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007一つのダンジョンの終焉

 いつ崩壊するかは不明だが、近いうちにこのダンジョンは崩壊するだろう。


 ここで俺の取れる選択は三つ。


 1.正直に話して崩壊することを伝える。

 2.知らないふりをしてこのまま逃げる。

 3.どうせ崩壊するなら、ダンジョンコアを破壊する。


 まず1は無い。話す過程で俺の能力も露見してしまう。


 そうなると2か3だが、2も不味い気がする。


 そもそもダンジョンボスが消失しているらしいので、ボスエリアにボスが現れないかもしれない。


 それにより調査が開始されて、俺に辿り着き能力の露見に繋がるかもしれない。


 これは考えすぎかもしれないが、可能性はゼロじゃない気がする。


 なら結果として残るのは、三つ目のコアの破壊だ。


 問題はコアの破壊によるダンジョンの崩壊だが、実はこれについては問題がない。


 なぜなら冒険者ギルドの掲示板に、ダンジョンに有用な資源がないかの調査と、見つからない場合はダンジョンコアの破壊をするという依頼があったからだ。


 ダンジョンに有用な資源は無かったという事で、諦めてもらおう。


 そもそも、ここはゴブリンしか現れない。


 ゴブリンの素材は、実質あの魔石だけ。


 そう考えると、村としてはこのダンジョンは赤字ダンジョンだろう。


 無限に湧くゴブリンの討伐部位の右耳で、金がどんどん減っていく。


 ならどのみちこのダンジョンのコアは、破壊されていたことだろう。


 (暫定)が付いていたのは、資源があるか調査していたからかもしれない。


 そういう訳で俺はホブゴブリンから棍棒を借りると、ゴブリン達を念のためカードに戻す。

 

