第27話:心の闇
「うぐっ」
ジーベルは痛みに顔をゆがめながらぼたぼたと血を滴らせ、二、三歩よろめき、
「やってくれるじゃねえか」
と切られた腕を押さえて笑い、ヒロシを見つめた。
ヒロシは肩で息をしながら剣を振った体勢のまま立っていた。
やけに心臓の音がする。
首筋が熱い・・・。
「うっ、があぁぁぁぁ」
急に片目が痛み始め、ヒロシが手で目を押さえると、
「ビキッ、ビキッ」
と音がして、ヒロシが顔をあげると首筋のあざが右目まで広がっていた。
そして、背中からも音と痛みがして、ヒロシが目から手を離し、
肩を思い切り抑えると、いきなり背中から黒い大きな翼が生えてきた。
ヒロシは意識まで黒く覆われていく感覚を感じて、
「アリア・・・逃げてくれ・・・。たのむ・・・」
と必死に侵食に抵抗しながらアリアに言い聞かせた。
アリアは始め黙って首を横に振ったが、ヒロシがアリアをにらむと、
ビクッと体をこわばらせてそっとヒロシのポケットから出て行った。
ヒロシはそれを見て苦しそうに少し笑うと、
また苦痛に顔をゆがめよろめき脇のブロック塀に体をぶつけてそのまま座り込んだ。
ジーベルはその様子を不思議そうに見ていたが、
槍を構えるとすごいスピードでヒロシに向かって行った。
しかし、ヒロシはうつむいて動かず、
ジーベルの槍がヒロシの顔に突き刺さりそうになった時、
ヒロシの手が瞬間的に動き、剣でそれを上にはじき上げると、
そのままジーベルに向かって剣を振り下ろした。
ジーベルはそれを槍で防ぎそのままはじかれ後ろに飛び、
「やるじゃねぇか」
と楽しそうに笑い槍を構えなおした。
ヒロシは黙ってうつむいたまま立ち上がると剣を握りなおし、
軽く前で構えた。そして、ヒロシがゆっくりと顔をあげたとき、
ヒロシの顔は3分の1ほどあざで覆われていて、
右目の瞳が血をこぼしたような真っ赤な色になっていた。
ジーベルが驚いていると、ヒロシは口元だけで笑い、
「すぐにお前は殺してやるよ」
とヒロシの声とあの影の声が混ざった声が響いた。
そして、ヒロシは片方だけの翼をはばたかせたと思うと、
一瞬でかなり離れていたジーベルの背後にまわり、切りつけた。
ジーベルは驚き、あわててかわそうとしたが、
かわしきれず肩に少しかすり、血があふれ出た。
「クッ・・・」
ジーベルは、体勢を立て直そうと後ろに飛んだが、ヒロシはそれに合わせ、
前に踏み込みジーベルの懐にもぐりこむと、ジーベルの顔を見上げ少し笑った。
「終わりだ」
そう言って、剣を構えた。ジーベルは恐怖に顔を染め、
「うわあああぁ」
と悲鳴のような叫び声を上げて、ヒロシに槍をつきたてようとしたが、
ヒロシは瞬時にその手を切り落とし、ジーベルの体を斜めに両断した。
一瞬、世界がとまったように見えたが、ジーベルの体から一気に血が噴出し、
「エンドアースに・・・栄光を・・・」
とつぶやきながら地面に倒れこみ、消えていった。
ヒロシはその様子を薄い笑みをうかべながら眺めていたが、
急に肩をおさえると叫び声を上げて苦しみ始め、
もう一方の肩からも黒い翼が生えてきて、両方の翼をヒロシは大きく広げた。
やめろ、もう出てくるな!
ヒロシは心の中で感じる影に対して言った。影が少し笑ったように思った・・・。
すると、体を割かれる様な痛みが全身に走り、右半身の感覚が無くなった・・・。
やがて、体が全く言うことを聞かなくなった。
なんだ・・・これ・・・。
ヒロシは口でつぶやこうとしたが、全く動かなかった。
その時、勝手にヒロシの口が動き始めた。
「フフフ、この体・・・最高だ・・・」
その口から出てきた声は、ヒロシが全く考えたことの無いことだった。
しかし、驚くと同時にヒロシは心にドス黒い場所を感じた。
影か・・・。
ヒロシは心の中で問うたが返事は無く、不意に後ろに引きずりこまれる感覚がして、
ヒロシは体から抜け暗闇の中に沈んで行き、そのままヒロシは暗闇の中で眠りについた。
「とても体が軽い」
影はヒロシの体の感触を手探りで確認して、
翼をはばたかせると一気に上空に上がった。
そして、色の無い世界を見渡し、薄く不気味に笑った。
マー:今回は作者の都合により休みよ
ミフィ:次回からは、キャラの過去を探っていきたい と思います
マー:おおー、楽しみね
ミフィ:そうですね
作:次回をお楽しみに