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地球へ

 その頃ソラは、一人で窓から見える漆黒の銀河を眺めていた。

 銀河が歪み、ソラの忌まわしい記憶が甦る。忘れたくても忘れられない記憶。消したくても消えない古の記憶。




白い神殿の中で

黄金の髪の美しい少女が

祈りを捧げている。

突然

兵士たちが剣を構え

神殿に飛び込んで来た。

少女は

囚われの身となり

人を惑わす魔女の烙印をおされた。

森の奥の大きな木に

生きたまま吊り下げられる。

少女を囲む人々から

「魔女め!くたばってしまえ!」

罵られ、石を投げつけられる。

かつて

仲間だった人たちもそこにいた。


富と権力に支配された人々よ

自らの意志で生きなさい。

どんなものにも

心を支配されてはいけないのです。


少女の声は

人々には届かない。

新月の夜

少女の霊力が力尽きた。

絶望と恐怖の狭間で

魂が二つに分離する。

一方は、肉体を離れ天に還った。

もう一方は、肉体に留まり

絶望・恐怖・激痛の全てを引き受けた。

そして

最後の瞬間

残された魂ミラが、闇に堕ちた。




ソラは遠い記憶を反芻していた。心臓の鼓動が速くなり、指先が震える。引き裂かれる胸の痛みに、思わずぐっと息を飲んだ。


  ビー、ビー、ビー


突然、船内にサイレンが鳴り響いた。

「緊急指令。緊急指令。

地球検体、第二十七号が出産体制にはいったもよう。

これにより、ソラ司令官は緊急ウォークインとなります。

至急第三ポケットにテレポート願います」

「何だって?」

慌てたのはソラよりも、ダルとウサの二人だった。

「おいウサ、早くしてくれ!間に合わねぇぞッ」

「大丈夫、完成したわ。ダル、急いでこのペンダントをソラに届けて。私は、ガウロ総裁のいる操縦室に行くわ」

二人は急いで、研究室からそれぞれの場所へとテレポートした。

第三ポケットでは、ソラが緊急ウォークインの準備をしている。

そこへ、突然ダルが現われた。

「ダル司令官、強引なテレポートは止めて下さい。危険です」

背の高い痩身の人物に注意を受ける。

「すまない、ジャンク。こっちも緊急なんだ。ソラにこれを渡したくてね」

「これは、何ですか?」

生真面目で神経質なジャンクは、ちいさな猫型ペンダントをいぶかしげに手に取った。

「それは、俺だ!」

「・・・・・・?」

「ダル、時間がないんだ。ふざけてないで、手短に説明してくれ」

(さすがソラだ。こんな時でも、落ち着いてやがる)

ダルは、大きく息を吐き背筋を伸ばし説明した。

「ソラ、お前は十歳で半覚醒状態となる。当然、ダークサイドのサイキック攻撃にも備える必要があるわけだ。そこで、俺の分身の猫ちゃんが、奴らからお前を守ってやるって作戦だ。このペンダントを持っていってくれ!」

「ダル、頼りない気もするが、有難く受け取ろう。ジャンク、私の首に下げてくれ」

「了解しました」

 ジャンクの手が緊張で震え、歯がカチカチなった。

 ソラはペンダントを胸に、うさぎのぬいぐるみを両手で包み込むと、カプセルに入った。

「ダル司令官、私と一緒に第三ポケットから出て下さい」

「わかってるよ。ソラ、検討を祈る!」

ダルが、畏敬の念を含んだ瞳でソラを見つめ、敬礼をする。

 ソラは狭いカプセルの中で、ふっと笑顔を見せた。

ジャンクとダルが第三ポケットから出ると、すぐに小さなシルバーのカプセルが地球に向けて発射された。

 この時ソラは知らなかったのだ。

 コスモ・ソースのすぐ近くに、敵船ダークウェー船が迫っていることを――















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