表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/470

054 転移帰還場所で待ち受けていたもの

 この部屋に俺しかいないことに驚いたようだったが、初老の男性はすぐに(たたず)まいを直す。


「こほんっ。私は怪しい者ではございません。ハパンナ子爵に仕える執事のセヴァンと申します」

「そうか」


 やはりというべきか、ダンジョンの転移帰還場所を押さえているのは、この街を治める者だったようだ。


 これは、面倒なことになったな。


「つきましては、一度ハパンナ子爵にお会いして頂きたいのです」


 まあ、そうなるよな。


 正直、興味がない。


 また仮に会ったとしても、それで終わりということはないだろう。


 もしかしたら、面倒なことを頼まれるかもしれない。


「それは、今すぐでなければいけないのか?」

「いえ、もちろんお時間のある時で構いません」


 ふむ。一応強引にという事ではないらしい。


 この様子なら、何とか断ることも可能だろう。


 だが、この街の子爵という事が問題だ。


 断って反感を買い、二次予選に影響しないとも限らない。


 ここは会った方が、マシな選択なのだろうか。


 それに思えば、この世界でまだ一度も貴族に会ったことがない。


 旅を続けていれば、今後貴族と出会うこともあるだろう。


 加えてまだ、相手がどのような人物か分からない。


 案外、話の通じる可能性もある。


 まあさいあくの場合は、どうにかして別の国に行けばいいか。


 この大陸には、ラブライア王国という国もあるみたいだしな。


「会うことは構わない。ただ一日待ってほしい。明日ダンジョンで、少し試したいことがある」

「かしこまりました。もしよろしければ今晩お部屋を用意いたしますが、いかがでしょうか? また貴方様のお名前を聞かせて頂ければ幸いです」


 見た感じ俺を騙している様子はなさそうだし、宿が無いのも確かだ。


 部屋を用意してくれるというのなら、世話になろう。


「俺の名前はジンだ。それと部屋の用意を頼む」

「ジン様ですね。かしこまりました」


 そうして部屋を用意してもらい、一泊することになる。


 夕食も専用の部屋で出され、内容は豪華なものだった。


 フランス料理とかを彷彿とさせる、オシャレなものである。


 レフの分もあり、レフは喜んで食べていた。


 俺も大抵の毒は効かないと思われるので、構わず食べる。


 まあそれは杞憂(きゆう)で、毒などは入っていないようだが。


 それとどうやらこの場所は、ダンジョンの入り口から数メートル離れた場所にあるらしい。


 加えて(はた)から見れば道具屋にしか見えず、この内部の部屋は秘密にしているようだ。


 あとはゴブリンのダンジョンでは、帰還用の魔法陣は入り口のすぐ近くに転移した。


 けれどもダンジョンによっては、転移場所が若干異なっているのかもしれない。


 実際入り口から数メートル離れているので、この予想は間違っていないだろう。 


 そうして食事を終えてから客室に戻り、俺は一息つく。


 あの執事の話を結構信用してしまったが、嘘はついていない気がしたんだよな。


 これについては、ある程度確信があった。

 

