第23話:Yディスク
そのディスクを見ていると、
「それは、あの助けを求めてきた奴が所持していたものだ」
と言って、ミリアに目で合図した。
ミリアはうなずき部屋から黙って出て行った。リングはそれを確認して、
「そのディスクにはシガールの細かい情報が入っていた。
その情報は、今まで分からなかったしガールの情報だった」
とうつむきながらはっきり言った。
アリアはそれを聞いてうつむき、とても悲しい顔をしていた。
「アリアの言ったようにシガールには、
新しく一つの集団が出来ているようだ。そして、その目標は、人類の滅亡らしい」
そうリングが説明し始めた時、ミフィリアが入ってきて、
「ヒロシさん、目が覚めましたか・・・」
と少し笑ってヒロシに声をかけた。
そして、手に持っていた紙の束をヒロシに渡して、
「これはそのディスク。仮にYディスクとしましょうか。
その中に入っていた情報を印刷したものです」
と言って、ミフィリアはアリアに目を向けた。
アリアはつらそうに下を向いていて、ミフィリアは、
「聞きたくなければミリアさんと一緒にいてもいいんですよ」
と優しく気遣った。
アリアは黙ってうなずきヒロシの肩から扉のところに浮いていって、
静かに外に出て行った。3人はそれを見送って、
ヒロシは渡された冊子に目を落とした。
パラパラとめくりながら見ていくとその中に見覚えのある名があった。
「ジ・ヴェルディ・シガール・・・」
ヒロシはそうつぶやいてヴェルディのあの表情を思い出した。
その表情は不適な笑みをうかべ、ヒロシに球を埋め込んだ冷酷な表情だった。
そんな事を考えながらさらにめくっていくと、
火の中から巨大な人型の怪物が描かれた挿絵があった。
「これは・・・」
ヒロシはその絵を見て、驚き思わず声を漏らした。
ミフィリアは横からその絵を覗き込み、
「その絵はジークスと言う、世界の裏の邪神といわれていて、最大のシガールです。
ジークスについては、前々からその情報は入っていたのですが、
よみがえることは無いと思われてこのことは団員には伝えられてませんでした。
しかし、シガールはこのジークスを黄泉がえらそうとたくらんでいるそうです」
と真っ直ぐな目つきでヒロシに説明した。
リングは黙って腕を組み、静かに立って聞いていた。
ヒロシはその絵を見つめ、夢に出てきたあの影に似ていることに気がついて、
そっと首筋をなでた。ミフィリアはそのしぐさに気づき、
「そのあざは?」
と訊いて来た。ヒロシは少し下を向いた後、ミフィリアの目を見て言った。
「これは、シガールに球を埋め込まれて出来たんだと思います」
「シガールに?」
「はい。そのシガールはジ・ヴェルディ・シガールと名乗り、
お前はいずれ俺達のメンバーになるだろう。と・・・」
ヒロシはさっき鏡で見た、首筋のあざの形を思い出して、もう一度首筋をなでた。
ミフィリアは考えるように顔に手をあてて、
「仲間になる・・・ですか・・・」
とつぶやき、パソコンの前に座って何かのデータを打ち込み始めた。
リングはしばらくその様子を見ていたが、ヒロシに優しく笑いかけて、
「じゃあ俺は、ミリアたちを呼んでくるからな」
と言って、ミフィリアに目配せして部屋から出て行った。
ヒロシはゆっくりと横になっていた台から立ち上がり、夢の影を思い浮かべた。
あの影はなんだったんだ・・・。
あの顔を思い出し、握られた手を見た。そこにはまだ、握られたあとがあった。
「夢じゃ・・・なかったのか・・・」
ヒロシはそう悲しそうにつぶやいて、そのあとを見つめた。
「ヒロシさん・・・ヒロシさん!!」
急にかけられたミフィリアの声に気がつき、手のあとから目を離した。
ミフィリアはヒロシの事を心配そうに見て、
「大丈夫ですか?何度も呼んだんですよ」
と話しかけた。そうか、全然気づかなかった・・・。
ヒロシは笑顔でそれに答えて、座っているミフィリアの隣に立った。
ミフィリアはそれを確認してパソコンに向き直って説明を始めた。
「あなたは先ほどシガールに球を埋め込まれた。といいましたね」
