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051 ハパンナダンジョン ④


 種族:ブラックレオパルド

 種族特性

【闇属性適性】【闇属性耐性(小)】

【シャドーステップ】【隠密】【暗殺】

【気配感知】【顎強化(小)】



 黒豹、ブラックレオパルドは、正に暗殺者というべき種族特性をそろえている。


 俺は剣を抜いて、意識を集中した。


 するとブラックレオパルドは、黒い煙となって消える。


 そして気が付けば、俺の目の前にいた。


「グルォウ!」

「くっ!」


 迫りくる牙を剣で受け、踏ん張る。


 勢いで俺を押し倒そうとしたようだが、何とか耐えた。


 その隙にホブンに攻撃を命じるが、ブラックレオパルドは直前で黒い煙となり距離をとる。


 厄介だな。あれがおそらく、シャドーステップというスキルだろう。


 それに、やつは俺がこの集団のリーダーだと気が付いているようだ。


 今も俺を狙いながら、周囲への警戒も(おこた)っていない。


 最終階層になった途端、一気に難易度が上がったな。


 ダンジョンも攻略されない為に、必死なようだ。

 

 これは、俺も本気になるしかない。


「シャドーアーマー」


 剣をしまってシャドーアーマーを身に纏うと、シャドーネイルを両手から生やす。


 さあ、いつでもこい!


 俺が気合を入れると、ブラックレオパルドが再び消えた。


 どこからくる? どこだ? いつ襲ってくる?


 神経を研ぎ澄ませ、その瞬間を待ち続けた。


 そして、静寂(せいじゃく)が訪れる。


「は?」


 気が付けば、ブラックレオパルドはいなくなっていた。


 まじか、逃げられたのか?


 いや、一時撤退をして、身を潜ませたのだろう。


 ブラックレオパルドの暗殺という種族特性は、不意打ち成功時に二倍のダメージを与えるという強力なものだった。


 暗殺者らしく、真っ向から戦うことはしないようである。


 かなり頭がいいようだな。


 あんなのが、何匹もこの階層にいるのだろうか。


 おそらくこのダンジョンは、最終階層に力を注ぎこんでいるのだろう。


 五階層目は武装したオーク集団だったので、その差が凄い。


 このダンジョンを攻略するのは、実際かなり難しそうだ。


 しかしだからといって、諦めることはしない。


 むしろやる気が出てきた。


 あのブラックレオパルドをカード化すれば、かなりの戦力アップに繋がる。


 俺は守りを固めるため前後に数匹オークを召喚すると、先へと進む。


 道中はアシッドスライムの他にも、ミディアムマウスという大型犬サイズのネズミが現れた。



 種族:ミディアムマウス

 種族特性

【繫殖力上昇(小)】【悪食】

【前歯強化(中)】【集団行動】

【集団招集】



 おそらくスモールマウスの上位種であり、単体ではオークよりも弱い。


 だが、集団招集というやっかいな能力を持っていた。


 ミディアムマウスがそれを発動させると、どこからともなくミディアムマウスが集まってくるのだ。


 それも複数の方向からやってくるため、オークやホブゴブリンを追加で召喚して何とか乗り切った。


 まさか一度の戦闘で、二十三枚もカードが集まるとは思わなかったな。


 どうやら集団招集は、近くにいる仲間に自身の場所を伝えるスキルのようである。


 この階層に他の冒険者がいないこともあり、ここまでの数が集まったのだろう。


 むしろ、この程度で済んだとも言える。


 集団招集は敵としてはやっかいだが、味方として扱うには微妙だな。


 そもそも俺が召喚したモンスターの居場所は、離れていても何となくわかる。


 しかし手に入れたからには、どうにかして上手く使いたい。


 まあ使い方については、今後考えていこう。


 それから俺は六階層目の探索を続けるが、ブラックレオパルドは未だに現れてはいない。


 またミディアムマウスを道案内用に召喚して、宝箱をいくつか発見している。


 最終階層という事もあって、入っている物も豪華だった。


 これまで銀貨しか入っていなかったが、ここでは小金貨も入っている。


 ポーションも下級だった物が、中級になった。


 他には、そこそこ質のよさそうな防具なども見つけている。


 俺は現在のブラックヴァイパーの一式が気に入っているので、変える気はないが。


 あとは宝箱を守る、おびただしい数のミディアムマウスがいる部屋も見つけた。


 何匹も重なり合うように固まっており、百匹以上はいただろう。


 部屋の大きさ的にホワイトキングダイルは入れなかったので、モンスター軍団を使いながらちまちま倒した。


 結果としてミディアムマウスのカードは、気が付けば百枚になっている。


 これ以上は流石にいらなかったので、残りはストレージに収納した。


 そして宝箱の中身は集団招集の(ふえ)という、いわゆるホイッスルである。


 吹くことで、味方に自身の場所を伝えるという効果だった。


 それからも引き続き探索を続けるが、やはりブラックレオパルドは現れない。


 というよりも、あの個体以外にいないのではないのだろうか?


