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交信

 母船では、失われた十三年間をウサが必死でリーディングしていた。

 アイコートの下から見えるウサの唇が、きつく結ばれている。

 ダルにはその表情だけで、地球に降りたソラがどんな目に合っているのか、想像できた。

 突然、ウサがアイコートを外し叫ぶ。

「大変!ソラが全覚醒しているわッ!」

「全覚醒だって?」

「確かよ。まず、十歳で半覚醒したの。その後すぐに、ソラが自分の意志で全覚醒してしまったわ」

「まさか・・・・・・。ダークサイドと接触してしまったのか?」

「それは、大丈夫みたい。うさぎのぬいぐるみシールドで、まだ隠されているわ」

「そうか。それなら、ひとまず安心だな。通信システム回復まで、残り七パーセント。あと、少しだな」

ダルは、窓に映る青い地球をじっと見つめた。

「ウサ、テレパシーで直接コンタクトはできそうか?」

「無理だわ。地球に張り巡らされたダーク・グリッドのせいで、テレパシーが跳ね返されるわ。穴でも開いていない限り無理ね」

 焦る二人の前に、息を切らしジャンクが現われた。

 頭の上に、猿を乗せて・・・・・・

 猿は振り落とされないように、長い尻尾をジャンクの首にしっかりと巻きつけていた。

「ほほぉ、なんじゃ。大変な事になっとるみたいじゃのう?」

 のんびりした猿の態度に、ダルがキレかかっている。

「ガウロ総裁。一言伺いますが――」

 ダルは怒りを押さえ込み、努めて冷静に振舞った。

「まさかとは思いますが、最初からソラが十歳で全覚醒すると予想していたって事は、ないですよね?」

「ほほぉ、いい質問じゃ。確信はなかったが、可能性はあった。地球の波動レベルが低すぎた場合、早めに全覚醒するかもしれんと・・・・・・」

「ということは、私たちの想像以上に地球の状態は悪い、ということなんですね?」

「そのようじゃ」

「ふっー」

ダルが深いため息をつき、もう一度地球を眺める。

「ダル最高司令官。、通信システムが回復したようです」

「よし、。ウサ、ソラが何処にいるか調べてくれ」

「了解!」

 アイコートをかけ、ソラを探す。

「今、自分の部屋にいるわ。うさぎのぬいぐるみもある。すぐにコンタクトできるわ」

「よし、コンタクト開始だ」

 ウサは、通信マイクをぎゅっと握った。

「ソラ司令官、ソラ司令官。

こちら、コスモ・ソース。

こちら、コスモ・ソース。

至急応答願います」

万理絵の部屋の壁に、母船の映像が映し出された。

「久しぶりだな、ウサ。元気だったか?」

「ソラ!」

ソラの声を聞いた瞬間、全身から力が抜け泣き始めるウサ。

緊張の糸が解けたのだろう、子どものように泣きじゃくっている。

ウサの代わりに、ダルが通信マイクを握った。

「ソラ、元気そうだな。黒髪のお前さんも、べっぴんさんじゃねぇか」

「そうか?それより、なぜ今まで交信できなかったのか教えてくれ」

「お前が出発してすぐ、ダークウェー船から攻撃を受けた。ガウロ総裁と仲間が、自らの生命エネルギーをワープエネルギーに変えて、船は奇跡的に助かった。しかし、多くの仲間を失ったよ・・・・・・」

「そんな・・・・・・ガウロ総裁もか?」

「いや、うーん。ガウロ総裁は、生命エネルギーが消失する前に、ウサ公がだな・・・・・・説明すんの面倒くせえな。見ろ!これが、新生ガウロ総裁の姿だ!」

 画面一杯に映る猿の姿。

「・・・・・・猿?」

「そうだ!ガウロ総裁は、猿に生まれ変わった!」

「――そうか」

「ソラ!ここは、もっと驚いていいと思うぜ、俺は。相変わらずクールな奴だな。まぁ、いい。お前が、全覚醒した理由は?」

「理由は二つある。人間の意識が低すぎて、波動レベルがかなり低下していることと、ガイアの魂が弱っていたことが理由だ」

「そうか。ダークサイドの動きはどうなっている?」

「食糧危機から地球を救うために、人口削減計画実行中だ」

「どうやって?」

「シークレットトップ会談で地球を救うという大義名分のもと、価値のない人間を減らしていく事を決めたようだ。昔のような大きな戦争は起こせないから、内戦やテロを仕掛ける。それから、新型ウィルスをばら撒く。殺人養成ゲームを娯楽として浸透させ、猟奇殺人・無差別殺人を引き起こす。まだあるぞ。サブミナル洗脳で人間に劣等感を植え付け、自殺に追い込むなど、巧妙なやり方でな。全く反吐が出る!」

「酷いな。コスモ・シードたちは、どうなってる?」

「今、一人近くにいる」

「一人だけか?」

「今は・・・・・・な。それより、交信を切るぞ。あまり長いとダークサイドにキャッチされてしまうからな」

「了解した」

「ダル!ウサによろしくな!」

「あぁ、じゃな」

 交信が終わると、ウサのふくれた顔がダルの目に飛び込んできた。

(まずい!かなり、怒っているぞ)

「なんで、ダルばっかりソラと話てんの?ずるい!」

「ずるいって、お前が泣きじゃくって、まともに交信できなかったからだろ?」

「でも、だって・・・・・・最後くらい代わってくれたっていいじゃない!」

「だぁ、もう!」

 ダルは、ウサのコロコロ変わる態度に苛立ち、頭を掻き毟っている。

 ジャンクは、気の毒そうにダルを眺めていた。

 ジャンクの頭の上にいた猿が、するするっとウサの肩に移動し、慰めた。

「ウサちゃん、今度ゆっくりソラと話せばいいんじゃないかのう?黒髪のソラも、なかなかの美人じゃったの」

「うん!」

(さすが、年の功。女の扱いが上手い!)

 ダルは、ガウロ総裁に心の中で拍手を送っていた。

「ジャンク、これから忙しくなりそうだ。今夜は、徹夜で復旧作業だ!」

「了解致しました」

「ウサも・・・・・・よろしく頼む」

 恐る恐る、ウサに声をかける。

「了解!」

 ウサは、もう満面の笑顔だった――


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