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七話

 

 ――――数日後の夜。

 自宅で風呂上がりにスポーツ飲料水を飲みながら、何げにテレビニュースを見て

 いた。

「本当に、ここは別世界だな」

 彼はしみじみと呟いた。

 彼の視線の先には、「手野新聞」がある。

 彼がいた世界では、そのような名前の新聞など見た覚えはなかったが、どうやら

 この世界では、この「手野新聞」が大手新聞らしかった。

 現に、他の新聞社の名前が存在していないのだ。

 現にこの数日、彼が前から取っている、「手野新聞」以外の新聞は放り

込まれてはいない。

 また、この「手野新聞」は、いささか独特で、全ての情報を網羅しているのだ。

 しかも、全て読みやすい。

「手野新聞」を初めて見たとき、彼は全ての情報を網羅しているこの新聞に度肝を

 抜かれた。




 しかし、彼が驚いたのは新聞ばかりではない。

 この世界のテレビもだ。

 テレビは、彼がいた世界と同じ局は存在していたが、そこに「手野テレビ」と

いう局が存在していた。

「手野テレビ」系列は、彼が元の世界で見ていたNHKにいくらかの民放を加えて混ぜ混ぜした番組を流していた。




 そして今も、彼は「手野テレビ」を見ていたのだが、思わず彼は口に含んでいた

 スポーツ飲料水をぶはっと噴いた。

 テレビの画面では、海外の鬼獣群との戦闘状況を流していた。

 ここまでなら、この奇妙な世界に来てからの彼でもそれほど驚く様な様子では

 なかった。

 全てのチャンネルのニュースでは、日常的に日本国内外で発生している鬼獣群との局地的な戦闘映像を流していた。




 その流れてくる映像は、彼の想像を遥かに超えた凄惨な戦闘映像だった。

 前の世界のテレビニュースでは、映像規制されるような戦闘映像が流され

 ている。

 まるで、それまで彼が、身に置いていた元の世界の人間達は偽りの仮面を

 被って いるだけで、人間の本性はこうなのだと言わんばかりに、鬼獣に追い

 詰められた果てのあらゆる狂気と闘争本能が、いつ果てるとも終わるとも知れない時間の中で繰り広げられているテレビ映像が流されていた。

 初めてテレビニュースでその光景を眼にした時、彼はその衝撃にトイレに駆け込んで嘔吐した。




 ――――――――しかし、今回のテレビニュースは、口に含んでいたスポーツ飲料水をぶはっと噴き出す様な映像だった。

 映像ニュースは、中東付近での鬼獣群との交戦映像だった。

 


ニュース内では、突出した防衛軍が大規模鬼獣群に包囲され孤立化している

 という情報をアナウンサーが読み上げている。

 鬼獣群の包囲網の中で防衛軍は、多大な犠牲を払いながら凄惨で激しい闘いを

 繰り広げ、鬼獣群の攻勢を遅れさせているという内容だった。

 ここまでなら、彼もなんとなく大変なんだなと理解出来たのだが、ここから

 問題だった。

 テレビでは、中東の防衛軍のお偉いさん方が集まり、鬼獣群の包囲を解くために鬼獣群へ小型 核爆弾による反撃を命令している映像が流れた。

 その中には、先日露店商に来ていた中東系の外国人 2人も映っていた。




「あれ、なんか先日、お客さんで見た様な外国人が・・・」

 彼はそう呟きながら、スポーツ飲料水を口に含んだ。

 その後に、厳重にスーツケースに保管された小型核爆弾の映像が流れたのだが、

 この写り込んでいた映像が、スポーツ飲料水をぶはっと噴いてしまうという

 元凶になった。

 スーツケースには、三匹のペンギンの画が描かれていた。

 一匹は、日本の伝統衣装で、祭などの際に着用する法被を羽織り――――

 一匹は、頭にお鍋を被り―――――

 最後の一匹は、アロハシャツと黒いサングラスをかけていた。




 その画は、彼が雇用されている尚文露店商のロゴマークだ。

 それと共に、彼は背景が黄色、マークは赤紫のシンボルマークの意味を思い

 出した。

「思い出した!!、あのマークは大量破壊兵器だっ!!」

 咳き込みながら、彼は叫んだ。




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