第八話『剣VS銃 現実世界では目に見える勝負、でもファンタジーだとそうでもない』
美久「あ・・・いた!」
私は岩陰から魔物達を覗き見る。
そこには大きさはそこまでないけど長い蛇の頭とトカゲの胴体、脚はワニのように太くて爪が鋭いのが4本、尻尾はサソリのような針が付いてる魔物が5体程いた。
デルタ「キメラの類いか・・・?あんな魔物見たことないぞ・・・?」
ライオス「でもあんなのが街に行ったらかなり厄介だ・・・!」
アリッサ「そうね・・・」
私達は武器を構える。
するとキメラ達は私達に気付き、襲いかかってきた!
美久「Let'sGo!」
ダッ!!
私は籠手からワイヤーを放ち、キメラの内の一体の尻尾を掴んで飛びかかる。
美久「showっ!」
私はそのまま具足の先端を刃物に変え、尻尾にキックを食らわせるとキメラの尻尾は千切れた。
美久「おっと・・・」
尻尾の断面からヤバそうな液が出たので素早くワイヤーで回避していく。
デルタ「・・・Let'sLock!!」
デルタさんも大きくジャンプしつつ身体を回転させながら弾丸を四方八方へと放っていくと猛烈なドラムの乱打の音が響き渡る。
そのあまりの激しさにキメラ達は怯んでいると・・・
ライオス「あまり近づくと毒液にやられるな・・・」
そう言いながらライオスさんがキメラの内の一体に近より・・・
ライオス「できるだけ一撃で仕留めるっ!」
ズバァッ!
一気に胴体を切り裂き、ギターの音が鳴り響いた。
アリッサ「毒なら・・・」
ブオン・・・
アリッサ「雷で消毒ね」
ビシャアンッ!!
アリッサさんが雷を放って毒液が蒸発すらせずに消えていった。
そうやって攻防が続いてるとキメラ達は奥の方に逃げていってしまった。
美久「逃げたっ!?」
ライオス「追うぞっ!」
デルタ「待ちな」
ズダンッ!
その言葉と共にデルタさんは逃げるキメラの内の一体に乱射してたのとは違う弾丸を一発放った。
美久「え?」
デルタ「これでどこへ逃げようが居場所はわかる、用心しながら追うぞ」
アリッサ「へぇ・・・探知魔法の一種かしら」
ライオス「凄いなぁ・・・」
そうして私達はキメラを追い掛けていくと大きな毒液の泉が広がっていた。
美久「これは・・・毒液の泉?」
デルタ「っ・・・誰かいるぞ・・・!?」
キメラの周囲にフードを被った青年っぽい人と銀髪のラミアがいた。
てか・・・んー・・?あの銀髪の人の髪型・・・見覚えが・・・?
フードの人「やれやれ・・・その場で作った魔物避けじゃもう耐性が出来ちゃいますか」
ラミア「まぁいいんじゃない?目的のは回収したし」
そんな会話をしつつラミアがキメラを次々と切り捨てていく。
フードの人「そうですね・・・では撤収しましょうか」
ラミア「そだね、ふぁ~・・・ん?」
ラミアがあくびをしたと思ったらレロレロして見回し始めた・・・?
