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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第十三章

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451 ブラックヴァイパー ③


 狂犬のポッチを先頭にして、俺たちは移動する。


 ちなみにハイロウたちは、その時点でお役御免になった。彼らは構成員ではなく、脅迫されている者たちだからである。


 一応ハイロウたちの泊まっている宿や、コンタクトを取る方法については話し合っているので、問題は無い。


 自体が進展したら、ハイロウたちにも教えてやろう。それまでは、引き続き強者探しをすることになると思われる。


 そうして俺たちがやってきた場所は、スラム街スレスレの場所にある娼館エリアだった。


 ここには一般人も出入りしているらしく、スラム街にしては小奇麗(こぎれい)な場所のようだ。


「おい、ゴブリオックの奴らはどこにいる!」


 辿り着くと早々に、ポッチがそこで待っていた構成員らしき男に問いかけた。


「こ、これは狂犬のポッチさん! 待ってました! ゴブリオックの奴らは、二剣のラブさんが狙いだったみたいです! ラブさんの事務所が攻め込まれています!

 それと向こうには貪欲(どんよく)のゴブックと、暴食(ぼうしょく)のオーグンがいるみたいです。他にも名のあるゴブリオックの奴らが、多数確認されているみたいです!」

「な、なんだと!? ちっ、ゴブリオックの奴らめ! 一気に取りにきやがった! お前ら! 行くぞ!」


 その内容は、ポッチとしても驚愕(きょうがく)のものだったみたいだ。慌てたようにそう声に出すと、その場から駆け出した。


 ふむ。二剣のラブというのは、おそらくブラックヴァイパーの幹部だろうな。


 それと貪欲のゴブックと暴食のオーグンは、ポッチから聞いていたゴブリオックの強者の名前で間違いない。


 これは早速、功績を上げるチャンスが到来したかもしれないな。


 俺はそう思いながらも、声を張り上げて駆けるポッチの後に続いた。


 そうしてしばらく進んでいると、次第に争いが見えてくる。


「死にやがれええ!」

「ゴブリオックのクソ共が!」

「ここは俺たちゴブリオックが支配する!」

「クソヘビ狩りだぜぇ!」


 どうやらこの娼館エリアにいたブラックヴァイパーの構成員と、ゴブリオックの者たちが戦っているようだった。


 しかしゴブリオックたちの数が多く、ブラックヴァイパー側が押され気味に見える。加えてその争いにより、道が塞がれて進むのが困難な感じだった。


 するとそこで、ポッチが連れてきた構成員に対してこのように命じる。


「野郎ども! 俺様のために道を切り開け! 根性見せろや!」

「「「おう!!」」」


 その声により、構成員たちが前に出て加勢を始めた。


「な、敵の増援か!?」

「クソが!」

「こいつら、つええ!」

「ぎゃぁ!」


 見れば瞬く間に、道が開かれていく。ポッチが率いる構成員たちは、他よりも荒事専門ということもあり、戦闘能力が高いようである。


「助かった!」

「よっしゃああ!」

「この先にいるラブさんを助けてくれ!」

「ここが踏ん張りどころだぁ!」

「行くぜぇ!」


 また劣勢だった現地の構成員たちも、こちらの加勢によって盛り返していく。


「よし! モブメッツさん、俺様と一緒にこのままついてきてくれ!」

「ああ、わかった」

「わにゃん!」


 そうして俺とレフは、ポッチの後に続いて先へと進んでいった。


 すると前方に、何かを取り囲むような集団が見えてくる。同時にそれを見たポッチは、何かを感じとって舌打ちをした。


「チッ、嫌な予感がしていたが、アレは不味そうだな」


 またそれと同じくして、集団の何人かがこちらに気がついたようだ。


 故にあわや戦闘が始まるかと思いきや、集団は意味深にも道を開ける。


 ふむ。これは誘われているな。


「たぶん罠があると思うぞ」

「はっ! なら正面から、かみ砕いてやるまでだぜ!」


 俺が一応そう言うと、ポッチは牙を見せるように口を釣り上げて、自信満々に突き進んでいく。


 まあ、そうなるだろうな。なら念のため、俺が警戒をしておこう。


 故に俺はこっそりと、少し離れた場所にハイレイスを数体ほど召喚して、潜ませておいた。


 これで何かあれば、俺に知らせてくれると思われる。


 そうして集団が取り囲む中へと入り込んでいき、その渦中(かちゅう)へとやってくる。


 すると早速俺たちは、三人の人物が中央で(にら)み合っている場面に出くわした。

 

