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Phoenix

作者: 口羽龍
掲載日:2026/06/28

 弘は新潟の長岡で生まれた。高校まで長岡で生まれ、現在は東京の大学に通っている。博は現在、大学4年生。就職活動に受験勉強に、大変な日々が続いているけれど、何とか頑張っている。そんな弘は、大学卒業後に長岡に戻り、教員になる事が決まっている。いろいろあったけれど、また長岡に戻ってこれる。また家族と一緒に暮らせる。それを嬉しく思っていた。


 今日は8月2日、長岡の花火大会がある日だ。長岡の花火大会は、放浪の天才画家、山下清の代表作にもある日本を代表する花火大会で、日本最大級、いや、世界最大級とも言われている。毎年花火大会には、多くの人が来ている。弘の家族は、毎年それを見るのが定番で、今年も見ようと思っている。


 弘は1階のダイニングにやって来た。キッチンでは母が朝食を作っている。


「いよいよ今日だね」

「うん」


 母は知っていた。弘は来年の春にここに戻って、教員になる予定だ。大学での4年間は大変だったけれど、またここに戻って、頑張ればいいじゃないか。


「卒業したら、またここに戻ってくるんだね」

「ああ」


 弘は朝食を食べている。ニュースでは、今日の花火大会の事がやっている。今年も多くの人がやってくるだろう。そして、クライマックスの『復興祈願花火 フェニックス』では、多くの人が感動するだろう。それを目当てにやって来る人も少なくない。この日はバスも電車も、新幹線も混雑して、臨時便が出るだろう。今日は、長岡は一番熱くなる日と言っても過言ではない。




 昼下がり、弘は2階の自分の部屋で横になっていた。東京から帰ったばかりだ。今日ぐらいはゆっくりしたい。そして、今日の花火大会をしっかりと見たい。


 弘は高校の卒業とともに別れた達子の事を思い出した。達子は高校で知り合った。とても仲が良く、将来結婚するだろうと思われていた。だが、卒業とともに別れた。遠距離恋愛になるのは嫌だと思っていたからだ。今頃、達子は別の人と付き合っているだろうな。残念だけど、また別の恋をしなければならないだろう。でも、恋はうまくいかない事もある。だから、今度はうまくいくだろう。


「さて、行こうか?」


 弘の父の言葉で、弘は起き上がった。これから長岡の花火大会を見に行くからだ。やっとこの時間が来た。弘はとてもワクワクしていた。


「うん」


 3人は車で会場に向かった。その間も、多くの人が歩いている。みんな、信濃川を目指している。花火は信濃川で上がるからだ。


 その間も、弘は達子の事を思い出していた。なかなか忘れられないようだ。大好きだったのに、卒業とともに別れてしまった。できれば、ここに帰ってきたら、また恋をやり直したいよ。


 3人は会場にやって来た。すでに多くの人が集まっている。屋台には行列ができている。みんな楽しそうだ。


「多くの人が集まってるね」

「うん」

「大変だな」


 3人は指定された席に座った。今日はここから花火を見る。3人とも、夜が来るのを楽しみにしていた。


「あれっ、弘くんじゃない?」


 その声を聞いて、弘は振り向いた。そこには達子がいる。まさか、ここで達子に会うとは。何という偶然だろうか?


「あれっ、たっちゃん!」

「まさかここで会うとは」


 達子も驚いていた。弘も花火大会に来ているんだな。達子は、弘が東京で何をしていたのか、気になった。東京の大学に通っていると聞いたが、それ以上はあんまり知らない。どうなんだろうか?