ラミア「ありゃあ・・・どうやら嗅ぎ付けたのがいるみたいだね・・・」
フードの人「むぅ・・・」
ラミアの視線が私達の方を向き、フードの男もラミアの視線の先へと振り向いた。
ライオス「・・・」
ライオスさんが警戒しつつ出ていき、続いてデルタさん、アリッサさん、私と続いていく。
フードの男「なるほど・・・Aランク冒険者の『無尽の魔法弾』のデルタがいたからですか」
ラミア「どおりで・・・ってあの人っ!?」
美久「えっ・・・あっ!?ラミアの人よく見たらハーピーになってたあの人じゃん!?」
ライオス「え・・・っ!?その三つ結びの髪型・・・確か『ルトゥニ』とか言う人!?」
アリッサ「もしや彼女のスキル・・・!?」
ルトゥニ「たはぁ・・・また会っちゃうなんてねぇ・・・そーだよ、あたしは色んなモンスターに変えれるのー♪」
フードの人「ほぅ・・・あなた達がローツとラーネが操ったシキガミを退けた人達ですか・・・」
デルタ「よくわからんが・・・何かを回収したそうだが何を奪った?」
フードの人「言ったところで返すとお思いですか?」
デルタ「・・・なら力ずくで聞こう」
フードの男「やれやれ・・・」
そう言ってフードの男はフードを脱い・・・でないね・・・脱ぐのに滅茶苦茶四苦八苦してる・・・
フードの男「っ!この!ぬぅ!んんっ!」
ルトゥニ「手伝うよハティさん・・・」
フードの男「ぜぇぜぇ・・・すいません・・・」
ハティさんって呼ばれた男はようやく脱ぎ終えて私を見た。
フードの男「この私、『ハティオ』がルトゥニの逃走の手助けを致しましょう」
その言葉と共に腕をバッと横に振るうと周囲に何百本もの剣が浮かび、その切っ先が私達に向けられた。
美久「わっ!?」
ライオス「奴のスキルか・・・!」
アリッサ「ルトゥニは・・・!」
アリッサさんが周囲を見るといつの間にかルトゥニがスライムの姿になって箱をスライム状の体内に取り込んでいた。
ルトゥニ「ハティさん戦いに夢中にならないでねー」
そう言いながらちゃぽんちゃぽんと泳ぐように行っちゃった。
デルタ「クッ・・・奴の背と大量の剣を利用して逃げたか・・・」
ライオス「ハティオって言ったか、戦う気なのか?」
ハティオ「えぇ、とくにそちらのお嬢さん・・・えっと・・・ミクでしたっけ?彼女のスキルが面白そうなので是非ともお相手したいのです、その音を奏でながら戦うというスキルとね」
美久「・・・手加減してね・・・しないでじゃなくて・・・」
ハティオ「では・・・」
ハティオは周囲に浮いてる剣達の中からから四本剣を出し、残りの剣が消えた。
ハティオ「1番目の剣、名を{始動}、13番目の剣、名を{不幸}、777番目の剣、名を{幸運}、999番目の剣、名を{終着}・・・この4本の剣であなた方4人のお相手をしましょう」
そう言ってハティオは剣を構えた。
美久「・・・全部同じに見えるけど・・・」
ハティオ「違いますよー一つ一つ形が異なってますって、それでその中でも名があるものはその能力が高いのでしてこの4本は名のある中でも上位に入るのです」
ライオス「ともかくやるしかないみたいだね・・・」
アリッサ「そうね・・・」
美久「うん!」
デルタ「・・・」
私達は武器を構える。
ハティオ「では参ります」
ハティオが4本の剣を浮かしながら向かっていき、戦闘が始まった。
****
美久「はあぁぁっ!」ブゥンッ
ハティオ「甘いですよ」シュッ!
ガキンッ!
ビートに合わせ、私の籠手とハティオの剣がぶつかり合い、シンセとピアノの和音が鳴り響く。
ハティオ「このように楽器の音が鳴るとは・・・なかなか面白いスキルですね」
美久「うー・・・状況が状況だから嬉しかないなぁ・・・」
ライオス「くっ・・・!!」
ガインッガインッガインッ
ライオスさんはハティオの剣の内の一つと鍔迫り合いをしていき、ピアノとギターの音が鳴っていく。
ハティオ「そちらの方は中々ですがその剣ではこの剣に勝てませんね」
ライオス「嬉しい限りだよ・・・あんたのような猛者と戦えれるなんてね・・・!!」
そう言ってライオスさんはハティオの剣を弾く。
アリッサ「こんな離れて四人同時に相手出来るなんて冒険者に例えるならSランク並みじゃないかしら・・・」
そう言ってるアリッサさんはハティオの側面から雷で出来たナイフのようなのを放つが剣の内の一つにかき消されていく。
ハティオ「まぁ私も色々あったものでしてね、多くは語りませんが」
デルタ「・・・!」
さっきからデルタさんが弾丸を雨・・・というよりゲリラ豪雨並みに放っているがハティオの剣の一つがすごい勢いで回転して弾いていく。
ハティオ「そうやって大量の魔法弾を放っていくのは楽しいですか?」
デルタ「・・・あぁそうさ・・・俺はこうやって弾丸の雨を降らすのが大好きだ・・・!」
美久「はっ!ふぅっ!やあっ!」
ハティオ「むぅん・・・」
シュッ!ガキンッ!ガチッ!ガギィンッ!!
私とハティオは何度もぶつかり合う。
この人はこれでまだ本気を出してないんだよね・・・何百本もの剣相手だったらあっという間に負けちゃうんだろうなぁ・・・
ハティオ「さて、もういいでしょう」
シュバッ!!
