三十話
緊急防衛指定場所とは、各戦区の司令部が指定した大人数収容できる防衛場所の事で、局地鬼獣警報などの大規模鬼獣群との交戦時に使用されている場所だ。
鬼獣群との大規模交戦計画に基づき設置されている。
緊急防衛指定場所の広さは六千坪近くと決められ、周囲は五メーターほどの高さのコンクリート堀、四隅に見張り台の小さな建物を設置し、要所要所には銃眼がついたコンクリート製のトーチカが配置する事、四階建ての鉄筋コンクリート造りの
建物を設置、屋上にはトーチカ、周辺には光学センサやレーダー、内蔵の動体探知機により接近する鬼獣群を自動迎撃する無人銃座「セントリーガン」と呼称される兵器も設置する事などが決められている。
―――――見る人によるが刑務所のそれのように見えるかもしれない。
現在、17地区緊急防衛指定場所は鬼獣群の急進撃の混乱に叩き込まれていた。
随所では、無限の地獄に投げ落とされたような凄まじい怒号と悲鳴で満ち
ていた。
周囲を従来型鬼獣「ソルジャー」、猟犬型鬼獣「インベイダー」の大群に
包囲され、屋上の各トーチカのブローニングM2重機関銃やM134ミニガンに
セントリーガンが唸り声を上げている。
包囲網の中は17地区の住民で占められているが、全員が一丸となって掃射を
している。
「駄目だっ、数が多すぎるっ!!」
三脚を備え付けたM134 ミニガンをぶっ放し、弾丸の豪雨を降らせている男性
住民が吠える様に叫ぶ。
「増援はっ、増援はまだ来ないのかっ!? これ以上鬼獣を食い止める事は
できないぞっ!!」
フェイスペイントをした男性住民がS&W M19をぶっ放しながら叫ぶ。
「おい、嘘だろ!? トーチカの一つが粉砕されちまったぞっ」
ワルサーP38を撃っている男性住民が怒鳴る様に告げた。
押し寄せる鬼獣群に耐えられなかった一つのトーチカが粉砕された。
正確には、従来型鬼獣「ソルジャー」、猟犬型鬼獣「インベイダー」を
数百匹(体?)を道連れに自爆をした。
周囲が轟音と共に激しく揺れ、トーチカから火柱が上がった。
炎に包まれた従来型鬼獣「ソルジャー」、猟犬型鬼獣「インベイダー」は、
金切声を発してのたうちまわっている。
だが、それでも鬼獣群の進撃は衰える事はない。
「あれは自爆したんだっ!! あのトーチカにいたのは、日本決死隊の連中だ。
『日本決死隊は、いかなる状況下でも絶対的に鬼獣を殲滅しなくてはならない』
それがモットーだろうがっ!」
S&W M19をぶっ放していた男性が銃弾を詰ながら応えた。
「おいっ、新手がきたぞっ!! 前方四十メートル、猟犬型鬼獣「インベイダー」!!」
PGM へカートⅡ アンチ・マテリアル スナイパーライフルをぶっ放していた男性住民が告げた。
「糞っ、こっちでも確認したっ、いったいどんだけいやがるんだっ!!」
M134 ミニガンをぶっ放していた男性が叫ぶ様に応えた。
「げっ!! 今度は『鬼獣ホイホイ』の一つが爆破したぞっ!?」
PGM へカートⅡ アンチ・マテリアル スナイパーライフルをぶっ放していた男性住民がさらに告げた。
『鬼獣ホイホイ』は手野グループの優秀な技術者が、鬼獣の習性を研究し、
ゴキブリの駆除用品を元に、製造開発した武器だ。
見掛けからして、巨大なゴキブリの駆除用品にしか見えないのだが、特殊な粘着剤
で鬼獣を動けなくする。
そして、一定の数が捕まると自爆するという仕組みである。
「あーっ、糞っ、もうちょっと『鬼獣ホイホイ』があればなぁ・・・」
M134 ミニガンをぶっ放していた男性が、何処か溜息混じりに応える。