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第25話:会いたくなかった人

■――会いたくなかった再会――


ヒロシ達はしばらく歩き、ヒロシの町に着いた。


途中、


「知り合いに見つかったら大変でしょ。死んでることになってるんだから」


とミリアがフードのついている服を買ってきてヒロシに着せた。


そのときも、なぜかミリアは目があうとすぐに視線をそらし、


顔を見て話してくれなかった。


ヒロシは、今、


街中をフードをまぶかにかぶり出来るだけ人目につかないようにミリアと並んで歩いた。


その間、アリアは静かにヒロシのポケットの中で眠っていた。


しばらく、歩くといつの間にかヒロシの見慣れた場所に出た。


「ここ、懐かしいな・・・」


ヒロシがそうつぶやいて小さな丘に上っていった。


「ちょっと」


ミリアが驚いたように止めたがヒロシは無視して上った。


その場所は時々ヒロシが訪れていた懐かしい場所だった。


高台の上は少し風が吹いていて夕暮れの光が町を染め上げていた。


「ここの風・・・変わらないな・・・」


ヒロシはそうつぶやいて大きく深呼吸をした。


ヒロシがボーっと町を眺めていると遅れてミリアが隣って一緒に町を眺め始めた。


「アリア。起きろよ」


ヒロシはそう言いながら胸ポケットを軽く叩いた。


アリアはすぐ顔を出して伸びをするとすぐに博の手に乗って周りの景色を眺めると、


「すごーい」


と感嘆の声を出した。


ヒロシはそのアリアの感嘆の声を聞いてヒロシは誇らしげな気分で鼻の頭をかいた。


すると、ミリアは一箇所、場所を指して、


「あの辺で初めて会ったんだよね」


とヒロシに笑いかけて、ヒロシはミリアの指差している方向を見て、


「ああ、その時、俺、ミリアの事を変な奴だと思ってたんだよなぁ」


と思い出して少し笑った。


「私もヒロシに才能があるなんて思わなかったもん」


ミリアはいたずらな笑いを返して、また他の場所を指差し、


「あそこで、ミリアはシガールと戦ってたんだっけ」


「そうそう」


ヒロシとミリアは次々と記憶がよみがえしながら話していってミリアが、


「あそこは・・・」


とまた指差して、


ヒロシがそこに目を向けようとした時、一軒の赤い屋根の家が目にとまった。


「俺の家・・・」


ヒロシはミリアの話も耳に入らず、ジッとその家を見つめてつぶやいた。


皆、元気かな・・・。


ヒロシは家のことや学校の事を思いながら心の中でつぶやいた。


ミリアやアリアに悟られないように・・・。


静かに考えている時、ヒロシは後ろで人の気配を感じた。


「アリア、隠れろ」


ヒロシはあわててアリアをポケットに隠して、フードをまぶかにかぶった。


景色を見ていたアリアは、いきなりポケットに入れられたので、


小さく悲鳴を上げてもぞもぞとポケットの中でもがいていたが、


しばらくして少し顔を出して静かになった。


ミリアはヒロシの異変に気がつき、黙って景色を見ていた。


すると、ヒロシ達が登ってきた階段から、一人の女の子があがってきた。


「!!」


ヒロシは顔を見られないようにそっと見ると、その少女には見覚えがあった。


その少女は、ヒロシの妹、山本 渚だった。


渚は最後に見た時より、少し背が高くなりどことなく大人っぽくなっていた。


しかし、どこかやつれて、やせているように見えた。


「あの人、知ってるの?」


ミリアはそう言ってミリアの顔を覗き込んで訊いた。ヒロシは低く、


「俺の妹だよ」


と答えた。


ミリアは目を見開いて驚き、アリアも息を飲むのが聞こえた。


渚は夕暮れの空をじっと見て、ブツブツと何かつぶやいていた。


「お兄ちゃ・・・なんで・・・」


渚の言葉は、無力に空に消えていって、


時々ヒロシの耳に入ってくる言葉が、自分に向けられている事を、感じていた。


そして、渚の目から一筋、涙が流れるのが見えた時、


ヒロシは思わず声をかけようとしてしまった。


「ちょっと、ヒロシは死んでることになってるのよ!今、声をかけてどうするの」


ミリアはそう言ってヒロシを止めて、ヒロシは黙ってうなずき渚から少し離れた。


小さいころ、いつも渚はヒロシの後ろにくっついて、全く離れなかった。


いつも、


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」


