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八話

 


 その翌日ーーーー

 露店商に出勤した彼は、勤務時間で余裕が出来た間に、大量破壊兵器について

 尚文露店主にしようとした時、間の悪いというべきか緊急事態が発生した。

「(何か騒がしいな)」

 露店内の従業員エリアにいた彼は、騒がしく移動している店員達の様子を見て

 頸を傾げた。

 しかし、その原因はまもなくわかった。

 まもなくして、アロハシャツを着込んだ尚文露店主がその場にやってきて大声で

 告げる。




「全員聞いてくれっ!! 隣接する17地区内全域にて局地的鬼獣警報が発令

 した! どれほどの鬼獣が出現したかはまだ不明だが、これから続々と近隣地区

 から増援部隊が手当たり次第送られ、防衛戦が展開するだろう。

 また、17地区内全域の市民も一旦、ここに緊急避難してくるはずだ!―――――。

 いいな、客から要求される重火器類や弾薬、軍事レーションから臨時レーション

 類を局地的鬼獣警報が解除されるまで、用意出来る全ての商品を売り捌け」

 尚文露店主は、その付近にいる店員を睥睨し、獰猛な狼の様な笑みを浮かべな

 がら告げた。

 そして、ポケットからちくわの入った袋を取り出して封を切り、ちくわを

 咀嚼する。

「(・・・こんな状況でもちくわを食べるのか、この人は)」

 彼は、何とも言えない表情を浮かべながら、尚文露店主を見た。




 まもなくして、尚文露店主の言葉通り鬼獣の群れとの交戦で硝煙と血泥に 

塗れ、ぼろぼろの 迷彩服を纏った一時退却の住民で熱気に包まれた。

 一時退却の住民の中には、上半身が裸や下着も付けずに、硝煙と血泥に塗れた

 全裸の住民もいた。

 力なく膝を抱えて下を向いている住民、まるで地獄の底から手を伸ばす亡者の様な薄昏い炎を宿した瞳の住民―――。

 特に後者の住民は、大規模鬼獣群の包囲網で指揮系統は破綻一歩手前の17地区へと舞い戻って行く。

 その光景は、彼が「鬼獣の宴」の期間に何度か見た光景でもあった。




 鬼獣群の包囲網から脱出してきた17地区内全域の住民達は、一時的に露店商のある駅前広場の一角に集められた。

 そこでは、尚文露店商から無料でビーフシチューとチャーハンが提供され

ていた。

 住民達は、提供されているビーフシチューとチャーハンを恐ろしい早さで

 平らげていた。

 彼は、その様子にただ、唖然とするだけだった。

 しかし、ビーフシチューとチャーハンの具材を考えると、彼は何か考えるものが

 あった。




「(知らぬがなんとかだな)」

 彼はそう思った。

 ビーフシチューとチャーハンの具材には、露店商が取り扱っている、カロリー計算は完璧だが、味が壊滅な軍事レーションが密かに混ぜて使われているからだ。

 やはり壊滅な軍事レーションが余るらしく、この尚文露店商はそれらを局地的鬼獣警報が発令した地区から避難してくる住民にビーフシチューとチャーハンに

混ぜて無料提供をすることによって補っているのだ

 提供している名は、「尚文スペシャルチャーハン」と「尚文特製

ビーフシチュー」だ。

 少なくとも、彼は本当に食料が無くなった時以外には口にしたくはない商品だ。




 この料理を調理しているのは、初めてこの露天商に来たときに見掛けた、

 狐面を 被り白装束を着込んだヨクイという名の人物と、もう一人は、

 この近所にある 喫茶店「しゅれねこ」から臨時助っ人としてやってきている

 人物だ。

 臨時助っ人の名は、網田めい。

長い黒髪を後ろで束ね、健康的な 小麦色肌、気の強そうな切れ長の眼に、

愛らしい口元が知的に引き締まっている。

彼女は、都会的に洗練されているわけではなく、かと言って、田舎の純朴な雰囲気ばかりというわけではない。

繊細そうにも見えるが、限りなくバネを秘めた活発な感じにも見えた。

神秘的と言うべきかもしれない美人女性ウェイトレスだ。




 その女性は、大変疲労した表情を浮かべながら尚文露店商と話をしていた。

「尚文店長――――・・・あたし、もう駄目ですぅ・・・。これ以上多忙になったら

 死んじゃう」

 網田めいが眼に涙を溜めながら告げる。

「そう簡単にそう死んだりしないさ。

 もう死にそうと言うのは、ここに避難してきている連中の事を言うんだぞ。

 それに、俺は、お前の雇用主、シュレーディンガーの猫っぽいマスターに、

 ちくわと猫缶半年分を提供するから、お前の所のウェイトレスを貸せと言った

 はずだぞ」

 尚文露店主が伝票を見ながら応える。




「その呼び名、結構気にしているんですよ・・・マスターは」

 網田めいが肩をがくっと落としながら告げる。

「何処に気にする様子があるんだ? 俺から見ればシュレーディンガーの猫っぽい

 からしかたがないじゃないか。」

 尚文露店主が憮然とした声で応える。

「もう、その呼び名は変えないんですか・・・、マスターが不憫でならない」

 網田めいが静かに応えた。

「料理する技術も巧いし、客の接客も見事で、さらに人を見る眼のあるあいつの

 何処が不憫なんだ? 逆に俺はあいつは幸せ者じゃないかなと思うぞ」

 尚文露店主は笑みを浮かべながら告げた。

「例えば?」

 網田めいが興味深そうに尋ねた。

「お前みたいな優秀な人材を雇用出来た事だ」

 尚文露店主は応えた。





作品内で出てくる、しゅれねこ、ヨクイ、網田めいのお名前は、小説家になろうで交流させて頂いている作者様の名前を使わせて頂きました。


ご許可を頂いた、しゅれねこ先生、網田めい先生、ヨクイ先生、

ありがとうございました。




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