 まず俺たちから見て右側には、二人の人物。一人は背が低く、ずる賢そうな鷲鼻(わしばな)の男。手には短剣が握られている。


 もう一人は背が高く、とても横に太い男であり、手には巨大な斧が握られていた。


 おそらくこの二人がゴブリオックに所属している、貪欲(どんよく)のゴブックと、暴食(ぼうしょく)のオーグンなのだろう。


 そして反対側には、筋骨隆々でスキンヘッドの男が、傷だらけの状態で立っていた。


 手にはそれぞれ長剣を持ち、黒いタキシードのような服装である。ここだけなら、特に問題は無い。


 だが紫色の口紅とアイシャドウが、異彩を放っていた。


 この人物が二剣のラブという、ブラックヴァイパーの幹部なのだろう。


 それと周囲には、多くの人たちが倒れている。状況から見て、倒れているのはほとんどがブラックヴァイパーの構成員のようだ。


 だとすれば俺たちを今取り囲んでいるのは、ゴブリオックの者たちということになる。


 確かここに来る前に、他にも名のあるゴブリオックの構成員が多数いると聞いたが、もしかしたらこいつらの中にいるのかもしれない。


 なら単なる普通の構成員では、太刀打ちできなかったのだろう。数もブラックヴァイパー側の方が少ないようだし、結果は明らかだ。


 それに幹部とはいえ相手の強者と一対二だし、結果として二剣のラブも対処しきれずに傷つき、この劣勢に(おちい)ったのだろう。


 もし俺たちが遅れていたら二剣のラブもやられて、今頃そのまま地に伏していたかもしれない。


 そんな劣勢のラブに向けて、ポッチが叫んだ。


「ラブ! 待たせたな! この狂犬のポッチ様が来たからには、もう安心だぜ!」

「ポ、ポッチちゃん!」


 ポッチがそう高らかに声を上げると、ラブは野太い声で歓喜する。だがそれも(つか)の間、表情を(ゆが)めながら続けざまに警告を放つ。


「だ、だめ! ここはもう諦めて、逃げなさい! マロンちゃんが捕まっちゃったのよ!」

「な、なんだと!? マロンちゃんが!? ど、どういうことだッ!!」


 ラブのその言葉に、これまで強気だったポッチが慌てふためく。状況が一変した。


 マロンちゃん? もしかしてポッチの大事な人なのだろうか? つまりこれは、人質に取られたということなのだろう。


 するとそれを見ていた鷲鼻の小男が、不気味な笑い声を出し始めた。


「ひっひっひ! ここまで上手くいくとはなぁ! 俺の計画通りだぁ! おい! アレを連れてこい!」

「はっ!」


 そして配下の者に命じて、何かを連れてこさせる。


 ポッチとラブの反応からして、相当大事な人物なのだろう。ここは手を出さずに、このまま状況を見守ろう。


 俺はそう考えて、下手に動かずにそれを見守った。


 そうして少し経った頃、配下の手によってマロンちゃんが連れてこられる。


「ゴブックさん、連れてきやした!」

「ひっひっひ! でかした!」


 あ、あれは!?


「く~ん」

「マ、マロンちゃん!!」


 ポッチがそれを見て、思わず声を上げた。俺もマロンちゃんの姿に、驚愕(きょうがく)する。


 その理由は連れてこられたのが人ではなく、リードに引かれた茶色い毛をした大型犬(・・・)だったからだ。


 マロンちゃんというのは、犬のことだったのか。


 どうやらポッチの大事なマロンちゃんとは、人ではなく犬だったようである。


 しかしそのポッチの大事な犬は、鷲鼻の小男、ゴブックの手に渡ってしまった。


 あまりの出来事に俺もつい、そのまま見届けてしまった形である。


「ひっひっひ! そうだ! お前の大事な大事なマロンちゃんは、こちらの手の中にある! この犬を殺されたくなければ、下手なことはするなよぉ!」

「げへへ、それで殺した犬は、オデが食べる」


 そう言って笑い声を上げるゴブックと、もう一人の巨漢の男、おそらくオーグンがそれに続く。


「ク、クソガアアア!」

 