 もしかしたら、以心伝心+がさっそく発動したのだろうか。


 効果の一つで、一方的に心を繋げて対象の心を読むことができる。


 しかし、心を繋げた感覚は無かった。


 けれどもその副次効果的な感じで、近くにいる者の感情などが何となく分かるのかもしれない。


 これは今後検証が必要だが、これまで感じたことのない感覚だったので、おそらく間違いではないだろう。


 そう考えると、やはり以心伝心+は驚異的なスキルである。


 ますます、他人に知られる訳にはいかなくなった。


 けれども今の俺には、超級鑑定妨害と偽装がある。


 俺の能力を見通せるのは、それこそ神授スキル級の能力が必要になるだろう。


 なので覗き見られる心配は、あまりしなくても大丈夫だと思われる。


 あとは、全感共有も試しておくか。


 共有するのは、視界だけでいいだろう。


 そう思い、俺は目の前にいるレフにスキルを発動させる。


 すると視界が増え、目の前には中性的な銀髪の美少年が現れた。


 ふむ。こうなるのか。


 慣れが必要だろうが、とても便利な事には違いない。


 これで偵察に出したモンスターの視覚と聴覚を共有すれば、俺も直接情報を得ることができる。


 それに俺なら離れていても、命令を出すことができるだろう。


 今後様々な事に役立つことは間違いないので、その時が楽しみだ。


 さて、そろそろ寝るか。


 流石にこの豪華なベッドで、レフを寝かすのは止めた方がいいな。


 加えてダンジョンでの疲労や怪我もあるだろうし、一度カードに戻そう。


 俺がそう思って、レフをカードに戻した時だった。


「何だ、これは……」


 手元に戻ったレフのカードが、なんと光っている。


 こんなことは、初めてだ……。


 俺がカードを眺めていると、どういう訳か少しずつ知識のようなものが流れ込んできた。


「なるほど……そういうことか」


 驚くことにこれは、レフを更なる高みへと押し上げることができる状態らしい。


 またその方法は二つ存在しており、それはランクアップとフュージョンとのこと。


 ランクアップは同系統のモンスターカードを規定数代償にして、上位種へ進化させることができる。


 対してフュージョンは、他のカードを代償に全く別のモンスターカードに変化させるようだ。


 まさか、カード召喚術にこのような隠し効果があるとはな。


 もちろんレフを強くさせるつもりだが、果たしてどちらにするべきか。


 グレイウルフのカードはあるし、上位種にすることは可能だろう。


 予想もしやすく、順当に強くなる。


 変わってフュージョンの場合、組み合わせによっては弱体化する可能性もありそうだ。


 ただ運が良ければ、上位種になるよりも強くなるかもしれない。


 どうするべきか。一応レフにも訊いてみよう。


 迷った俺は、レフを召喚してどうしたいか訊いてみる。


「ウォン!」

「そうか。それを選ぶのか」


 するとレフは、迷わずフュージョンを選んだ。


 どうやら今回のダンジョンで、自分の弱さを痛感したらしい。


 たとえ上位種になっても、似たようなことになると考えたようだ。


 それならフュージョンを選び、新たな可能性に賭けたいとのこと。


 上位種になればまたそこからランクアップできる可能性を言っても、考えは変わらなかった。


 次の時も、更にフュージョンを選ぶという。


 レフの気持ちはよく分かった。


 ならば、その意思を尊重しよう。


 であれば問題は、どのモンスターカードとフュージョンするかだ。


 現在俺の手持ちのカードは、以下の通りになっている。



 001 ゴブリン 30枚

 002 ホブン( ホブゴブリン・ボス) 1枚

 003 ホーンラビット 10枚

 004 グレイウルフ 28枚

 005 ジャイアントバット 10枚

 006 ポイズンモス 10枚

 007 マッドクラブ 10枚

 008 グリーンスネーク 10枚

 009 オーク 50枚

 010 スモールモンキー 30枚


 011 ホワイトキングダイル 1枚

 012 ジャイアントリーチ 50枚

 013 ビッグフロッグ 10枚

 014 グリフォン 1枚

 015 レフ(グレイウルフ) 1枚

 016 スモールマウス 10枚

 017 スライム 16枚

 018 グリーンキャタピラー 12枚

 019 ホブゴブリン 34枚

 020 ソルトタートル 18枚


 021 ハイオーク 1枚

 022 アシッドスライム 50枚

 023 ミディアムマウス 100枚

 024 ブラックレオパルド 1枚



 まずこの中から、ザコモンスターを選ぶ気はない。


 フュージョンしても、あまり強くはなれないだろう。


 それと、レフが見るに堪えない化け物になりそうなのも除外する。


 加えて、グリフォンも止めておく。


 レフに他人の育てたカードをフュージョンするなど、もってのほかだ。


 他には、ホワイトキングダイルとホブンも対象外とする。


 この二匹はレフと同様に個性を強く感じるので、フュージョンさせる気はなかった。


 結果として条件に合って強いモンスターは、コイツしかいない。


 俺が選んだのは、ブラックレオパルド。


 失うのは正直惜しいが、他にレフに合いそうなのは無かった。


「レフ、次に召喚する時は、強くなったお前を見せてくれ」

「ウォン!」


 俺は一声かけると、レフをカードに戻す。


 さて、フュージョンをしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