七十九話
激戦が続く17地区へと向かう増援部隊にとって、18地区が経由地としても
カギを握る場所である事を彼は、嫌でも理解した。
防衛軍の最大の狙いは、17地区から向かってくる可能性がある鬼獣群の流れに
歯止めをかける事とと、ラブホ建設予定地の奪還であることだ。
もちろん、露店で働いている彼にとっては知りたくもない事だが・・・。
18地区のこの露店で、武器弾薬類を購入しても、目的地の17地区で命を落とす
増援部隊も後を絶たない。
大幅な兵力の増援にもかかわらず、新鬼獣の出現の影響もあり攻勢は簡単では
ないようであったのだが・・・。
どうやら、新鬼獣の出現の影響の他に、17地区で開催されていた
アイドルグループの熱狂的な追っかけ集団の代表と17地区の代表者達の間で
意見(?)の衝突の影響も少なからずとも戦況に影響を及ぼしている様でも
あった。
熱狂的な追っかけ集団は、アイドルグループの救助だけが
目的らしく、そのために大量の弾薬とファンクラブ会員を動員した。
17地区の責任者は、苦戦している場所での火力支援を行ってもらう事で、
同代表との合意はしたがファンクラブ会員の一部が難色を示し、その結果、
現在戦況が複雑化しているのだ。
もちろん、そんな事は彼は知る由もなく、そんな事を教えられても彼には
どうする事も出来ない。
現に、眼の前の光景を見て愕然としている。
「・・・・・・はい?」
彼は、隣にいた男性店員静納鷹谷に、もう一度聞き返した。
「いや、彼彼女らは、小学生だよ」
静納は、砕けた口調で応えた。
2人の眼の前では、静納が応えた小学生の集団が慣れた手つきで重火器類の点検や弾倉のチェックなどを行っていた。
その小学生らは、何やら彼からは理解出来ない軍事用語などを交えて会話して
いる。
「・・・・・・・・・」
彼は、何とも言えない。
確かにそうだろう。小学生達が日常的に軍事用語などを交えて喋っている
光景は、あまりにも異質だが、この世界では普通の光景だ。
「この子達は、これからラブホ建設予定地で向かうんだよ。あっちは、あっちで
予備選力も枯渇寸前みたいだからね」
静納は、ストローを突き刺している紙パックの牛乳を飲みながら応えた。
「マジですか」
彼は、かろうじてそう応えた。
露店内の店員達から、聞こえている所によれば、ラブホ建設予定地では、
多大な損失の中、防衛軍は用意しているありったけの砲火で防戦している
らしい。
「うん。しかし、一体何人生き残るか・・・」
静納は、静かに告げた。




