三十六話
もちろんそんな些細な事などこの時点で、尚文露店主は考えもしていない。
ただ、無心に迫ってくる第二派の鬼獣群との闘いに集中している。
横薙ぎに振るった聖剣『フラガラッハ』の一撃は、中型鬼獣「イントゥルーダー」を深く抉り、致命傷を与えた。
中型鬼獣「イントゥルーダー」が倒れるよりも最速で、従来型鬼獣
「ソルジャーが固まっている場所への距離を縮めた。
第三者からみればあまりにも速さで、現実感がなかった。
また尚文露店主の変わった服装なため、派手なアロハシャツが剣舞をしているかの様にしか見えなかった。
従来型鬼獣「ソルジャー」の群れが頭上高く舞い上がり、爆風とそれで巻き上がる土埃が付近を覆った。
そしてそこから、自然落下に従来型鬼獣「ソルジャー」がアスファルトに
落下する。
巻き上がった土煙がたわみ、横へと吹き流された。
聖剣『フラガラッハ』を持った尚文露店主の次なる目標は、猟犬型鬼獣
「インベイダー」だった。
常人でも肩の骨が砕ける様な強撃だ。
剣の速さは、人間でも鬼獣でも反応ができない音速を超えるスピードだ。
猟犬型鬼獣「インベイダー」は、『フラガラッハ』によって、宙を舞った。
おそらく今の一撃で絶命しただろう。
倒した中型鬼獣「イントゥルーダー」とは別の「イントゥルーダー」が、奇声を
発し、優れた機動力を生かしながら猛接近してきた。
尚文露店主は、無表情のままサンダルを履いた片足を瞬時に、頭上に上げた。
同時に、猛接近してきた中型鬼獣「イントゥルーダー」の脳天へと落とした。
尚文露店主が放った足技の直撃を受けた中型鬼獣「イントゥルーダー」は、
そのままアスファルトに沈み、動かなくなる。
尚文露店主は、支点にした脚をバネに、後方へ跳躍し、くるりと一回転し
着地した。
瞬間、残りの鬼獣群が奇声を発し、威嚇するかの様に歯をカチカチさせた。
その様な戦慄すべき光景でも、尚文露店主は落ち着いていた。
「お前たちは、人類の力というものを知らなさすぎる。敵対した瞬間から、
お前達の敗北は決定したんだ」
尚文はそう静かに告げる。
鬼獣群は咆哮した。
それは憎悪と闘いへの興奮の雄叫びだ。
それが尚文露店主と鬼獣群の二回目の戦闘開始の合図となった。
それを待っていたかのように勢いよくこちらへ飛びかかってくる猟犬型鬼獣
「インベイダー」をその場から動くことなく尚文露店主は、一瞬にして
吹き飛ばした。
数m先まで吹き飛ばされた猟犬型鬼獣「インベイダー」は起き上がる
様子もない。
次に動いた尚文露店主は、地面を蹴り残像すら生むほどの俊敏さで、鬼獣群に
接近する。