ヒロシは黙ってうなずいた。ミフィリアもうなずいて、
「その球は、このような物ではありませんでしたか?」
ミフィリアはパソコンの画面を指差した。
そこには、はっきりと覚えているあの球が写されていた。
「これは・・・」
ヒロシは驚いてミフィリアを見ると、ミフィリアはその反応を見て、
「これはシガールプラント。
このデータについては破損していてこの画像しか分かっていませんが、
これはシガールの切り札と思われます。これを使って、シガールの集団は・・・」
ミフィリアが説明しようとした時、
「エンドアース・・・」
と入り口から声がした。
振り向くとそこにはアリアを手に乗せたミリアが立っていた。
アリアはフワフワと浮いて、パソコンの上に降りるとパソコンの画面を見たあと、
ミフィリアとヒロシを見て、
「エンドアース・・・。その集団の名前や」
と悲しい目をしてうつむいた。ヒロシはとても驚いて、
「そんなことしたらお前。消えちゃうんじゃないのか?」
とあわててアリアを止めようとした。
「十分、楽しんだんで」
アリアは、さびしそうに笑ってヒロシを見た。
すると、首元の宝石が赤く点滅して、ビリッと音がしてアリアが少し光った。
「ウグッ」
アリアは体をこわばらせて小さく声を出して、体に少しこげあとが出来た。
アリアは顔をしかめて片を抱き、
「エンドアースは、ジーグスをよみがえらせてこの世界を終わらせようと・・・」
とまた説明を始めた。
すると、また宝石が点滅をしてさっきより大きな音がしてさっきより強い電撃がはしった。
「っ!!――――」
アリアは苦しそうにひざをつき、体をがたがたと動かしていた。
ヒロシはアリアを抱き起こして、
「やめろ!それ以上は・・・」
と止めたが、アリアは細かく息をして、
「いいんや」
とまた話し出そうとした。
「やめろ!!」
ヒロシが無理矢理にでも止めようとしたが、アリアはかまわず、
「ジーグスは、人の悲しみと憎しみを吸い込み成長するんよ。
完璧によみがえれば一瞬で・・・」
その様子を、ミリアはアリアの覚悟を知っているのだろうか。
止めるそぶりも無く、目を背けて見ないようにしていた。
「うぁぁぁぁ」
アリアは叫び声をあげて、力がぬけていった。
ヒロシの手にも少しビリッとした衝撃がはしって手を離して、
アリアはそのまま床に倒れこんだ。ヒロシはミリアとミフィリアをにらんで、
「何で止めないんだよ」
と必死に怒鳴りつけた。
二人は一瞬ビクッと体をこわばらせたが、黙っているだけで何もしようとしない。
ヒロシはそれを見て歯をかみ締め、空間から剣を取り出した。
「ちょっと、何するの」
ミリアがあわてて止めようとしたが、
「黙ってろ!!」
とヒロシが怒鳴りつけると、ミリアはビクッと体をこわばらせて静かになった。
ヒロシはアリアの胸元の宝石に剣をつきたてた。
「ヒロシ・・・はん・・・」
アリアはうつろな目でヒロシを見つめた。ヒロシはアリアに優しく笑いかけて、
「すぐ終わるよ」
と声をかけて、ヒロシはつきたてた剣を持つ手に力をこめて、宝石に差し込んだ。
すると宝石にひびが入って、ヒロシの体に雷にうたれたような衝撃がはしった。
「うっ、ぐっ」
ヒロシは短くうめき声を上げて、そのまま剣にもっと力をこめていく。
「ヒロシはん、やめて下さい。死ぬで!」
アリアは大声で止めようとした。
ミリアも止めようとしたが、ヒロシの肩をつかんだ時、
電気にはじかれて手を跳ね返された。
「別にいいよ・・・死んだって!!」
ヒロシは苦しそうに答えてさらに力をこめた。
宝石は少しずつだがひびが深く入っていき今にも割れそうだ。
あと少し・・・。ヒロシがそう思って力をこめた時、少し剣が押し返されるのを感じた。
ヒロシが驚いて宝石を見ると、徐々にひびが元に戻りかけている。
「バチッ、バチッ」
宝石は音を出しながらヒロシの体に今まで以上の痛みがはしった。
「うぐっ!」
ヒロシは苦しそうに顔をしかめたが、剣を押し戻そうと剣を持つ手に力を入れた。
しかし、体の感覚が無くなっていき力が入らなくなっていった。
力・・・入れよ!
