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第一話 崩壊

文明が滅んだ後の世界で、なおも、生きる。

電線が空を切り裂いていたのももう昔の話。

なぜか僕は、生き残ってしまった。

使い古された文脈のボーイ・ミーツ・ガール。ただ、それはロマンスというには舞台が整っていなさすぎた。


文明は、無くなってしまった。国同士のエゴがぶつかりあって、全てを破壊した。旧文明の遺骸の中に、僕たちは生きている。今は冬だ。あの大惨事の前に比べて、気温は20度以上下がっているらしい。隙間風の入らない物件を探すのに苦労した。今はかつての大都市も見る影もない。所々から雑草が生え、確実に人類のいない世界へと移行をしているように見える。


そうだ、あの大惨事について説明しておこう。これは、核戦争だけを指しているものではない。某国某所から流出した正体不明のウイルス、これが人類を絶滅に追いやった。感染した人間は、スリープ状態に入る。死んではいないが、生きてもいない。


ある学者は、これは人類の終着点なのだ、と感染する間際に語った。技術の発展は、指数関数的に進歩する。50年前に想像できなかったことが、20年前に実現し、20年前に予想できなかったことが、10年前に実現し、その時はなかったものが5年前には実現する......この段々短くなっていく科学技術の発展サイクルの極限的な終着点として、このコールドスリープが起こったのだという。


終着点は空虚なのだと、身をもって教えられることになった。ただ、ごく稀に僕のような、ウイルスが作用しない個体がいる。なぜかはわからない。それを調べるための人材は壊滅状態だからだ。 


「何か飲む?」藍がインスタントコーヒー入りのマグカップを手に言った。

「水でいい......」

残された人類の懸命な復旧作業により、いくつかある、安全圏と呼ばれる場所に生き残ったほとんどの人類は移住した。だが、僕と藍はそこには行かなかった。僕と彼女は妙なところで気が合う。かつて受験勉強の後に燃え尽きて、堕落した大学生活を送っていたこと、人生が余生のように感じていたこと、言ってしまえば競争社会に疲れたこと、そんな感覚を共有していた。朽ち果てるなら、この街と一緒に......

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