヒロシの肩にすわって、
ほほについた涙をすこしぬぐった。
その夜、とてもきれいな満月の中に、
人をかかえた大きな羽を生やした人の姿を見たと言う、うわさが広がった。
マー:さて今日は
ミフィ:マーシャさんの過去について
マー:おいっ
ミフィ:マーシャさんは、私と幼馴染で、
マー;ちょっとまって・・・
ミフィ:マーシャさんは希望して渡しについてきてく れました
マー:ミフィリア!!
ミフィ:はい?
マー:ちょっと、打ち合わせと違うじゃない
ミフィ:打ち合わせなんてありましたっけ?
マー:あったでしょ・・・
ミフィ:それは、さておきマーシャさんは
マー:ちょっと、私が話すから
ミフィ:そうですか
マー:えっと私は、ミフィリアが心配でついてきて
ミフィ:はい
マー:ミフィリアは、ここで最高の位になったから
私が補佐役として、日本支部の副官になったの
ミフィ:そうですね。マーシャさんはとても優しいん
です
マー:ちょっと、恥ずかしいこと言わないでよ
ミフィ:ちょっと、真っ赤になってますよ
マー:気にしないで。次はあなただからね
ミフィ:はい、よろしくお願いしますね
マー:なんか、ひょうし抜けね