ヒロシは心の中で強く叫んだ。
しかし無情にも手の力はぬけていきだんだんと意識が遠くなっていく。
「クッ」
ヒロシがひざを折って倒れそうになった時、頭の中に強い電撃が一本はしった。
そして全く体の感覚がなくなり、ヒロシはほぼ無意識に腕に力をこめた。
すると剣先が赤く光、戻りかけていた宝石を貫いた。
その光が宝石にあたると、宝石は砕けてほとばしっていた電気がぴたっとやんで、
ヒロシは黒焦げになってアリアの横に倒れこんだ。
「ヒロシ!」
ミリアがあわてて抱き起こし名前を呼んでヒロシの体をゆすった。
ヒロシはピクピクと体を痙攣させてうつろな目でミリアを見ていた。
ミフィリアはその様子を見て急いで治療の準備を始め、
アリアは呆然と砕けた宝石と倒れているヒロシを見つめた。
そこに、少し疲れたような顔をしたマーシャが入ってきて、
ヒロシが黒焦げになって倒れているのを見て目を見開いて驚いた表情をした。
「どうしたの?」
マーシャはヒロシに駆け寄りながら周りの焦げ臭い悲惨な様子を見て訊くと、
ヒロシを抱き起こそうとしているミリアが目に涙をためて、
「ヒロシが・・・ヒロシが・・・」
と必死にマーシャに訴えた。マーシャはそれを横目で見てヒロシのほうを叩き、
「おーい、大丈夫かー?」
と呼びかけた。
ヒロシは少しだけ手を動かして答えるとマーシャはその反応を見て立ち上がると、
バケツに水を入れて持ちヒロシの前に立った。そして、マーシャはバケツを構えると、
「ミリア、はなれてな」
と忠告した。
ミリアはゆっくりとヒロシを寝転ばせて少し離れて、
ミフィリアとアリアは動く手を止めて何をするのかと様子を見ていた。
そして、マーシャは反動をつけてヒロシにバケツの水をかけた。
「バシャ」
と大きな音がして水はヒロシに勢い良くかかると、ヒロシは、
「冷てぇ!」
と起き上がった。ミリアはそれを見てパッと表情が明るくなると、
「ヒロシッ」
と抱きついた。ヒロシは反射的に顔を赤くして、
「おいっ」
とミリアに言った。マーシャはゆっくりと足元にバケツを置いて、
「ラブラブだねぇ。お二人さん」
とヒロシにタオルを取ってよこした。
ミリアはそれを聞いて顔を真っ赤にしてあわててヒロシからはなれた。
ヒロシは微笑しながらさっき渡されたタオルでぬれた体を拭きながら、
「なんで、水かけたら動けるようになったんだ?」
とマーシャに訊いた。
「水をかけて、ヒロシの体に帯電した電気を外に逃がしたんだよ。
だから、動けるようになったの」
マーシャは得意げに言って、ボーっとしているアリアを手に乗せてアリアに声をかけた。
その様子を見ていると、ミフィリアがヒロシの前に立って安心したように笑った。
そして、アリアはヒロシの前に降りて、ぺこりと頭を下げた。
「ありがとう。ヒロシはん、これでやっと完璧に自由ですわ」
アリアは目に少し涙をためて笑いながら、砕けた宝石を見た。
うれしそうにしているが、笑顔はどことなく悲しそうに見えた。
「どうしたんだ?かしこまって」
ヒロシは笑って心配させないように少し痛む体に鞭打ち笑ってアリアの頭をなでた。
するとアリアはヒロシをジッと見て、
「ヒロシはんにはかなり迷惑かけてもうた・・・」
ともらした。ヒロシはそれを真面目な顔で聞いていたが、アリアが、