とついてきて、ヒロシも優しく接していた。


そして、今、その妹がやつれて悩んでいるのが見てとれる。


ヒロシは無性に悲しくなり、渚はしばらくして、


また来たところの階段をゆっくりと降りていった。


ヒロシはそれを見て立ち上がり、渚が降りて行った階段を降りようとした。


「どこ行くの?」


ミリアは後ろから声をかけて、ヒロシを止めた。


ヒロシは立ち止まりうつむき、


「しばらく・・・シガールが現れるまで、自由行動にしないか?」


と振り向きながら、提案した。


ミリアはそれを聞き、不安げな顔をしてヒロシを見たが、


ヒロシは出来るだけ明るくわらって答え、


「大丈夫だよ。ばれないようにするから」


と軽く手を振った。ミリアは少し瞳に影らせて、


「そう・・・」


と短くつぶやき、


「分かった」


と言ってミリアはすばやく階段を降りていった。


ヒロシもそのあとをゆっくりと降りて、階段の下で、


「じゃっ」


とミリアは少し悲しそうに短く言って、人ごみにまぎれていった。


ヒロシはしばらくミリアの後姿を見ていたが、アリアが、


「これから、どうするん?」


と聞いてきて、ヒロシはミリアから目をはなし、


渚の姿を探したが見当たらなかったので、


「しばらく・・・歩こうか・・・」


とフードをまぶかにかぶりなおして、ヒロシの前の家に向かって歩き出した。


しばらくの間、歩き続け、今は住宅街の中を歩いていた。


懐かしい道、いつも歩いていた道。


ヒロシはそんな道をゆっくりと踏みしめて歩いた。


「いつも、ここ通ってたん?」


「そうだな」


アリアは時々話しかけてくるが、その会話はあまり長続きせずすぐに途切れてしまう。


住宅街をしばらく歩くとヒロシの家の前に着いた。


ヒロシは黙ってその家を眺めて、危うく家に入りそうになってしまった。


しかし、自分の中で今、入ってどうする。


と言い聞かせ、入りかけた足を止めた。


そして、数歩、門から離れてボーっと家を眺めた。


その家は自分の家だが今はとてもよそよそしく見えた。


「どうしたの、ヒロシはん?」


アリアが心配そうにヒロシを見ていた。


「いやっ、なんでもない」


ヒロシはあわててそういって家に背を向けたが、もう一度家を見上げた。


いつも間にか空は夕方になっていて、部屋には明かりがつき始めていた。


中から話し声も聞こえてくるので渚が帰っているようだ。


ヒロシは安心したように少し笑って、歩き始めた。


しばらく歩くといつも通っていた学校の前に来ていた。


「学校やな」


アリアは周りに人がいないことを確認して顔を出して言った。


ヒロシは目を少し細めて、


「俺の・・・もと通ってた高校だよ」


アリアにそう言い聞かせた。


その言い方は自分にも言い聞かせているようだった。


「ふーん、いい学校やね」


アリアは笑ってそういった。ヒロシはジッと校舎にまだ残っている光を見つめていた。


「皆、どうしてるかな・・・」


ヒロシはアリアに聞こえないようにそっとつぶやいた。


その時、不意に後ろから足音が近づいて来ることに気づいた。


アリアは息を殺してまた隠れて、ヒロシは振り向いた。


「えっ・・・」


その人物は驚いたようにヒロシの顔を見ていた。


「山本・・・山本なのか・・・」


「森内・・・」


ヒロシは思わずその人物の名前を呼んでしまいあわてて口をふさいだ。


森内はヒロシに駆け寄ってきて、


「山本だろ。やっぱりお前、生きてたんだな」


と必死にヒロシにしがみつきながら迫ってきた。


ヒロシは口を必死につぐんでいた。


今、声を出すと森内との再会喜んでしまいそうだったから。


ヒロシが黙っていると森内はヒロシの手をとり、


「ちょっと来てくれ」


とヒロシを引っ張り、今、ヒロシ達が来た道をまた、戻り始めた。


「どこに行くんだよ」


ヒロシがそう訊くと森内は興奮したような表情で、


「お前の家だよ」


とまたヒロシを強く引っ張っていった。


ヒロシの家には無常にもすぐに着いてしまった。


森内は門の前に着くと、ためらいも無くインターホンを押した。


少しの間があって渚の声がした。


「はい」


「渚ちゃん。お兄ちゃん生きてたよ!」


「え?」


渚はとても驚いたような声を出して、息を飲むのが聞こえた。


しばらく黙っていると思うと急に、


「森内さん。ふざけるのはやめて下さい」


