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無双

一部間違いを訂正します。

扶桑と山城で百二十ミリ単装速射砲と間違えたのを八十ミリ単装速射砲へ。

 第一遊撃部隊は光と共に帰還した。


「天測急げ」

「艦の状態確認急げ」


 各艦とも現状把握に勤めている。


「なあ、参謀長。結構散らばっていると報告が有ったな」

「そうですな。転移前の隊列にはなっていないようです」


 第一遊撃部隊司令部は愛宕から大和に引っ越していた。


「う~ん。良し,電波管制解除。集まれだ」

「よろしいのですか」

「かまわん。もう隠密行動している場合ではない。全艦電探の使用を許可する」

「ハッ、直ちに」


「司令長官。現在位置判明しました。しかしおかしいです」


 航海参謀が作戦室にやってきて報告する。せっかくの通信設備と大型ディスプレイがあるのに。


「おかしいとは」

「転移前の地点とは違い、パラワン水道手前六十海里です」

「「なんだと」」

「参謀長。航海艦橋に行く」

「お供します。航海も続け」

「ハッ」


「艦長」

「司令長官。どうされますか」

「針路か。針路速力ともこのままで良い。」


 一時間後、隊列は整った。そこには支隊の姿が無い。


「支隊はあっちか」

「そのようです」

「貨物船はどうした」

「餞別にいただいた四隻ですね。数分前にブルネイに到着した旨報告が有りました。その電文に記載されていた時間で現時間が判明しました。十月二十二日一三:三十二です」

「良かった。時間がわからなかったのが困ったからな。今何時だなどと聞けないからな。それにアレは貴重なものだ。アレがなければこの艦隊は一回戦しか戦えん」

「そうですな。アレは貴重です」


「集まれ」の電波は結構傍受されていたようで、アメリカ艦隊からの電波発振が増えているとの情報ももたらされた。


「参謀長、現在位置だが予定よりも数時間程度早いな」

「どうされますか」

「時間調整か。どう考える」

「そうですね。他との絡みもありますが現戦力ならば押し切れると考えます」

「参謀長もそう考えるか」

「司令長官もですか」

「ほとんどは驚異の兵器でいけると思っているのではないか」

「そうですが、彼らから言うと練度が三割とか言っておりましたな」

「それは機材の能力を十全に使おうとした場合だろう。彼らの戦場では音速を普通に超えてくると言っていたし」

「そうですな」

「よし、押し切る。艦隊、対潜警戒航行序列。対潜警戒を厳となせ。対潜警戒航行序列はあちらで習得した序列だ。間違うなよ。時間は早いが規定の針路を取ってパラワン水道に突入する。艦隊速力十四ノットに」 

「ハッ、通信参謀。艦隊に発令せよ」

「支隊にも知らせるように。ついでだから、機動部隊にも通信を」

「ハッ」



 同じ頃、支隊は迷っていた。針路に。このままスリガオ海峡を突破するかどうかで。そこに本隊がパラワン水道突入と知らせてきた。


「我々は予定よりも相当早いな」

「どうされますか」

「うむ。敵の偵察機にも見つかった。こちらの戦力は知られていると考える」

「まったくです。レイテ湾に向かいますか」

「一番乗りもいいものだ。そう思わんか」

「しかし、本隊が来ないと当部隊の戦力では苦しいと考えます。それに今の位置でこの速力ですとスリガオ海峡で予定通り夜間になります」

「予定通りでも、せまい海峡で視界が悪いのはいただけんな。誰だこれを考えたのは」

「それは…しかし、いくら電探が凄いと言っても限界はあります」

「良し。二十四日夜明けを待ってスリガオ海峡に突入する。当部隊は現在位置を維持する。参謀達で突入時間の調整を。本隊にも知らせるように」

「ハッ」



 小澤機動部隊は第一遊撃部隊からの通信を受け混乱していた。


「あの人は何を考えている」

「…」

「済まぬ。答えられんな。愚痴を言いたいだけだ。そこで君らに聞く。感想はどうか」

「まるで自分たちはここにいると宣言しているようです」

「存在を誇示するか。なんのために」

「敵の誘因ですが、あちらこそ今作戦の要。秘匿する必要があります」


 第一遊撃部隊の事情を知らない機動部隊は答えが見つからないまま既定の行動を取るのであった。




「多いな」

「三隻目です」


 大和の作戦室では栗田第一遊撃部隊司令長官と参謀長が状況を確認している。

 栗田第一遊撃部隊司令長官はパラワン水道にそんなに潜水艦を張り付けていたのかと驚く。三隻ということはもっといるのだろう。十四ノットに下げておいて良かった。(皆さんの艦に装備される聴音機ですが。対潜能力でも重要な聴音が十四ノット以上だと能力の低下を始めます。重要な局面では十四ノット以上出さないことが重要です)とあちらの対潜教育の教官が言っていたのを想い出す。艦自体も相当静かになっている。聴音手が言うには今まであんなにうるさかったのかと。