 大型犬のマロンちゃんを人質ならぬ、犬質にされたポッチは、血が出ることも構わず両手を強く握りしめる。


 どうやら本当にあのマロンちゃんとやらが大事ならしく、手出しができないようだ。


 色々と気になることがあるし、ツッコミもしたくなるが、俺はそれをグッと我慢した。ここでそれを訊くべきでは無いのは、流石の俺でも理解できる。


「ひっひっひ! わかったなら、まずはそこのカマ野郎を痛めつけろ! もちろん、簡単には殺すんじゃねえぞ!」

「ぐぅ、ラ、ラブ……すまねぇ」

「いいのよポッチちゃん。まさかマロンちゃんが狙われるなんて、あちしも思わなかったわ。マロンちゃんのお散歩の時を狙われちゃったわん」


 犬質を取られて悲痛な表情のポッチに対し、独特なオカマ口調のラブ。シリアスな場面なのに、なんだか酷いことになっている。


 というか今更だが。俺のことはスルーだろうか? もしかして擬態しているモブメッツの顔が、あまりにも空気に溶けこみ過ぎているのかもしれない。


 まさか、完全にいない者として扱われているのだろうか? 流石はモブメッツ。素晴らしいモブ適性だといえる。


 しかしこの状況で俺のことをスルーするのは、あまりにも危機感がなさ過ぎだろう。


「ひっひっひ! ほらっ! 何をしている! 早くそのカマ野郎をぶん殴――ぶげぇッ!!?」


 故に俺は超速で動いて、ゴブックの顔面を不殺を発動しながら殴りつけた。もちろんマロンちゃんのリードを、先に奪ってからだ。


 するとゴブックは面白いように吹っ飛び、建物の壁にめり込むようにして倒れる。ピクピクと痙攣(けいれん)していることから、生きてはいるようだ。


「な、なんだオメ――ヒデブァッ!!」


 続けて俺の出現に驚愕(きょうがく)するオーグンの腹に、こちらも不殺を発動しながら()りを喰らわせた。


 オーグンはそれによって訳も分からないまま、玉のように転がって後方の集団を巻き込むようにして激突する。それによって、大きな砂煙が舞い上がった。


 たぶんこちらも、生きてはいるだろう。何が必要になるかわからないし、一応生かしておいた。


「えっ……」

「なっ……」


 その一瞬の出来事にラブとポッチは、自身の理解を越えたのか硬直をする。当然周囲を取り囲んでいた者たちも、同様だ。


 俺はそんな周囲の硬直を気にすることなく、片膝をついてマロンちゃんの頭を()でてやる。


「よしよし、もう大丈夫だぞ」

「わおんっ!」


 するとマロンちゃんは喜びの鳴き声を上げると、その尻尾をブンブンと振りながら、俺の顔を全力で舐め始めた。


 どうやら自分が助けられたということを、よく理解しているみたいである。マロンちゃんは、かなり賢い犬のようだ。


「ははっ、やめろよ」

「わんっ!」

「ニャ゛ッ゛!」

「お、俺様のマロンちゃんが、助けられると同時に寝取られた!」


 寝取ってねえよ。


「あらんっ、三角関係ねん! あちしも入って、四角関係かしらんっ!」


 状況が一変したからか、ラブもそう言って俺にウィンクを飛ばしてくる。


 なんだ、この化け物は……。


「にゃわんっ!」

「あらっ! 可愛い子犬ちゃん! もしかして、五角関係ねん!」


 なに意味不明なことを言っているんだ……。レフもそれに乗っかるんじゃない。


 まあ何はともあれ、こうして無事に犬質にされていたマロンちゃんは救出されて、ついでに二剣のラブも助けられた。


 なので他にやることは、もう残党狩りだけである。


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