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八十八話

 


 ――――――――17地区の郵便局前では、M-ATVやM1151 共に増援としてやってきた他地区

 からの増援住民とM551、M103重戦車で交戦をしている17地区の住民の姿があった。

 雲霞の如く群がってくる鬼獣群は、激しい砲火の中を突き進んでくる。

 郵便局付近にある家の屋根の上からは、アキュラシーインターナショナル AW50、

 PGM ヘカートII、 バレットM82といった銃器で、鬼獣に向けて引金を絞っている住民の他に、ブローニングM2重機関銃、 XM806といった銃器の引き金を絞っている住民の姿もあった。



 何処から湧いてくるのか、主に『ソルジャー』で占められている鬼獣群は金切り声を発しながら、そしてはいつくばり接近してきている。

 数多の重火器類で容赦なく挽肉にされながらも、鬼獣群はますます濃密になりつつあった。

 それでもこの場で闘っている住民は誰一人逃げず、接近する鬼獣群にM67破片手榴弾や金属や

 プラスチック製のパイプの中に火薬を詰めたパイプ爆弾を投げつけて吹き飛ばしている。

 鬼獣群の死骸で埋め尽くされているが、金切り声が止む気配はない。




「畜生っ!! なんでこっちには増援はこないんだっ!?」

 AK-47の空になった弾倉を入れ替えながら、男性住民が叫ぶ。

「本当だなっ! 大量のアンドロイドオメガ800が向かっているって連絡が回ってきたが、その

 気配がないな」

 隣にいた男性住民が応えた。



 その手にはIMI ガリルが握られている。

「航空支援もないじゃねぇかよ! このままじゃ、マジで弾薬が切れたらナイフか素手で闘う事に

 なっちまうぞ!」

 AK-47の引き金を絞りながら、男性住民は大声で告げる。

 IMI ガリルを持っていた男性住民が何かいおうとした時、腰のベルトから吊っていたハンディ

 機のトランシーバーから呼ぶ声が聞こえた。

「(おじたん! 大変だよ!! ねえ 聞こえる!!)」

 トランシーバーから、幼い声が聞こえてくる。

「おうっ 聞こえるぞ! どうかしたか!」

 IMI ガリルを持っていた男性住民がトランシーバーに向かって話しかける。

「ウワーミライノヨメサント通話デスカー ウラヤマシイナー」

 AK-47の引き金を絞っていた男性住民が、かなり棒読みで告げる。



 IMI ガリルを持っていた男性住民は、中指を立てながら無視をする。

「(おじたん! 結衣と同じぐらいの男の子が、尚文露天商で販売している爆弾を持って鬼獣群に

 突っ込もうとしているよっ)」

 トランシーバーから、幼い声は、何処か鬼気迫っていた。

「・・・結衣、その種類は確認できたか?」

 IMI ガリルを持っていた男性住民は、感情のない声でトランシーバーに語りかける。

 AK-47の引き金を絞っていた男性住民も、「尚文露天商」という言葉を聞くと同時に真剣な

 表情を浮かべた。

「(うん・・『尚文露天商アーマゲドントリプルメテオフォーススペシャル』という商品だよっ)」

 トランシーバーから幼い声が返ってくる。

 AK-47の引き金を絞っていた男性住民とIMI ガリルを持っていた男性住民は、貌色を

 蝋燭の様に白くさせた。

 それはたまたま近くにいた複数の住民にも聴こえ、石の様に身体を硬直させた。

「結衣・・・何がなんでもそれだけは止めろ!!」

 IMI ガリルを持っていた男性住民は、絶叫するようにそう告げた。



 そのトランシーバーで連絡を入れた少女は、近くの民家の屋根に上っていた。

 付近には無数の殻薬莢と体格に合わせられているイサカM37、SIG SG550が置かれている。

 今、少女が使っているのは、体格に合わせられているダネル NTW-20だ。

 ダネル NTW-20の照準が向けられている先には、『尚文露天商アーマゲドントリプルメテオフォーススペシャル』という自爆攻撃用商品を身体に装着した少年がいた。

 その少年は悲愴な表情を浮かべながら、群がる鬼獣群に向けて走っている。

 ダネル NTW-20の引き金を幼女は絞った。

 轟音が走り肩にきた衝撃で、少女は呻き声を小さくあげる。

 弾丸は、自爆攻撃用商品を身体に装着した少年の頭を吹き飛ばした。

 ――――少年の身体が地面に転がると同時に、閃光が走った。

 その閃光は爆発に繋がった。

 まさに太陽が落ちてきたような轟音と閃光だった。



 大地を引き裂くような破裂音が沸いた。

 だが、破裂音は巨大な閃光の後に起こったものであった。

 炎の玉が低い空にかかった。

 直径が500メートルほどの火炎玉だ。

 続いて、大地を引き裂く破裂音と爆風がり一帯に奔り抜ける。

 火炎玉から半径900メートル以内にある建物は一瞬でガラスが吹っ飛ぶ。

 その後を熱風が牙を剥く。

 熱風は半径400メートル以内にあるものは、鬼獣や人間を含めてたちまち炎の塊にした。

 ありとあらゆる可燃物は一瞬にして燃え上がった。

 低い空にできた500メートルほどの火炎玉の塊が消えたのは、約14秒だった。

 その時には、郵便局付近一帯は炎の海になっていた。

 砲弾を撃ち出す様に爆発が続く。

 都市ガス、プロパンガス、弾薬類の誘爆だった。

 爆発とほとんど同時に、鬼獣群と防衛している住民が一瞬にして即死していた。

 巨大な火炎玉は周囲の酸素を消費尽くし、同時に直径5、600メートル以内は酸欠になった。

 鬼獣群や防衛していた住民は、死亡者も含めて熱風で燃え上がった。



『尚文露天商アーマゲドントリプルメテオフォーススペシャル』というふざけた名前に似つかわしくないほどの阿鼻叫喚の地獄を現出させた商品。

 狙撃し阻止した少女も・・またその商品の存在を知っている住民も知らなかった事があった。

 この商品は従来の爆発物と同じように、安全装置解除および起爆時に電気導火線同士を接触させる

 方法と、心臓の鼓動と同調させ、心臓が停止すると同時に自動爆発させる方法があることを。

 ――――なお、値段は2円なり。










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