と静かにつぶやくように言った。


森内は必死に渚に説明を始めた。


その間もヒロシの手は握ったままで、まるで、幻を逃がさないように。


「どうするん?ヒロシはん」


アリアが気づかれないように小声で訊いてきた。ヒロシは森内を見ながら、


「どうしようか」


と静かに聞き返した。


すると、アリアは少し考えてポンッと軽く手を叩くと、


「ウィッチトゥールでミストを張って逃げればいいんじゃないん?」


と提案してきた。いい考えだと思う。


ヒロシは耳の奥でそれを聞き、小さくうなずいた。


森内は説得が終わったようで門に手をかけて黙って扉が開くのを待っていた。


ヒロシはあまっている手でポケットからウィッチトゥールを取り出し、


森内の後姿を眺めた。


その時、家のドアが開き渚が出てきて、ヒロシと少し目が合った。


渚は目を見開いてどんどんと驚いた顔になっていき、


「お兄ちゃん!!」


とこっちに向かって駆け出した。


ヒロシはそれを見て安心したように少し笑うと、森内の耳元に顔を近づけ、


「じゃあな」


と言って、ウィッチトゥールを動かした。


「えっ」

短く森内の声が聞こえて、それを最後に二人の動きは無くなり、音が消えた。


ヒロシはゆっくりと森内が握っている手をはずし、二、三歩後ろに下がった。


そして、しばらくの間、色が無くなった家を眺めていると、


空から赤い光が近づいてきて、ヒロシの前に降り立った。


「どうしたの?」


ミリアがヒロシの横顔を見ながら訊いてきた。


ヒロシは目を下に落として、


「なんでもない」


と答え、ミリアに笑いかけた。


その時、不意に後ろに殺気を感じて、ヒロシは横っ飛びに飛んだ。


すると、後ろから大きな衝撃音が響いて、


今までヒロシ達が立っていたところは何かにえぐられたようにへこんでいた。


「ミリア。大丈夫か!!」


ヒロシがそう声をかけると土ぼこりの中から、


「大丈夫だよ」


とミリアの声が聞こえた。


ヒロシはその声を聞いて、胸をなでおろすと、


「よくかわしたなぁ」


と、どこからか声がした。


ヒロシはあたりを見回してその声の主を探した。


「上だよ・・・」


そう、声がして、ヒロシは上に顔を向けた。


すると、屋根の上に色の無い月を背にして巨大な槍をかまえている長髪の男が立っていた。


「ジーベル・・・」


アリアが少しポケットから顔を出してその男をにらみ、


小さくつぶやいた。しかし、男はそれに気がつき、


「久方ぶりだなぁ。アリア」


とアリアをにらみ少し強い口調で言った。


「あいつはジーベルって言って、エンドアースの幹部の一人や」


アリアはヒロシに小声で教えた。


ヒロシはそれを聞きジッとジーベルをにらんで、出方をうかがっていた。


「ヒロシってーのは、どいつだ?」


ジーベルはヒロシと土煙の向こう側にいるミリアを交互に見て、


ニヤリと笑い、見下した目線を二人に向けた。


ミリアはそれを聞くやいなや、地面を蹴って一気にジーベルの前に出ると、


「そんな事、教えるわけ無いじゃない」


とジーベルに向かい銃をかまえた。


ジーベルはそれを横目で見ると、その瞬間に構えていた槍を軽く動かして、


ミリアを槍のつかの部分で叩き落した。


「うっ、ぐっ」


ミリアはとっさに、それを銃で受けて防いだが弾き飛ばされて、


壁に叩きつけられた。


「カハッ」


ミリアは、少し血を吐いてピクリとも動かなくなった。


「ミリア!!」


ヒロシは大声で名前を呼んだがミリアは返事をせず、うつむいたままだった。



マー:はい、じゃあいつものやるわよ


ミフィ:MKSについてです


ミリ:こんどは私?


マー:まーねぇ


ミリ:私も忙しいんだけど


ミフィ:まあ、楽しみましょうよ


マー:今回はシガールについてよ


ミフィ:ですね


ミリ:シガールは、時間のバグのようなものよね


マー:そのとうり


ミフィ:バグは他の時間にも、支障をきたします


マー:だから、早くそのバグを消さなくちゃ


ミリ:色々とおかしくなるのよね


マー:だから


ミフィ:最近の集団行動は異例なんです


ミリ:そうだね


マー:だからそれを、早く完璧に調べないとね


ミフィ:そうですね。がんばりましょう


ミリ:私もがんばらなきゃね

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