 これだけダンジョン内を動き回っても、見つかるのはアシッドスライムとミディアムマウスだけである。


 鑑定してもイレギュラーモンスターではなかったはずだが、どういう事だろうか?


 もしかしたら数ではなく、質で用意された徘徊(はいかい)モンスターなのかもしれない。


 そう考えると、()に落ちる。


 問題はカード化しても、ダンジョンが崩壊しないかだよな。


 おそらく大丈夫だとは思うが、つい心配になってしまう。


 まあとりあえず、ブラックレオパルドの数は少ないと仮定することにした。

 

 しかしそもそもとして、まずは見つける必要がある。


 この広いダンジョンの中で一匹を見つける方法……あの手なら行けるかもしれない。


 そこで思いついたのは、ミディアムマウスによる大捜索である。


 道案内用に一匹残し、九十九匹をダンジョンに放つ。


 この階層に冒険者は見かけていないし、大丈夫だろう。


 ミディアムマウスたちに命じるのは、ブラックレオパルドを見つけ次第、集団招集を発動させるというもの。


 他のモンスターは、無視して構わない。

 

 そうして九十九匹のミディアムマウスたちは、ダンジョン内を突き進んでいく。


 流石にこの数であれば、おそらく見つかるだろう。


 そうして途中何匹かやられてカードに戻ってしまうが、しばらくして発見の報告が来る。


 脳内に、ミディアムマウスの居場所が浮かび上がった。


 加えて、そこに至るまでの道筋も把握できるようだ。


 なるほど。集団招集を使うとこうなるのか。


 予想よりも使えるな。


 俺は笑みを浮かべながら、現場へと向かう。


 そして辿り着いたそこは、ボスエリアの前だった。


 既に他のミディアムマウスたちが到着しており、ブラックレオパルドに突撃している。


「グルォウ!」


 それに対してブラックレオパルドは、何匹ものミディアムマウスを(ほふ)っているものの、数に圧倒されて手間取っているようだ。


 だがやってきた俺と目が合うと、またもや逃走を計ろうとする。


「逃がすか」

「グォッ!?」


  シャドーステップを発動される前に、俺は通路を生活魔法の氷塊で塞ぐ。


 過剰に流した魔力により、一瞬で氷の塊が姿を現した。


 ブラックレオパルドもこれには驚き、足を止める。


 その隙に、別方向の通路も塞いでいく。


 もちろん、隙間なくである。


 これで今度こそ、逃げられないはずだ。


 おそらく、ボス戦前に不意を突く算段だったのだろう。


 しかしこれで、逆に追い詰めることに成功した。


「さて、ここからどうする?」


 俺はシャドーアーマーを纏いながら、ブラックレオパルドに問いかける。


「グルオウ!」

「まあ、そうくるよな」


 閉じ込められた空間で多くの敵に囲まれれば、俺を狙ってくるのは分かっていた。


 俺さえ倒せば、確かにこの状況を打破できるだろう。


 だが来ると分かっていれば、どうとでもなる。


「グルオゥ!?」


 迫りくる二本の牙の隙間に、俺はシャドーネイルを突き刺した。


「これで、俺の勝ちだな」


 口内から脳天にまで届いたシャドーネイルにより、ブラックレオパルドが倒れる。


 そして無事に淡い光になり、俺の右手に集まった。


「ブラックレオパルド、ゲットだ!」


 カード化したブラックレオパルドを握り、俺は笑みを浮かべる。


 厄介な相手だったが、こうして倒すことができた。


 これがもし森の中であれば、より面倒な相手になっていただろう。


 俺は氷塊を解除しながら、勝利したことに満足した。


 さて、ボスエリアの前だが、まだこの階層でやるべきことは残っている。


 それに、アシッドスライムのカードをもう少し集めたい。


 俺はそう考えると、念のためミディアムマウスたちにブラックレオパルドが他にもいないか捜索を命じつつ、探索を再開するのだった。



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