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四十六話

 



 露店店内の従業員専用エリアにある食堂に彼はいた。

 食堂内には、彼以外に交代制で食事をしている店員の姿があるが、全員が

汚れた迷彩服姿だ。

 そして全員が実戦経験が豊富な猛者な店員達だが、今はそれぞれ雑談を

しながら食事をしている。

 そんな中で彼は、普通の(この世界では、いささか珍しい)私服姿だ。

 彼のいるテーブルには、彼の面倒をよく見ている店員の1人、重岡浩が

「手野新聞」を読んでいた。

「兄ちゃん、この状況はまや続くぞ」

 重岡は、関西訛でそう告げながら新聞を放り出した。

「続きますか」

 天ぷらうどんを咀嚼していた彼は、貌を上げながら応えた。




「そりゃあ、店長が直に海外系列から応援の人員呼んやからな。早々に終結しぃなら呼ばへんはずや」

 湯飲み茶碗に注がれているお茶を飲みながら、重岡が関西訛りで告げる。

 彼はそれを聞いて、この露店は海外にも展開しているのか・・・と純粋に

驚きながら、食堂付近を見渡す。




「(こんな、体格の良い店員が海外にもいるのか)」

 彼はそう思いながら、生唾を飲み込んだ。

 その彼に対する店員達の態度が、この数日で若干変わっていた。

 その変化は、微妙だが彼もうすうすは感じていた。

 何処か畏敬(尊敬?)されているような態度に変わっているのだが、その

原因が一体何なのか、彼には見当もつかなかった。

 その一つの原因が、眼の前の重岡を爆笑させて戦闘不能にさせた事だとは気づいていない。

 そして、これこそが集いし露店員の猛者達や露店に関わる関係者などに、

想像絶する衝撃を与えた事を彼は知らない。




「ーーーしかし、450人程度の増援だ」

 彼が何か言おうとして、後ろを振り返るとアロハシャツと短ズボン姿の尚文露

 店主がいた。

 両手には焼き豆腐とちくわをのせた皿を持ち、頸からペンギンのロゴマークが入った白い手拭いをかけている。

「そりゃや、店長、いきなり海外系列から2000人の応援人員を呼ぶんは

 無理でっせ」

 重岡は軽く会釈をして、湯飲み茶碗に注がれているお茶を飲みながら応える。

 重岡の返答に、彼は思わずせき込みかけた。




「(あれ、たしか店長は、従業員1500人って言っていたような・・)」

 以前に、尚文露店主に従業員数を尋ねた時の人数と、重岡の告げた従業員数が

 違っている事に、何となく疑問を感じた。

「俺はそれでも少ないぐらいだと思っているぞ。

 まったく、この国の外務省と法務省、総理大臣達には困ったものだ。

 あと、金蔓の手野に「増援の受け入れのため、飛行場利用させてもらう」

 と言ったときの、あの苦渋の表情にはまいったぞ。俺はそんなに無茶な事は

 言っていないはずなんだが」

 尚文は少し不機嫌な表情を浮かべながら、彼の向かい側の椅子に腰を下ろす。

「・・・ボーイング747-400を貸し切って、手ぇ野グループの飛行場から増援運び込めってか、搭乗員は手ぇ野グループの搭乗員にせえってか・・・・これは無茶でっせ」

 重岡は何とも言えない表情を浮かべながら応える。




「(今、外務省とか法務省とか、総理うんぬんって、店長の口から出たような。

 あと、金蔓の手野って何だ?、あの「手野新聞」と関係あったり、テレビ局とか

 関係あったりするのか?)」

 その2人の会話を聞きながら彼はそう思った。

 しかし、彼は「手野」という名前に聞き覚えがまったくないとは言えない。

 といっても、テレビ局や新聞くらいしかしらないが。

「それに、現政権の内閣総理大臣や外務省や法務省に警視庁や警察庁、やって

 公安調査庁やらなんやらに電話一本でぇ圧力かけたり、世界有数の大企業グループの手ぇ野グループを金蔓って言えるんは、店長ぐらいでっせ」

 重岡はさらに、関西訛でそう告げる。




「圧力? 権力者には圧力ぐらいかけないと何も動かないぞ、重岡。

 それに現政権に関わっている首相や議員の私設ボディガードは、俺が

「友好の証」として提供している間からだ」

 尚文はそう告げながら、焼き豆腐を食べはじめる。

「・・・・ここ数年幾人かの大臣職の政治家を辞めさせた人がどの口でぇゆうんでっか、それに「友好の証」やのぅて、監視の間違いでぇは・・・」

 重岡は、おどけるように肩をすくめて応える。

「知らないな、そんな昔の事は」

 尚文は、豆腐を咀嚼しながら告げる。

「(嘘なんか本当なのか・・・・絶対知りたくない)」

 彼はそう思いながら、一心不乱に天ぷらうどんを食べ続ける。



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