「あれからどうしてた?」

「頑張ってるよ! で、卒業したら、ここに戻って教員になろうと思ってるんだ」


 またここに帰ってくるのか。高校を卒業する時に行っていたが、やっぱり教員になるんだな。頑張ってほしいな。


「そうなんだ」


 弘は思った。達子は自分が東京にいる間、何をしていたんだろうか? はっきりと話してほしいな。


「たっちゃんは、どうしてたの?」

「新しい人と付き合ってたんだけど、その人が別の人と付き合い始めたから、別れたの」


 達子は少し残念そうな表情になった。あの人が好きだったのに、別の人と付き合い始めたために別れた。本当に残念だった。だけど、また新しい恋をしなければと思っている。


「そうだったんだ」


 弘は残念そうな表情だ。自分に関しては、全く恋ができていない。勉強ばかりで、恋をする暇がないようだ。


「新しい人を探してるんだけど、なかなかで」


 達子は悩んでいた。新しい恋人がなかなかできない。一度終わった恋を修復するのはなかなかだと思っていた。


「そうか・・・」


 と、弘は何かを考えているようだ。何を考えているんだろう。達子は気になった。


「どうしたの?」

「いや、何でもないよ」


 だが、何も言おうとしない。どうしたんだろうか?


「そう・・・」


 だが、達子は何も言おうとしない。一体、何を言いたいんだろうか?




 日が暮れて、花火の時間が近づいてきた。より一層多くの人が集まっている。盛り上がりは最高潮だ。中には、酒を飲んでいる人や、バーベキューを楽しんでいる人もいる。


 と、そこに弘の父がやって来た。父は少し離脱して、何かを買ってきたようだ。


「イタリアン買ってきたよー」

「ありがとう!」


 買ってきたのは、新潟名物のイタリアンだ。焼きそばにミートソースをかけたもので、新潟では『みかづき』、長岡では『フレンド』が有名だ。買ってきたのはフレンドのイタリアンだ。弘は東京にいる間、全くイタリアンを食べていなかった。帰ってきたら必ず食べるぐらいなのに。


「おいしい!」

「新潟に帰ってきたら、やっぱこれだね!」

「ああ」


 みんな嬉しそうだ。こうして花火大会でイタリアンを食べる。これぞ王道だと思っている。


 と、達子の席では、達子の父が餃子を焼いている。フレンドで買ってきたパーティー餃子だ。これもまたおいしそうだな。


「どうしたの?」

「パーティーぎょうざ焼いてるんだ」


 これもなかなかいいな。それを見て、弘の父はこれを買ってこればよかったなと思った。自分もみんなで餃子を楽しみたいな。


「いいじゃん!」


 弘は乗り気だ。花火大会に餃子も、なかなかいいものだな。これまた盛り上がりそうだな。


「飲もう飲もう!」

「うん!」


 達子とその両親は、持ってきた缶チューハイを出した。乾杯をするようだ。


「カンパーイ!」


 ちょうどその時、花火大会が始まった。観客は花火に釘付けになった。花火を見て、みんな感動している。これが日本一、いや世界一と言われている長岡の花火大会か。


「あっ、始まった!」


 弘と達子は手を握り、花火を見ていた。本当に美しいな。嫌な事を、何でも忘れる事ができそうなぐらいだ。これが長岡の夏の夜を彩る、花火大会なのか。


「本当だね」

「ああ」


 花火は次々と上がっていく。その度に、人々は歓声を上げる。それを見て、弘は思った。爆弾なんか作らないで、花火ばかり作っていたら、戦争なんて起きなかった。山下清の言った言葉が頭をよぎる。


「きれい・・・」


 次々と上がっていき、そして最後になった。最後を飾るのは、世界最大級と言われている『復興祈願花火 フェニックス』だ。これは、2005年に起こった新潟中越地震や水害、豪雪の被害を受けた人々を励ますために始まったもので、長岡花火の名物となっている。


「さて、クライマックスのフェニックスだ!」


 平原綾香の『Jupiter』とともに、広く、高く上がっていく。本当に感動的だ。やっぱりこれが長岡花火の名物だな。2人とも、感動は最高潮だ。


「きれい・・・」


 と、弘は達子の方を振り向いた。達子は花火に釘付けになっている。


「なぁたっちゃん」


 達子は横を向いた。何か言いたい事があるんだろうか?


「どうしたの?」

「ここに戻ってきたら、また付き合わないか?」


 そう言われて、達子は笑みを浮かべた。また弘と付き合う事ができるからだ。それだけで、とても嬉しい。やっぱり付き合うのなら弘じゃないと。


「いいよ!」

「ありがとう」


 達子は弘を抱きしめた。春になったら、また恋をやり直そう。そして、いつか結婚しよう。

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