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第一章:新しい世界、新たな覚醒

「何だって…?」


それが私の最初の思考だった。


周囲を見渡す。古い木造の家。火の消えた暖炉、窓に見えて実は窓ではなく、ろうそくが揺らめいている。


ここには電気もなく、現代的な痕跡はまったくない。


細くて繊細な手をした女性が目に入った。小さな傷跡がナイフや棘のある植物、砕けたガラスによって無数に刻まれている。ラベンダーオイルと樹脂で手入れされた爪。淡いピンクがかった青白い肌。腰まである赤みがかった長い髪はゆるやかなウェーブがかかり、一本の低い三つ編みにまとめられていた。大きくて深いエメラルドグリーンの瞳。


次に見えたのは男性。日焼けした深い土色の肌。腕や胸、手には小さな傷跡が散在している。漆黒の短く乱れた髪。その側頭部には少しずつ白髪が混じっていた。鋼のような青い瞳。内省的で厳しい表情。背筋はピンと伸び、幼い頃から兵士になるために鍛えられてきたことがわかる。


そして、8歳から10歳くらいの少女がいた。銀灰色の大きな瞳。明るい栗色の肩までの髪は少し波打っていて、緑色のリボンで乱れたポニーテールに結ばれている。左耳の後ろには三日月形の小さな痣があった。


必死に立ち上がろうとしたが、全力を振り絞っても無駄だった。


その三人はまるで家族のように寄り添い、私をじっと見つめた。


少女が言った。


「ヴァレン、マテリ!エレン ヴィレン サカル ノ デラン!」


私に無理やり全ての言語を覚えさせようとしたが、この言語は一体…?正直、聞いたことがなかった。


女性が心配そうな口調で言った。


「ヴァレス ソラン ドレマル!リラン、ヴェレン オス ヘヴァレン!」


男性は穏やかに答えた。


「ヴィレル ソレン、セリヴァル ティレン ヴィサカル。」


まさか…誘拐されたのか?拷問のために作られた架空の言語なのか?いや——


「ヴィラサル!ヴィ ラノル セルヴェン?」と、駆けてきた老婆が言った。どうしてこんなに早く走れるんだ?


「サレン、マテラ、ヴィ ノラン タル。」


まさかロシア政府の人間か?いや、彼らはこんな言葉は話さない。


「ヴェラン パラ エクリサル ヴァレン。」


「ヴィエン!」三人が同時に叫んだ。


老婆が訊ねた。


「ヴィレル カ?」


女性は真剣に答えた。


「ヴェラル タル ニオル トル セルメン エン ヴァラル… ヴェンカル。」


老婆が言った。


「エタル タル レンヴァル、シヴェンタイ… ジョレル。」


女性は心配そうに言った。


「ヴィエン… シルテン ヴァル ヴェンカル ヴィサル オナレル。」


「ウフ… ナレン。」


本当に話しているのか?


女性は去る前に最後にこう言った。


「ナレン、トル レンヴァイ エン シルカル。」



まずは整理しよう。


「殺された」後、ここで目覚めた。


今は赤ん坊の体だ。


見知らぬ言語が話されている。


文明から離れた場所にいるようだ。


女性が擦り切れた紙に未知の記号が円形に描かれたものを持っていた。


「ナレン」は「良い」という意味らしい。よく聞けば分かる。


未知の技術でこうされてしまったのかもしれない。


ただ時間が過ぎるのを待つしかない。



二か月が過ぎた。


遅かれ早かれ気づくことになる。ここは地球ではない。彼らは「マナ」と呼ばれるエネルギーを使い、「魔法」の可能性もある。さらに「生命エネルギー」が存在する。この世界には私の世界にはない二種類のエネルギーがある。つまり、この地は私の世界の論理を覆す。


両親の会話を聞いていたが、言語自体は難しくない。むしろ簡単だ。


基本構文(統語論)


語順:主語+動詞+目的語


例:「トル レンヴァイ エン シルカル」→「あなたをゆりかごに残す」


動詞は時制や数により接尾辞や助詞がつく


例:


レン=「残す」


レンヴァイ=「残すだろう」


レノル=「残した」


代名詞は動詞の前に置かれる


例:トル レノル=「あなたを残した」


音韻学(発音)