一瞬にして剣が私達の喉ギリギリに突き付けられた。
美久「いっ!?」
ライオス「くっ・・・!!」
デルタ「・・・」
アリッサ「・・・ここまでね・・・」
ハティオ「命まではとりません、これ程までに少し楽しくなってたのは久方ぶりでしたので・・・それで見逃してくれますか?」
美久「・・・どする?」
ライオス「・・・わかったよ・・・」
アリッサ「降参よ」
デルタ「・・・奪ったものは教えんか・・・」
ハティオ「では目的だけでも、我々は世界を征服だとかそんなことはしません、『報復を防ぐ』、それだけの為です」
美久「・・・?」
ライオス「報復を・・・?どういうことだい?」
ハティオ「そのままの意味ですよ、あなた方が知る必要はありません、それでは私はこれで」
シュバッ!
そう言ってハティオは浮いてる数百本の剣を束ねてその上に乗って飛んでいっちゃった。
美久「行っちゃった・・・ふぅっ!」
私はハティオの姿が見えなくなったのを確認すると籠手とバックガードのリギッドメタルを変形して椅子っぽくして座ったようにもたれる。
ライオス「強敵だったね、ミク・・・」
アリッサ「そうね、でもあのハティオってのが言ってた報復を防ぐってのはどういうことかしら・・・」
デルタ「・・・とりあえずギルドに報告すべきだな」
美久「だね・・・帰ろうか・・・」
そうして私達はギルドに戻った。
****
受付嬢「・・・ヴェンジャンスという者の部下が何かをしてる・・・と・・・」
デルタ「だそうだ・・・」
受付嬢「この事は上層部にも報告しておきましょう、とりあえず報酬はお出しします」
デルタ「わかった」
そう言って受付嬢はその場から離れた。
デルタ「俺はここで別れる、色々と準備をしなければならん」
美久「そなの?じゃあまたね!」
デルタ「・・・ああ」
そう言ってデルタさんはギルドから去っていった。
ライオス「それじゃあ僕達も帰ろうか」
アリッサ「そうね、船に乗って私達の町へ帰りましょう」
美久「そだね、帰ろっか!」
そうして私達は船に乗って自分達の町へ帰っていった。
数日程度しか離れてなかったんだけど・・・
美久「なんか久しぶりな気がする・・・」
アリッサ「そういうものかもしれないわね・・・」
そうしてギルドへ向かって報告し、晩ご飯を食べて宿に泊まって眠りに付いた。
****
美久「ふぁ~・・・ん?」
私は目を覚まして外を見るとまだ夜だった。
美久「変な時間に起きちゃったな・・・」
そう言って私は宿を出て町を散歩することにした。
美久「・・・静かだなぁ・・・」
前世でも変わらず夜の町っていうのは静かだよね・・・
美久「あれ、ギルドが開いてる・・・」
町の中央にあるギルドの入り口は開いていた。
私は気になって入ってみることにして受付嬢に話しかけることにした。
美久「あのー」
ギルドの受付嬢「あぁミクさん、こんな時間に・・・いえ、私も人のこと言えませんね・・・」
美久「そですね・・・ところでこれってどうして開いてるんですか?」
ギルドの受付嬢「えぇ、このギルドは夜になると酒場になるんです、でも利用する人は滅多にいませんけどね」
美久「そうなんですね・・・」
そんな会話をしてるとふと奥に誰かがいた。
いぶし銀なおじさんといった感じで、葉巻を咥えて何か考え事してるようだった。
美久「あの・・・あの人は?」
受付嬢「ギルドマスターの『フェンドル』さんです、フェンさんはこの町の冒険者を束ねてるんです」
美久「へー・・・でもなんでこんな時間に?」
受付嬢「彼の楽しみがあるんですよ」
パチンッ
フェンさんが指を鳴らすと葉巻に火が着いた。
フェン「ふぅ・・・」
フェンさんが一息つくと・・・
グウゥー・・・!!
大きく深呼吸して葉巻を一気に吸い込んだ・・・たった一吸いで葉巻は短くなり、フェンさんは口から煙を吐き出した。
フェン「ふうぅーっ・・・!!」
美久「おぉー・・・」
フェン「・・・ん?あぁ、確かミクって奴か」
美久「ふぇ?はい、そうですけど・・・」
フェン「なるほど・・・中々の素質を持ってるな、まぁそんな気張らんと気楽に頑張ってくれ」
美久「ありがとうございますっ」
私は頭を下げ、ギルドを出て宿に帰った。