 もちろん、ホブゴブリンもだ。


 そして軽く息を吐くと。ダンジョンコアに棍棒を強く叩きつけた。


 するとダンジョンコアに亀裂が入り、呆気なく砕け散る。


「うん。特に何も起きない……うおっ!?」


 ダンジョンコアを破壊して少しすると、ダンジョン全体が揺れ始めた。


 これが崩壊の前兆なのだろう。


 俺は棍棒とついでに散らばったダンジョンコアの破片をストレージにしまうと、急いで魔法陣のあった部屋に戻る。


 停止していないか不安だったが、魔法陣の上で念じると、無事にダンジョンの入り口前に転移した。


「はぁ、焦った」


 振り返れば、ダンジョンの全体が揺れている。


 これは、いつ完全に崩壊するのだろうか。


「あっ!? ジンさん! 知っているかもしれませんが、ダンジョンが崩壊するみたいですよ!」


 そう考えているとタイミングよく、ベック達がダンジョンから出てくる。


「これはびっくりだす!」

「これでダンジョンの奥にいたら、流石に肝が冷えたっすね」


 ブンとタールもいるようで、崩壊するダンジョンを眺めていた。


 だが奥にいて逃げ遅れたらどうなるのか気になり、俺はタールに訊いてみる。


「逃げ遅れたらどうなるんだ?」

「そりゃ、崩壊するダンジョンに飲み込まれてお陀仏っすよ。でもダンジョンの魔力がすべてなくなるまでは完全に崩壊しないみたいっすから、だいたいは逃げられるっすよ」

「なるほど」


 加えてダンジョンが魔力を使い切るまでには、確実に一日以上はかかるらしい。


 それならこの規模であれば、間に合わない方が珍しいだろう。


「ジンさんは、誰がダンジョンを攻略したか知っていますか?」

「いや、知らないな。俺が外に出た時には誰もいなかったぞ」


 不意にベックにそう訊かれたが、俺は落ち着いてそう返事をする。


「そうですか。キョウヘンで見つかった初めてのダンジョンだったのですが、残念です。まあ、ゴブリンしか出なかったので、いずれはこうなる運命だったのでしょう」


 ベックは少し残念そうに言いながら、崩壊に向かうダンジョンを見つめていた。


 それから俺たちは村へと戻り、冒険者ギルドでゴブリンの討伐依頼を完了する。


 村の受付数は少ないので、ベックたちに先を譲った。


 その隙に、ギルドの隅で誰にも見られていない事を確認して、こっそり袋を二つ出す。


 そして並び直し、俺の番にギルド証に加えてゴブリンの右耳と魔石を出した。


「え? お一人でこの量ですか? 少々お待ちください」


 受付のお姉さんは、俺が冒険者登録を担当してくれた人だ。


 俺がベックたちとは別口の一人だと知って、驚いたのだろう。


「確認いたしました。ゴブリン四十七匹討伐により、討伐依頼三回分熟したことになります。まずこちらの報酬が銀貨一枚と小銀貨八枚、銅貨八枚になります」


 受付のお姉さんがそう言って、報酬をトレーに出した時だった。


『神授スキル【二重取り】が発動しました。依頼貢献度と報酬が倍になります』


「え?」


 目の前のトレーに追加で、硬貨がどこからともなく現れる。


「どうかなさいましたか?」

「いえ、何でもないです」


 俺はつい声を出してしまうが、受付のお姉さんは何事もないように話を続けた。


「では次に魔石の買い取りですが、ゴブリンの魔石一個銅貨三枚が四十七個で、銀貨一枚と小銀貨四枚、銅貨一枚になります」


 そう言ってトレーに硬貨を追加で乗せる。どうやら買い取りでは二重取りは発動しないみたいだ。


「合計で銀貨三枚と小銀貨二十枚、銅貨十七枚になります。また無償で両替も可能ですが、いかが致しますか?」

「は、はい。お願いします」


 増えた硬貨の数を受付のお姉さんが何も気にしないので、俺も気にするのを止めた。


 また一つ、二重取りのヤバさを知ってしまう。


 そして結果として今回の俺の報酬は、銀貨五枚と小銀貨一枚、銅貨七枚になった。


 財布をポケットから出すようにストレージから取り出すと、報酬をしまう。


 そして再び同じようにしてストレージに戻すと、ゴブリンの魔石と右耳を入れていた袋を回収してポケットに押し込み、受付を後にした。


「あ、終わりましたか? 意外と長かったですね」

「まあな。それよりも、待っていたのか?」

「はい。俺たちも同じ宿ですし、夕食でも一緒に食べませんか?」


 ベックはそう言って、笑みを浮かべる。


 こいつは善人というだけではなく、良いやつでもありそうだ。


「わかった。一緒に行こう」

「では、さっそく行きましょう!」

「おで、もう腹ぺこだす」

「流石にあっしも腹がへったっす!」


 そうして俺たちは、小鳥の宿り木亭へと帰って来た。


 丁度夕食時だったので、四人丸テーブルを囲んで座る。


「ここのエールは格別なんですよ! まあ、二杯目からは料金がかかるんですけど」

「一杯じゃ足りないだす」

「ほどほどにするっすよ。それで金が足りなくなったのを忘れないでほしいっす」

「分かっているだす。でも、エールがうまいのがいけないだす」


 そんな三人のやり取りを聞きながら、運ばれてきた食事に舌鼓を打つ。


 夕食は鶏肉、いやホーンラビットのソテーとスープ。それと黒パンだ。


 あとはエールが一杯ついてくる。


 水か果実水の場合は、一杯目から別料金が必要なようだ。


 生活魔法に飲水があったが、気軽に習得できないか、店で出すほどは使えないのかもしれない。


 まあエールでいいので、気にしないが。


 ちなみにこの世界では十五歳で成人と見なされ、飲酒しても問題ないようである。


 そして四人での夕食が進み、案の定ブンがエールを何杯もお代わりして、タールが止めに入っていた。


 ベックに関しては、そんな二人を見て笑っている。


 仲の良いパーティだ。


 この村を中心に活動しているようだが、今回のダンジョン騒動は彼らにとって大事件だったらしい。


 普段は村の周辺にある森などで、ホーンラビットを狩っているとのこと。


 たまにグレイウルフやゴブリンが現れ、特にグレイウルフは群れで行動するから注意が必要らしい。


 変わらない日常だったが、そんな時に出現したのがあのダンジョンだ。


 この村は他にダンジョンが無く、強いモンスターも現れないため、冒険者の数が元々少ないようだ。


 たまに街から脱落してきた者が帰って来て、幅を利かすらしい。


 おそらく、俺を襲ってきたあの二人の男もそうなのだろう。


 なのでガラの悪い年上の冒険者を見かけたら、気をつけた方がいいと言っていた。


 もちろん襲われて返り討ちにしたことは言わず、俺はそれに頷いておく。


 それから三人の出生やこれまでの冒険を聞き、時間が結構経ったころにお開きになった。


 三人は酔っぱらっていたが、俺は状態異常耐性があったからか、全く酔っていない。


 それを少し寂しく思いつつも、三人と別れて宿の部屋に戻った。


 生活魔法の清潔を全身にかけるとマントとブーツを脱ぎ、ベッドに横たわる。


「はぁ」


 軽く息を吐くと、異世界転移してから怒涛(どとう)の一日だったと思う。


 ダンジョンでダンジョンボスをカード化するときは、次から気をつけないとな。


 ダンジョンがその周辺で大事だった場合、崩壊させたら重罪になる可能性がある。


 けれども、ダンジョンボスのカードはほしい。


 なら、崩壊させても迷惑にならないダンジョンを探そう。


 未発見のダンジョンとか、未開の地にあるダンジョン。他にはやっかいもののダンジョンとかもあるはずだ。


 今回のゴブリンのダンジョンも、やっかいもののダンジョンに分類されるだろう。


 それに希少なモンスターは、ダンジョン以外にもいるかもしれない。


 どうせ以前の記憶は虫食い状態だし、これからを楽しもう。


 デミゴッドは不老だし、時間はいくらでもある。


 ゆっくり行こう。


 そうして俺は、眠りについた。


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