記憶
はるか昔、オリーブの女神と謳われた少女がいた。
少女の美しさに身分の高い醜悪な男が恋をする。
欲しいもの全てを手に入れてきた男。
しかし、少女の心だけは手に入らない。
少女への想いは、やがて激しい憎悪へと変わる。
男は、自分の持つ富と権力を使い少女を陥れた。
ある者たちは、男の家臣に暴力を振るわれ脅された。
ある者たちは、男の金品に心を奪われた。
こうして男は、嘘の証言を作り上げ「あの女は魔女だ!」と訴えた。
古の裁判により、魔女の烙印を押された少女は生きたまま森の木に吊る下げられる。
生きながらに、肉体を獣に喰いちぎられ
眼球を鳥についばまれても
なお命は尽きず
苦痛だけが全身を駆け巡る。
体が腐り蛆が湧く。
全身を這いずり回る蛆たちは
やがて唇の隙間から口内へと入っていく。
それは食道を通り、胃の中へ落ちていった。
体の中で蠢く虫たち。
恐怖と苦痛の狭間で死を望む少女に、夜の闇が囁く。
「怨め!怨め!!怨めぇええええええ!!!」
新月の夜、絶望の淵で少女の魂は二つに分離した。
ーこの裏切り、忘れはせぬぞ!!ー
魂に刻まれた少女の最後の記憶。
やがてその骸は、森の獣たちによって骨となるー