二話
彼がこの露店で雇用されてからまだそんなに期間はたってはいないが、
それでも、あまりにも現実離れした光景が広がっている。
彼は奥から台車に木箱に載せて、尚文露店主に指示された場所に運んでいた。
その場所には、値札に「手榴弾 一ケース100円」と貼られていた。
「(この木箱に入っているのは、手榴弾かよ・・・)」
彼は生唾を呑み込んで、台車から木箱を下していく。
手榴弾の売り場の横では、アスリートの様に鍛えられた、身体で迷彩服を
着込んでいる2人の男性客がいた。
二人組は、露店で販売されている銃器商品を見ながら会話をしていた。
「で、どれにするんだ?」
手に持っていた財布の中身を出して、ポケットに仕舞った男性客が横にいた
男性客に尋ねた。
その男性は、何か難しそうな表情を浮かべている。
「銃器選びは、恋愛と同じだから、もうちょっと待ってくれ」
悩んでいる男性客が応えた。
「つーか、そんなに悩む事ないだろ? 鬼獣の行動よりも早撃ちのお前さんならよ。それより恋愛と同じって、何だよ」
思わず軽く突っ込みを入れ、軽く背伸びをする男性客
「…鬼獣との交戦で苦戦している味方を援護したいと思えば、時間は掛けられないだろ、俺は鬼獣が飛び掛かる準備を待ってやるつもりはない」
悩んでいる表情を浮かべている男性客は、何かぶつぶつ言いながら、販売展示されている一丁の銃を手にした。
「急ぐのもわかるけどな、急ぐんだったら仲間に声かけても返答も行動も遅いのは・・・、で、それにするのか?」
背伸びしていた男性客が、一丁の銃を手にして何か確認している男性客に
尋ねる。
鬼獣との交戦地域では、戦況状況次第で制限がどうしてもかかってくるため、
負傷者の救援の訴えを否定される。
地区本部から即座に否定されるのはまだいい方、時間をかけた挙句に却下になる
確率も高い。
とはいえ、鬼獣と交戦している市民も必死なのだから、フットワーク軽く増援も
救援も無い事態にはため息が出る。
ーーー彼は、まだ名前は知らない銃だが、その男性客が手にした物は、
SIG SAUER P220という自動拳銃だ。
値札には、140円と貼られている。
「汝、恋愛をするならば服装を整えよ」
P220を手にした男性客が不敵な笑みを浮かべながら応えた
「それは違うだろ」
背伸びしていた男性客は、再び軽く突っ込んだ。