第十六話・2『別れと出会いは異世界でもよくある話である・第一部はここでおしまいです』(後編)
それから私達はお互いの戦闘スタイルや特技なんかを話し合いながら帝都を出ていた。
ユウタ「つまりそのベース音に合わせて行動するとスムーズに敵の攻撃を避けれたり魔法の威力が上がるってことか・・・」
モエカ「なんていうか楽しそうなスキルね・・・」
ルカ「でもっ私の『バード』のスキルと相性が良いんですよ」
ユウタ「だろうなぁ、音楽といえばボーカルだし」
モエカ「それは言えるね、それでまずはどこに行く気?」
美久「えっとね、前にライオスさんに鍛冶の街へ行って武器を作ってもらってね、だからまずはそこへ行こうと思うの」
ルカ「鍛冶の町・・・もしかしてルドルって町ですか?」
美久「有名なんだねぇ・・・そうそう、そのルドルって所だよ」
ユウタ「じゃあ案内お願いね」
美久「うん!」
私達はルドルの町に向かって馬車に乗り、港町まで行こうとするが・・・
声「ブモォッ!ブモォオォッ!!」
美久「おぉう!?何の声!?」
御者「あんなとこにスポレトカウが・・・!?」
馬車から乗り出してみると立派な角が生えてる黒毛の牛が数体いるフォレストウルフを追い回しては突進してる・・・
そう思ってたらその中の一頭が角で高く打ち上げられて地面に叩きつけられた。
スポレトカウ「ブモォッ!ブモォッ!ブモォッ!」
うわぁ・・・頭の角でもう動けなくなってるフォレストウルフに何度もぶっ刺してる・・・てかヘビメタのヘッドバンキング以上にあんな頭ぶん回してよく酔わないなぁ・・・
てか尻とかに他のフォレストウルフがかぶりついてるけど完全に無視して刺し続けてる・・・
美久「うわぁ・・・」
ユウタ「いつぞやのテレビで見たなぁ・・・闘牛の牛が倒れてる人にぐりぐりと角を刺し続けるやつ・・・」
スポレトカウ「ブモォッ!ブモォオォッ!!」
スポレトカウが暴れに暴れてフォレストウルフを全滅させた。
美久「おぉう・・・凄いね・・・」
しかし・・・
ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・
スポレトカウが前足で地面を擦ってる・・・!?
御者「マズいっ!こっちを狙ってる!!」
御者が手綱を思いっきり引いて馬車が急発進した。
美久「うひゃぅ!?」
ユウタ「わぁっ!」
モエカ「おっと」
ルカ「はわぁあっ!!」
馬車はかなりのスピードで走り、スポレトカウを引き離していく。
スポレトカウ「ブモォッ!ブモォオォッ!!」
後ろから牛の声が聞こえた、どうやらさっきのスポレトカウが追い掛けてきたようだ。
滅茶苦茶頭振ってよだれがビチャビチャ飛んでる・・・
御者「このままじゃ馬の体力が尽きてしまう・・・!」
ユウタ「やるしかあるまいっ!」
モエカ「そうだねっ!」
ユウタ君が馬車の後ろから飛んだと思ったら宙に浮いていき、腰にある二本の剣を抜いた。
モエカちゃんも杖を出して念じていくと道の路肩の石がボコンボコンと取れて馬車について行くように浮いていく。
美久「おぉー、いつぞやの訓練の・・・」
ルカ「やはり凄いですね・・・」
御者「なにがおきてんだろ・・・?」
モエカちゃんが浮かせた石が次々とスポレトカウに当たってよたよたと足を遅くしていく。
ユウタ「よしっ!!」
ユウタ君が大体3メートルぐらい上に飛んで一気に急降下して剣をクロスして振り下ろす。
スポレトカウ「オ゛オ゛オオォンッ!!」
見事なまでにスポレトカウの胴体にクロスされた剣筋が刻まれる。
ユウタ「どうだ!」
スポレトカウ「ブモォオ・・・ッ」
ドシンと倒れ、動かなくなった。
美久「おー凄い・・・」
ユウタ「ふぅ・・・足止めありがと、モエカ」
モエカ「別にいいよ、それよりこの牛どうする?」
美久「うーん・・・」
御者「うーぃどうどうっ・・・仕留めてくれたのかい?ならこの馬車に積んじゃうか」
美久「え?いいんですか?」
御者「その代わり肉とか少々貰うけどね」
モエカ「それじゃあ・・・」
モエカちゃんが杖を振るうとスポレトカウの死体が浮いて馬車に積み込まれた。
御者「おぉー凄いね、おたくのスキルかい?」
モエカ「まぁそんなところね」
******
それから私達は港町の食事場にいた。
店員「スポレトカウのシャトーブリアンステーキに塩タンとかいうのお待ちどー」
でかい皿に切り分けたステーキがドーンと乗っかってる。
ユウタ「おぉーすげぇ・・・焼いても分かるこのサシがまた・・・」
モエカ「こんな分厚いステーキなんて前の世界のテレビ番組でも見た事ないよ・・・」
美久「だよねぇ・・・タンもまた分厚い・・・」
ルカ「こんな贅沢なの・・・いいんですか・・・?」
ユウタ「まぁいいじゃん、この肉と角以外は他の人にあげたんだし」
モエカ「そだね、それじゃ・・・」
美久「いただきまーす」
早速フォークでステーキを刺してナイフで切り分けて口に運ぶ。
ユウタ「うんまっ!こんな肉初めて食ったぞ!」
モエカ「このタンも程よい歯ごたえで噛むと旨味が溢れてくるね」
ルカ「脂身も全然しつこくないですね!」
美久「流石シャトーブリアン・・・ほんっと美味しいなぁ」
みんなで舌鼓をうちながら食べ終わって宿で行って会話をする。
美久「ユウタ君のスキルって空を飛ぶんだ」
ユウタ「そうだね、『空歩』ってスキルでね、やってみたら帝都の城の天辺も余裕で行けたよ」
モエカ「人間が魔法やスキルで空飛ぶのって異世界漫画あるあるかもねぇ」
ルカ「そうなんですね」
ルカちゃんはよくわかってない顔で相づちしてる・・・まぁ元から異世界出身だしね。
美久「モエカちゃんも同じようなスキルなの?」
モエカ「ううん、私は『念動力』ってスキルだよ」
ルカ「念動力・・・ですか?」
モエカ「そう、物体なら自在に動かせるの、まぁ最大で大人の男性5人分ぐらいの重さが限界だけどね」
ルカ「へぇー・・・」
そんな会話をしてその日は寝たのでした。
ひとまずここで区切ります。
続きの物語は長くて数か月かかるかもしれませんが気長に待っててください。