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ハッピーエンドの法則   作者: ツンデレ
7/8

act 6

これが……私の赤ちゃんかぁ……。


そう思う、乃亜の手の中にある、一枚の小さな写真は、お腹の中で、小さくも命を育んでいる。

紛れもない真実の証拠。


「やっと、会えたね」

まだ、目の前に出会えたわけじゃないけれど、この写真に写っている。

それだけで、乃亜には、十分だった。

小さくて、まだ形も分からないけれど、写真を見ているだけで、乃亜は、幸せな気持ちで、心が、いっぱいになった。


「かわいい……」


苦しいつわりだって、この写真をみたら、なんだか吹っ飛んでいきそうだ。


思わず、指でそっと、撫でてみる。

15cm幅ほどの一枚の写真に、うつっているか、見えないかくらいのそれは、確かに、乃亜の赤ちゃんだ。

「ママですよ」


なんて、思わず口からでてきてしまった。

届かないだろうけど、届いているかもしれない。愛おしい、大切な宝物。

ふわりと、乃亜の顔が、母親の顔になった。



「浜崎さん」


そう身近で、自分を呼ぶのは、いまの所、先生だけ。

「椎名先生」

乃亜は、かけていた腰をゆっくりあげた。

そのまま座ってて、そう椎名は、手をさげるそぶりをし、乃亜の隣へと腰かけた。


「かわいいよな」

堅苦しさを、取り外したような台詞は、きっと、さっきまでの医者としての彼ではなく、一人の男として、乃亜の隣にすわっているから。


椎名が言っているのは、乃亜の手の中にある物。

嬉しくて、ふわりと乃亜から笑顔が漏れた。


でも、すぐに乃亜の表情が曇ったことに気づいた。


「どうした?」

椎名の言葉に、乃亜は、ただ何も言わず、首をふった。

理由を話すつもりもなかったし、主治医とはいえ、他人の人間に、話して、いいのか分からなかった。


ただ、さっきの椎名の言葉を、どんなに、鉄哉が言ってくれたらって、思わずにはいられない。

突き放したのは自分なのに、写真をみた途端、思いが溢れてとまらなかった。

隣で、今見たく一緒に見てくれたら、喜んでくれたら……。


柔らかくて、暖かい椎名の掌が、そっと頬に触れたのがわかった。

涙を、拭われて、泣いているんだと分かった。



止まらない……。





ポタポタポタ……ポタポタ……涙が止まらない。







お願いだから、そんな優しく抱きしめないで――――――。


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