九話
網田めいという名前の臨時助っ人ウェイトレスと尚文露店主の会話している、
その光景に肩を竦めると、彼は再び広場に視線を向けた。
数人の17地区全域から退却してきた住民同士が囲み、チャーハンとビーフ
シチューを咀嚼しながら、話しているのが耳に入った。
「鬼獣の抵抗がキツイな、現時点の戦力だけでは制圧は五分ってところじゃね?」
チャーハンを咀嚼している男性が誰ともなしに尋ねた。
「いや、こっちにはまだ他地区からの増援もあるんだ・・・・まぁ、大攻勢があれば終りだけどな」
ビーフシチューを咀嚼している男性がそれに応える。
「へっ、お偉いさんらは、核兵器が全てを解決してくれると思っている
グラウンド・ゼロ世代前だからな。使用するのはいいとして後始末はどうするんだって尋ねてぇな」
煙草に火をつけた男性が投げやりな声で告げた。
「特に野党に所属しているお偉いさんだろ? 与党のお偉いさんらはゲリラ戦術に
傾倒しているじゃないか」
ビーフシチューを咀嚼している男性が応えた。
「国民の損失にもかかわらずゲリラ戦術で鬼獣群に攻勢する事しか考えてない、
与党のお偉いさんもお偉いさんだ」
チャーハンを咀嚼している男性が不機嫌な表情で告げる。
「そんなお偉いさん方は、現場の事を理解していると思うか」
煙草に火をつけた男性が尋ねた。
「さあな、理解しているというより、選挙の事しか頭にないんじゃね?」
ビーフシチューを咀嚼している男性がそれに応えた。
「まったく、なんでこの国のお偉いさんは、核兵器を使う事と人海戦術のゲリラ戦しか思いつかないんだよ」
チャーハンを咀嚼している男性が、何処かうんざりとした声で誰ともなくに言った直後、缶コーヒーを手に持ってやってきた男性が会話に加わった。
「おい、お前ら腹に食い物詰め込んだら17地区に戻るぞ」
その男性が告げた。
「おいおい、ちょっとは休憩しようや、急いでも鬼獣は逃げないぞ」
煙草に火をつけた男性が、苦笑いを浮かべながらそれに応えた。
「17地区の緊急防衛指定場所が、突出した鬼獣群の包囲されているんだ。
おまけに猟犬型鬼獣もお出ましだとよ、これを訊いても急がなくてもいいと?」
缶コーヒーを手に持ってやってきた男性が尋ねた。
それを聞いたそれぞれの男性住民は溜息を吐いた。
「・・・まったく、飯くらいゆっくりと食わせろよ」
ビーフシチューを咀嚼している男性が、不満そうな声で告げながら、残りの
ビーフシチューを一気に平らげる。
そして急いで立ち上がり、皿を返却するために急いで移動をした。
「食事する時間も与えないのか、鬼獣どもは」
チャーハンを咀嚼している男性住民もそう告げると、急いで立ち上って、同じように皿を返しに移動した。
彼は、その様子を一瞥すると、もう一度尚文露店主と網田めいという名前の
臨時 助っ人ウェイトレスがいる方向に視線を向ける。
まだ、何かを話している様だった。
「――――だから、ちくわはもう結構ですからぁ!!」
ウェイトレス網田めいが喚く様に言っている。
「そう言われてもなぁ。後、お前にあげられると言えばコロッケぐらいしか
ないぞ」
尚文露店主は、ちくわを咀嚼しながら考える様に告げる。
「――――種類に寄ります」
網田めいは、それを聞いて一瞬何かを考えながら尋ねる。
「種類か。では、18地区の肉屋で販売しているコロッケならどうだ?」
尚文露店主が深い笑みを浮かべながら応える。
「今回だけですよ、尚文店長」
ムスッとした表情を浮かべながら網田めいが応えた。
「さすがだ。シュレティンガーの猫っぽい店主が選んだだけある。
決断するのが早い」
尚文露店主は、にやにやした笑みを浮かべながら告げた。