流れるような言語でリズムは柔らかくも力強い。


多くの開音節(母音で終わる音節)が使われる。


例:ヴァレナ、シレン、ノラン


形態学(単語構成)


単語は語根+接辞で作られる。


例:


「ヴィ」=否定


「レル」=原因→「ヴィレル」=「なぜ?」


「シル」=休息


「カル」=構造・基盤→「シルカル」=「ゆりかご」


動詞はパーティクルで変化する:


-o=過去


-vai=未来複数


-tai=現在進行形


確かこんな感じだった。


象徴的意味


単語は直接的意味だけでなく、感情や精神的な意味も含む。


「ヴァレン」=「一つ」だが「唯一」や「重要」も意味する。


「ナレン」=「良い」「承認」「平和」


そのため、同じ動詞でも声に出し方で意味が変わる。


例文:


「サレン、マテラ、ヴィ ノラン タル」(ごめんね、母さん、時間がなかった)


「サレン」=「ごめん」


「マテラ」=「母」


「ヴィ ノラン」=「持っていなかった」


「タル」=「時間」


こういう言語だが、この世界の人は剣も使う。推測だが剣には生命エネルギー、魔法にはマナを使うらしい。


家にいる人たちは私の両親と妹のようだ。


性格は全く異なる。


母は家の「支配者」、父はもっと優しい。妹は少し不器用だが決断力がある。


最近、本を二冊見つけた。


「ヴァレスアン エクリサル、ミラルトル ナウセン」(貴族のための魔法指南書)


「貴族」という表題は無視して中身を見よう。


【貴族のための魔法指南書】

(原題:ヴァレスアン エクリサル、ミラルトル ナウセン)


序文


王国の黎明より、魔法は高貴な血筋の運命を紡いできた。この書はミラル四世の治世下で魔法評議会の要請により作られ、王位継承者に魔法の技術、科学、倫理を教えるためのものだ。これを手にする者は千年の知識のみならず、節度と高貴さをもって力を扱う神聖な責務を負う。


I. 魔法の基礎


定義と本質


古語で「エクリサル」と呼ばれる魔法は、世界の潜在する力の意図的な顕現である。環境のマナと魔術者の生命核が交わることで発生する。すべての物質は神秘的な反響を持ち、意志、符号、呪文、触媒によって増幅されうる。


魔法の分類


元素系:火、水、土、風、雷、氷


精霊系:感情読み取り、魂の交感、魂の封印


ルーン系:マナを導くための文字符号の使用


アルカナ系:純粋なエネルギー操作


神聖・呪詛系:規制された魔法または禁止された魔法


II. 王族の魔法体


ミラル家は「ゲミナ・ルクス」と呼ばれる二重核を持ち、ルーンと霊性の親和性を与える。


魔法的解剖学:


コル・マグナ:魂とマナが交わる核


ヴィレル管:見えないエネルギー流路


内眼:魔法視覚と共鳴の源泉


III. 魔法の制御と鍛錬


リズミカルな呼吸:脈拍と流れを同期させる


精密な視覚化:鮮明で複雑な心象


明確な意図:意思がなければ魔法は散逸する


初歩練習:炎の輪 — 手の周囲を制御された火で囲む。


IV. 高貴な呪文


ヴィレロル — 魔法通信


シルカルム — 精神防御


ミラゼン — 外交的啓蒙


ヴァレンソル — 圧力の見えない盾


これらは皇帝の指輪に刻まれており、平民の使用は罰せられる。


V. 道具と触媒


クレルやアゼンスの水晶は高貴な品を飾る


調和の指輪:家族のマナを調整


継承の封印:遺伝ルーンを持つ


触媒:労力を減らし、流れを安定化


VI. プロトコルと倫理


正当な外交理由なしに平民の前で魔法を唱えない


精神操作は魔法評議会の判断なしには行わない


海外での魔法は登録が必須


VII. 王家の魔法史


セレリス一世からミラル四世まで、王冠は魔法剣を守護した。大沈黙(31452年)後に結ばれた条約は今も王家のマナ使用を規定している。


VIII. 高度理論と王族学派


コアクラウン共鳴


王家のルーン冠はDNAに刻まれ、次元門を開き、精霊を呼び出し、魔法契約を操る。


魔法ランク:


一級:貿易、防衛


二級:飛行、建築


王族級:時間制御、魔法書き換え


学派:


帝国火炎:攻防


聖光:浄化、治癒


外交ルーン:契約と服従


IX. 血統の遺物


遺物名用途主要ルーン

支配者の杖儀式で魔法を導くフルクサ+重力+虚無

祝福のマント呪詛防御ヴィータ+メンティス

均衡の冠ルーン冠の強化核+フルクサ

尊敬の指輪王への敬意を示すメンティス+重力


X. 国家儀式


即位式:核、共鳴、天球


王家の除呪:領土の24時間防御


退位:魔法の犠牲を伴う平和的譲渡


XI. 教育機関と守護者


王位継承者学園:幼少からの魔法訓練


エーテル評議会:6人の魔術師が儀式を監督


魔法軍警護隊:ルーン装備のエリート兵


XII. 禁断の知識


虚無のルーン:魂を破壊


二重魔法:マナと生命エネルギーの同時操作 — 血統がないと致命的


ルーン透視:王族の血筋と裏切りを解析


XIII. 伝説の年代記


エリリアン二世:侵略後の魔法再建


マエオリア:腐敗ルーンの追放


ベンティロン:王家の副門で失踪


XIV. 王族魔術師の手引き


ルーン読み解き


毎日の防御瞑想


バリエーションの書き方


ルーン冠の起動・停止


天核の封印


XV. 王家魔術の未来


システムの心臓計画:祖先のマナ復元


古代呪文の探求と魔法評議会の設立


用語集と結びの言葉


「輝くすべての力が正義とは限らない」

「魔法には犠牲が伴う」

「王と盗賊の区別はなく、賢者と愚者だけが分かれる」


本書は難解だが、一度覚えれば理解は容易だ。


次にもう一冊の本。


【王国年代記:世界の歴史、大陸、魔法生物】


世界の歴史、大陸、そこに住まう生き物についてまとめられている。


序文


この年代記はミラル六世の要請によりヴィレリアンの塔の学者たちが編纂した。王族が住まう世界、その民、獣、そして過ぎ去りし時代の余韻を保存し伝えることが目的だ。平民の閲覧は禁止されている。哲学的な錯乱や禁断の真実への好奇心を招くためだ。


第一章:世界の起源


世界は三つの原初衝動から生まれた:エクリス(生命エネルギー)、イヴァレン(休眠物質)、カエルム(意志)。これらは神ではなく、基盤だった。彼らの相互作用が現実を生み出し、虚無の流れを形、エネルギー、思考の領域に分けた。


古代の記録には、時間以前に大共鳴が起きて大陸と「中央柱」を生んだとある。これは惑星のマナを巡らせる次元軸であり、144の古代魔法使いの結社によって封印された禁断の遺跡がそびえる。