「対潜短魚雷は撃ち尽くせば港でないと次発装填が出来ん。対潜戦闘が一隻に偏らねば良いが」

「一隻当たり六本ですから、潜水艦一隻に二本としても相当な数に対処できます」


 もう三隻を撃沈している。出来れば対潜掃討をしたいがそんな時間はない。このままパラワン水道を抜けるだけだ。


『司令長官。艦橋。付近に聴音にも電探にも潜水艦の反応無し。どうされますか』

「対潜警戒航行序列は崩さない。このまま夜明けまで。夜が明けたら対空警戒航行序列とする。艦隊は戦闘配置を解除。警戒配置に戻す」

『艦橋、了解しました』


「便利ですな」

「全くだ。ここでも一応戦闘情報を確認出来るとは。しかも指示も出せる」


 作戦室には大型ディスプレイと通信設備に操作機器が設置されていた。艦内の通話は一部を除き全て電話になっている。面々は作戦室から居室に行く。短い時間だが寝るのだ。


 CIC(戦闘情報室)は使えるようになる時間的余裕がないとして設置が見送られた。



 パラワン水道を損害無く抜けた第一遊撃部隊は対空警戒航行序列となりシブヤン海に進んだ。敵偵察機に発見され部隊の規模も針路も把握されてしまった。


「艦橋、電探室。敵編隊確認。距離百八十海里。速度二百ノットにて接近中。機数四十機」


 作戦室に詰めている栗田司令長官以下の司令部要員も報告を受ける。狭い艦橋よりも楽が出来る作戦室を選んだ。艦長以下も肩肘張らずに済むだろうという配慮も無いではない。


「艦橋。栗田だ。四十分後に対空戦闘配置。それまでは対空警戒態勢」

『艦橋了解』


 同時に全艦に命令する。


 四十五機の内雷爆撃機は投弾体勢に入る事も出来ずに百二十ミリ単装速射砲で撃墜された。

 時間をおいて第二次攻撃隊三十三機が来たが同様だった。

 全員が自分たちが渡された兵器の威力に驚いていた。


 第三次攻撃は八十三機と数も倍くらいだったが、雷爆撃機は百二十ミリ単装速射砲と八十ミリ単装速射砲で撃墜した。

 第四次攻撃隊六十五機が来襲するも同様の結果になった。第五次攻撃隊三十機も問題なく撃退した。

 第一遊撃部隊の被害はない。

 

 航空攻撃で被害もない第一遊撃部隊は対潜警戒航行序列で黎明時にサン・ベルナルディノ海峡を抜けた。ここまで来ればレイテ湾など指呼のさきだ。再び対空警戒航行序列とする。


 この頃アメリカ軍の通信量が膨大になっている事も確認された。


 第一遊撃部隊本隊がサン・ベルナルディノ海峡を抜けたと報告を受けた支隊は直ちにスリガオ海峡突破を決断する。支隊はボホール海手前まで来ていた。


 サマール島東に出た第一遊撃部隊は大規模な航空攻撃を受ける。今までの五月雨式ではなく三百機ほどの梯団二個が電探に映った。


「これなら機動部隊に敵機は行かないようですな」

「この機数をこなせればだがな。こなせなければ機動部隊に向かうだろう」


 六百機に攻められようというのに余裕である。そして撃退した。損害は榛名と沖波が爆弾一発被弾。榛名は砲塔上面装甲で跳ね返し損害無し。沖波は二番砲塔と三番砲塔が全壊した。両艦とも航行に問題なく行動を共にする。沖波は防空輪形陣の中に入れられた。

 ただ,各駆逐艦は四割近い弾数を撃っており残り弾数に気を遣う必要が出てきた。


 その頃、支隊はスリガオ海峡で砲戦を始めていた。

 戦艦乗りが夢にまで見た戦艦同士の昼間砲戦である。扶桑と山城で敵戦艦六隻を相手取り渡り合った。同年代の戦艦同士で普通なら扶桑と山城に勝ち目はない。普通なら。強化された船体は十二門斉射でもよれることはなく、砲は測距性能が段違いな異世界電探の補助がある。速力も同程度であったがこちらは高速戦艦とも言えるくらいになった。装甲も厚みは同じだが二倍ほどの耐弾性がある。そして向こうで一ヶ月間撃ちまくり砲の癖も散布界も把握している。


 結果は駆逐艦による雷撃もあり六隻撃沈というものだった。ただ無傷とはいかなかった。扶桑は一番砲塔前面に被弾。一番砲の砲身が折れ、おそらく衝撃で薬室内に装填されていた砲弾が炸裂。一番砲塔が吹き飛んだ。新設計の砲塔と揚弾システムのおかげで弾火薬庫への損害はなかった。左舷に指向していたので二番砲塔への被害拡大はなかった。他に副砲四門と八十ミリ単装速射砲二基が吹き飛ばされた。二十五ミリ連装機銃も六基使用不能になっている。山城は後部艦橋に被弾。後部測距儀を吹き飛ばされた。副砲三門と八十ミリ単装速射砲二基が吹き飛ばされ二十五ミリ連装機銃も四基使用不能になった。ただのこの砲戦で各砲六十発を消費しており残弾が気になる。

 最上と駆逐艦は圧倒的だった。とにかく射撃精度が違いすぎる。さらに五百四十ミリ魚雷がとんでもない威力を発揮した。敵巡洋艦は全て魚雷で沈んでいる。さすがに二十センチ砲六門では無理がある。駆逐艦も同様で、最後は巡洋艦一隻と駆逐艦三隻が遁走した。


 支隊はレイテ湾に突入する。



 支隊がレイテ湾突入を発振した頃、本隊はサマール島沖で護衛空母群を殲滅しさらに最新戦艦六隻からなる敵水上砲戦部隊を相手取り勝利した。ここでも五百四十ミリ魚雷の威力は素晴らしく敵戦力を大いに削った。


 本隊がレイテ湾に突入した頃、支隊は暴れ始めていた。そこに本隊が合流した。敵は涙目であろう。

 護衛駆逐艦がほぼいなくなった時点で敵輸送船団から降伏を申し出てきた。



 捷一号作戦は大勝利の内に終了した。


ご覧いただきありがとうございました。

小沢機動部隊に損害はありません。航空攻撃は全部第一遊撃部隊が引き受けました。向かうはずだった艦隊も全部第一遊撃部隊が引き受けました。

小沢機動部隊は戦闘しないで終わったのです。

当然第二遊撃部隊も損害は多分無い。

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