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十話

 


「兄ちゃん、ちょっと俺も配達に出る」

 臨時助っ人ウェイトレスの網田めいとの話し合い(?)を終えてから、

しばらくして尚文露店主が、軍事レーション、キャットフード、ドックフードを台車に載せている彼の傍に近づいてきて告げる。

「配達ですか」

 彼はそう応えた。

「ああ、注文商品の配達がスムーズに行なってはいるんだが、鬼獣群の侵攻行動が

予想以上に速すぎて、ちょっと時間がかかっているんだ・・・。

それに、17地区内全域 から緊急退避してきた住人の治療やらで、店員も

店員もそちらに振り分けているからな」

 尚文露店主は、臨時救護テントが設置されている方向に視線を向ける。

 臨時救護テントから治療中の住民の魂を削り取られる様な悲鳴が聞こえてくる。

 テントの中は、治療を受けている17地区内全域から緊急退避してきた住人で

 埋め尽くされていた。




 血の滲んだ包帯を巻いた負傷者がベットを埋め尽くし、比較的軽症の住民は、

鬼気迫る表情を浮かべながら、尚文露店商が用意した値段価格一円設定の重火器類を選んでいる。

 ――――無数の重火器類が整理されて置かれている横には、「大量破壊兵器商品をご注文されるお客様は、係の者に声をかけてください」という一枚の紙切れが貼られているが、今の所誰も注文する客はいない。

 値段は4円と書かれているが―――――。




「なるほど」

 彼は短くそう応えたが、あまり理解はしていない。

理解しろというのが少し無茶な所がある。

「それともう一つ。

17地区の緊急防衛指定場所からの指揮系統が破綻して、包囲されている住民が

連絡取れずに個々で防衛しているらしくてな――――って、兄ちゃんは配達班から送られてきていた、映像をさっき食い入る様に眺めていたか」

 尚文露店主が告げてくる。

 尚文露店商の配達注文場所には、配達班のヘルメットに埋め込まれている小型

 カメラとマイクが捉えた映像や音声が、設置されている幾つかの中型テレビモニターに映し出される。

 彼はほんの少し前、そこで映し出されている映像を食い入る様に見ていたのだ。




 映像には、彼がこの世界に紛れ込んで以来の凄まじい戦闘映像を見る事になった。

「(こんにちは、ピザ屋より速くお届けに上がる尚文露店商です!、ご注文品を

 お届けにきました!!)」

 露店商の店員が営業スマイルを浮かべながら告げる。

 蒼く照り返す鋼鉄のような皮膚に身体中覆われ、背中に翼を生やし、天を突き破らんとばかりにそびえる巨体の鬼獣に向けて、ラインメタルMG3の引き鉄を絞り、吠え立てさせている男性が叫ぶ様に応える。

「(やっとかよっ!! 注文した7.62x51mm NATO弾の弾帯の値段は!!)」

 引き鉄を絞りながら尋ねる。




「(配達料金合わせて、10円ですね)」

 店員が応える。

「(おぃっ、10円って・・・、コンビニとかで買っても5円だぞっ!?)」

 ラインメタルMG3の引き鉄を絞っていた男性が文句を言う。

「(畜生!! もう無理だ、限界だっ!! さっさと撤退しょうぜ!?)」

 回転式拳銃S&W M28をぶっ放していた男性が叫ぶ様に言ってくる。

 その男性は、頭部は前後に細長い形状、上部は半透明のフードで覆われ、顔にはそれと判るような形状の鼻や耳、目などは存在してなく、歯を剥き出して身の丈以上に長い尾を鞭の様に使用してくる鬼獣に向けてぶっ放していた。

「(馬鹿野郎!! 撤退するにしても何処に撤退するんだ!?

四国か、九州か、沖縄か、北極か、それとも南極か? このご時世撤退する様な

安全な場所はないぞっ)」

 回転式拳銃コルト・キングコブラをぶっ放していた男性がそれに応える。

 その男性は、こめかみに汗を流していた。




「(いいや、あるね!! ソロモン諸島やらキューバとかだ!)」

 回転式拳銃S&W M28をぶっ放していた男性が叫ぶ様に告げる。

「(お前は移動手段はどうするつもりだっ!?)」

 回転式拳銃S&W M28をぶっ放していた男性が薬莢を入れ替えながら尋ねる。

「(んなの飛行機とか船とかでシージャックやらハイジャックして行くに決まっているじゃないかっ)」

 回転式拳銃S&W M28をぶっ放していた男性が応える。

「(お前な・・・シージャックやハイジャックをして無事に済むと思っているのか!?)」

 回転式拳銃S&W M28を再びぶっ放しながら尋ねる男性




「(大昔の西部劇みたいな銃撃戦になるだけさ)」

 回転式拳銃S&W M28をぶっ放していた男性が、ニヒルな笑みを浮かべた瞬間、

 鬼獣の長い尻尾の先端がその男性の喉元を突き刺した。

傷口から夥しい量の鮮血が流れ出た。






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