第二章:五大大陸


ティランデル — 人類王国の心臓。ミラル帝国がある。温暖な谷、マナ結晶豊富な山、浮遊都市カエルマリス。


シルヴァーネス — 東の大陸。古代の森と霧深いジャングル。古代血統のエルフと沈黙のドルイドの故郷。母なる木は意識を持つ。


エルウィン — 砂漠と火山の地。貴族悪魔と鉱物生命体の故郷。黒曜石の鍛造者が生まれる。


エルウィン(南の天上諸島) — 魔法的微気候の島々。翼あるヴァルセリの誕生地。


ヴァルカル’イス — 永久氷に覆われた北の地。ナウサリ、精神巨人、古の獣が住む。魔法の嵐が時間を歪める。


第三章:知性種族


人類ミラリス:高い適応力。王国と王朝を築く。エロンシアを支配。


エルフ(ザレス):高身長で長寿。世界のリズムに敏感。クセルザレスを支配。


貴族悪魔サーグリム:錬金術と魔鉱物融合の達人。


ヴァルセリ:地を踏まぬ翼ある種族。生きた島と共生。


ナウサリ:氷の巨人。風と会話する。永遠の命を持つ者も。


話す獣:動物と理性の中間種。森や馬群を治める者も。


第四章:神話生物と禁忌


ドラクサル:ルーン呼吸の竜。歌声は気候変化や突然変異を引き起こす。


ヴァルコル’エム:記憶と光を喰らう意識を持つ影。食の期間は日食時のみ。


ニハリ:永遠の霧の存在。疑念と絶望を糧とする。


頂点の守護者:中央柱の封印を守る存在。破壊不可、注意を逸らすのみ可能。


第五章:歴史周期


誕生の時代(0〜7000):大陸の統合。原始魔法言語。


血の時代(7000〜14000):種族間の戦争。現代魔法体系の創造。


ベールの時代(14000〜27000):危険知識の封印。王族間の契約。


沈黙の時代(31000〜33000):王家魔法の検閲。氏族の分裂。


現代(33000以降):回復と規制。ミラル帝国の台頭。


第六章:地魔法と魔法気候


ルーン嵐:マナ線の衝突で形成。


歌う大地:風が魔法の旋律を奏でる平原。


蜃気楼の潮流:過去や並行世界を映す海流。


浮遊山:エロンシアとアラレンに見られる水晶核による浮遊地形。


第七章:禁断の地


中央柱:次元の結節点。12の消滅した結社が守護。


千の名の森:毎日形と言語を変える。


最初の響きの空洞:純粋マナの最初の叫びが起きたクレーター。


カエル’サー遺跡:時間操作の結果消えた古代賢者の街。


第八章:他世界との接点


伝説によれば、「頂点の門」と呼ばれるポータルが144年ごとに中央柱と同期して開く。この世界の生命の循環に属さない存在が行き来する。記録は混乱しているが一定の頻度で確認されている。


付録:注釈と最終警告


「世界は閉ざされた場所ではなく、無限の現実ネットワークの節点である」

「古の真理の棲む所、無知は護りとなる」

「生物は循環の上に立たず、王も例外ではない」


年代記終わり


最も興味深かったのは「頂点の門」だった。多分これが私をここに連れてきたのだろう。


二冊とも興味深い。両親がどうやって手に入れたのかは聞かないことにしよう。もう一つ、書いてなかったかもしれないが、本には約100の呪文が載っている。



もしかしたら…やってみるか?



よし——扉の前に立つ。


「環境マナと魔術者の生命核が交わる。すべての物質には神秘の響きがあり、意志、記号、呪文、触媒で増幅される。」


「リズミカルな呼吸は脈動と流れを同期させる。精密な視覚化は鮮明で複雑な心象を生む。明確な意図がなければ魔法は散らばる。」


よし…


「永遠の川よ、流れよ、不純を洗い清めよ。」

血のようなものが私の手に昇り、どんどん熱くなる。だが…何も起こらない。


「なんだ?多分自分の言葉でやったからか。」


「もう一度だけ試す。」


「ターンナ、シルカ ウリエン、ヴォマアー——タルスーン!」

同じ感覚だが何も起こらない。


「そうか…魔法使いじゃないか、まだ六ヶ月だからか。」



「風の魔法でやってみよう。」


「風よ、その息を解き放て。果てしなきそよ風となれ。そうあれ…」

何も起こらなかった。


成長を待とう。待つ間に体を鍛えよう…



三年が経った。


両親の名前、そして何より自分の名前を知った。


母は「エリラ・ヴァイレン」。父は「カイエン・ヴァイレン」。妹は「ライラ・ヴァイレン」。私の名は「アイデン・ヴァイレン」。私たちは貴族と平民の間に位置する身分だった。つまり、貴族ではないが平民でもない。


だから今日は、この世界を探検しようと思った。


まず最初に。


どこに住んでいる?どんなところ?外は?

都市から離れた山の中だ。家の隣には巨大な滝がある。景色は素晴らしい。環境は良好だ。しかし家は白樺の木造で古く、屋外にさらされると劣化しやすく、十分に保護しないとすぐ形が崩れる。長くは持たないだろう。


そして力を得た。「シキガン」と呼んでいる。マナと生命エネルギーが見える力だ。魔法は使えないが、戦闘には役立つ。ただし、それには成長が必要だ。

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