「だからこれ以上一緒には・・・」
と言いかけた時、ヒロシはアリアの頭を軽く叩いて口元だけで笑った。
アリアはきょとんとしてヒロシの事を見つめたが、
ヒロシはそのままの手でガシガシとなでると、
「そんな事気にすんな。仲間だろ。それに・・・」
とウインクをしてアリアに言った。
そして、恥ずかしそうに少し頬をかくと、
「俺も・・・アリアがいないと困るからな」
とつぶやいた。アリアはそれを聞くとポロポロと大粒の涙を流して、
「ありがとう・・・」
と安心したように座り込んだ。
ヒロシはそれを見て立ち上がり伸びをして体を見た。
所々にまだ焦げたあとがあり、タオルで拭いても取れないので、
「あのさ、風呂とかない?」
とマーシャに訊いた。すると、ミフィリアがヒロシの前に出て、
「私が案内します」
と名乗り出た。そして、顔を手で覆って泣いているアリアを見て、
「アリアさん、またお話を聞かせて頂けますか?」
と優しく問いかけた。アリアはこぼれてくる涙を手でスッとふき取ると、
「はいっ!」
と明るく笑って答えた。
その笑顔は今まで見たことが無いようなすっきりとした笑顔だった。
そして、そのままふわりと浮かびヒロシの肩に乗り、
「これからもよろしゅうな。ヒロシはん」
と言って座った。ヒロシは返事の変わりに明るく笑い、ミフィリアに、
「行きましょう」
と言って部屋を出た。
部屋に取り残されたマーシャとミリアはしばらく黙ってヒロシ達を見送っていた。
「じゃあ、私行くね」
ミリアが部屋を出ようとした時、
マーシャが後ろから追い抜いて、ミリアの前に立ち、
「ミリア、ヒロシのこと好きになってるでしょ?」
と仁王立ちでミリアに向かいウインクした。
ミリアはそれを聞きだんだん顔が赤くなって、
「な、そんなわけ無いじゃない」
と否定しながら顔を背けた。
「アハハハハ」
マーシャはそのミリアの反応を見て笑い、
「ばればれだよ」
とミリアのほほをつついた。
ミリアはぶすっとした顔でマーシャを少しにらんだが、マーシャはそれを無視して、
ヒロシ達が出て行った扉を目を細めてみて、
「まあ、あいつは気づいてないだろうけど・・・」
「えっ?」
ミリアは良く聞き取れず聞き返したがマーシャは答えずに出口に歩いていって、
「ちゃんと、自分の気持ちは、はっきり伝えなよ!」
と軽く手を振り部屋から出て行った。
ミリアはまだ少し顔を赤くしたまま、
マーシャが出て行くのをため息をつきながら見送った。
そして、今まで以上にヒロシのことを考えてしまうようになってしまっていた。
マー:じゃあ、予告どうりに
ミフィ:組織の紹介です
ドンドン、パフパフ
マー:作者、それいらない
作:えー
ミフィ:それじゃあ、この組織の方針を
マー:そうね、じゃあ、それを作者から
作:おい
ミフィ:別にいいじゃないですか
作:最近ミフィリア性格変わってきたな
マー:まあ、いいから。早くやってよ
作:わかったよ。MKSは・・
ミフィ:シガールを倒すんですよね
作:あ、ああ。そして・・
マー:人に被害が及ばないようにするのよね
作:そうだな。っていうか俺いらないじゃん
マー:そうでもないって
ミフィ:そうですよ。大丈夫です
作:そうか。もうやらないからな
マー:そんなこと言わずに
ミフィ:またお願いします
作:気が向いたらな