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十一話

 


 ――――その直後から、テレビモニターから凄惨な戦闘映像が流れ出した。

「(タリホーー!!、左前方五十m、鬼獣!!)」

 某映画で宇宙海兵隊の10ミリ口径ケースレス弾300発を装填可能な制式支援用重火器をぶっ放していた男性住民が叫ぶ様に、誰ともなしに告げる。

 かなり重量があるため、射手には並はずれた筋力が要求されるはずなのだが、

 余裕でぶっ放している。

「(糞がっ、後から後から湧いて出てきやがるっ!!)」

 某映画で宇宙海兵隊の正式採用小銃をぶっ放している男性が応える。

 その貌には、フェイスペイントを施していた。




「(これの何処が手薄なんだ!!救援するどころかこっちが撃滅されそうな

 勢いじゃねぇかっ!!)」

 軍用小銃 ステアーAUGの引き金を絞り、鬼獣に向けて銃弾を浴びせている

 男性住民が悲鳴じみた声で叫ぶ。

 鬼獣の金切声と戦闘に参加している住民の絶叫と怒声が、テレビモニターから

 響いてくる。




「(郷田! 岩崎! 小林! あいつら何処に行きやがったんだ!?今、

 交戦中だぞっ)」 

 自動拳銃M1911の弾倉を装填していた男性が誰ともなしに大声で尋ねる。

「(さっき、ワルシャワ労働歌を高らかに歌い上げながら、突っ込んで行きやがった!!)」

 M16自動小銃の引き金を絞っている男性が罵る様に応える。

 銃弾

「(あの三馬鹿どもがぁっ!!)」

 自動拳銃M1911の弾倉を装填していた男性が、怒気の孕んだ声で告げると

 同時に、蒼く照り返す鋼鉄のような皮膚に身体中覆われ背中に翼を生やした

 鬼獣に上空高く蹴り上げられた。




 彼は、その映像を思い出して思わず吐きそうになったが、辛うじて耐えた。

「――――とまぁ、そう言うわけでな、店番頼むな。俺は、尚文ペンギン丸一号に乗っかって商品の配達だ」

 尚文露店商は、そう告げると何時もの下駄ではなく、サンダルをペタペタと鳴らしながら、尚文ペンギン丸一号という名の乗り物がある場所へと向かって行く。

「(尚文ペンギン丸一号ってなんだよ)」

 彼は頸を傾げながら、とりあえず尚文露店商の後を追う。




 その先には、五人ほどの店員が整列をして待機していた。

 迷彩服を着込んでいるのは、この世界に紛れ込みんで以降日常な光景だが、

 右腕に白い腕章をつけている。

「総員、傾注!」

 真ん中の男性店員が号令をかける。

 尚文露店主は、その5人を睥睨するように見渡す。

「手短に伝える。

 現在17地区に対しての商品配達に支障がきたしている。

 本来シフトでは休みだった諸君には悪いとは思っているので、あとでちくわを

 一箱臨時支給するから、それで勘弁してくれ」

 5人の店員は、ほんの一瞬げんなりと表情を浮かべた。

 しかし、すぐに元の無表情の貌に戻す。




「露店の目標は、大規模鬼獣群の連絡線の遮断によって、ほぼ途絶状況の緊急防衛指定場所並び17地区全域だ。注文商品は全て送り届ける」

 尚文露店主が静かに告げた。

 そこには、並々ならぬ決意が秘められている様でもあった。

「店長! 鬼獣との交戦は?」

 整列している店員の1人が尋ねる。

「俺達の第一目的は、17地区全域で包囲され危機に直面しながらも、商品を注文してきた客に商品を届ける事だ!! 商売の邪魔するなら欠片も残すな―――――。

 届ける速さなら、今、前の道を通過していく戦闘機輸送会社「扶桑狐」と遅れは

 取らない事を証明してやれ」

 彼は、尚文露店の言葉を聞いて前の道路に視線を向ける。

 丁度、道路をサムズアップしたゴーグル装備の狐のロゴマークを施した大型

 トラックが走り抜けていった。

 見た限りでは、荷物の配達を終えた様だが。




「(戦闘機輸送会社・・・まさか、戦闘機を配達している会社なのか)」

 彼は、頸を少し捻りながら考えた。

 もちろん、その間にも露天商と店員との質疑応答(?)が続いている。

「では、行くとしようか。存分に注文を受け、存分に売捌き、商売と生き残るためなら、陸海空、全ての戦域に「武器」を届けよう。

「武器」を売り捌いて「戦況」を動かし、「戦況」を動かして「経済」も動かし、

「経済」を動かして、「国」を動かす。

「国」が動けば世界が廻る――――「ロテンショウミクス」を実施しよう」

 尚文露店主は、ポケットから袋入りのちくわを取り出して破るとそれを咀嚼しながら、獰猛な笑みを浮かべた。

「「おうっ!!」」

 5人の店員がそう応えると、商品が載せられているバイクに跨ってキーを

差し込み、激しい排気音が鳴り響かせながら転がしていく。




「さて、兄ちゃん。俺もそろそろ行くから後は頼んだ」

 尚文露店主が、掌をヒラヒラさせながらハーレーダビッドソン・VRSCに

 跨った。

 そのバイクの後ろには、同じ三匹のペンギンの画が描かれている。

 だが、その三匹の中で頭にお鍋を被っているペンギンだけが、王冠を被っているのが特徴だ。

「さて、尚文ペンギン丸一号―――――風になるぜ」

 尚文露店主がそう告げると、キーを差し込んで地鳴りのような音を鳴らし、

 転がしていく。

 服装が服装だけに、かなり目立っている事は確かだ。

「というか、バイクにそんな名前をつけているのか、あの店長は」

 彼は、何とも言えない表情を浮かべながら見送った。



戦闘機輸送会社「扶桑狐」の名は、交流させて頂いている扶桑狐先生の名を

許可を頂いて使わせていただきました。

ありがとうごさいました

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