433 ブッチ代官との話し合い
やはりこの大陸には、他にも転移者がいたようである。それも時期的には、俺とタヌゥカがいたときには、既に存在していたらしい。
またその人物はエルジュという青年であり、創造神とはまた違った、神様を探しているようだ。
加えてなぜか天国にこだわっており、天国が存在しない創造神を崇める教会とは、相容れない関係とのこと。
なので神を探すために当初は国を出ようとしたらしいが、実力が非常に高かったことで、何とか国が引き留めている状態らしい。
故にそんな存在がいれば、当然のようにハンスは一度接触をしたみたいだ。しかしそこで色々と問題が起きて、エルジュはジンジフレ教を信じなくなったという。
おそらくハンスが傲慢なことを言って、相手を怒らせたのだと思われる。すんなりとそれが、脳裏に浮かび上がるほどだ。
その結果としてエルジュという青年は、ジンジフレ教に無関心どころか、若干敵視しているらしい。
ジンジフレ教が国中に広まらず、ゴートレール辺境伯領周囲に留まっているのは、これが理由かもしれなかった。
なのでそのエルジュという青年と今後出会うことがあれば、ジンジフレ教というだけで印象は悪くなるだろう。最悪なハンスの置き土産である。
不幸中の幸いなのは、ジンジフレ教を根絶やしにしたいと思われていないことだろう。
もしそうであれば、もっと早くこの情報が俺の耳にも入っていたはずだ。
だとすれば、エルジュという青年はそこまで過激な性格ではないのかもしれない。
タヌゥカやツクロダのようなタイプであれば、ハンスごとジンジフレ教を潰そうとしたはずだ。
なのでもし遭遇することになっても、まともな性格であればいいのだが。
しかしエルジュという青年は転移者であるようなので、念のため警戒することを決める。
また他にもブッチ代官は、最後にこんなことを尋ねてきた。
「なぜジンジフレ様は、ハンスのような者に、高ランクのサーヴァントをお与えになったのでしょうか? 私はそれが気になって、仕方がないのです」
それは、俺としても気になるところである。だが一応、理由らしいことは予想することができた。
一つ目は、純粋な強い祈りや願いである。ハンスは当時薬中状態だったが、それを満たしていた。
加えてそれは、ジンジフレという存在を知らなくても、条件を満たしてれば問題ないようだ。カードへの強い執着も、それに影響したのだろう。
二つ目は才能や素質、その性格やこれまでの人生など、様々な要因がある。これには運も含まれており、ハンスは悪運がとても強かった。
おそらく偶然なども重なり、出現するサーヴァントが上振れたのだろう。何とも運の良いやつである。
最後に三つ目についてだが、たぶんこれが一番の原因だろう。それは、俺との関係性である。
良くも悪くも、俺とこれまで関係のある者は、良いサーヴァントが手に入っているような気がした。
現状だとまだサンプルが少ないので確定情報ではないものの、そんな予感がする。
実際ハンスはBランク、ハプンとサマンサはCランクのサーヴァントを所持していた。
Cランクまでは二つ目までの条件を満たしていると、そこそこ現れる。だがBランク以上ともなると、二つ目まででは難しい。
皆無とは言わないが、ハンス程度では無理だろう。
城のダンジョンでもCランクの所持者は多いが、Bランク以上はほんの一握りなのだ。
ちなみにAランクは、今のところアルハイドのサーヴァントとしか見たことがない。
なので何かしらの加点要素がなければ、ハンスにBランクのサーヴァントが現れる可能性は、非常に低いと思われる。
その原因が、俺との関わりにあると予想したのだ。ハンスとの出会いは、ある意味俺の記憶にとても残っている。
この世界に来てから、まだ間もなかった時だからだ。正直良い印象は皆無だが、ある意味関わりは深い。
ただどれほどの関わりでサーヴァントとの加点要素になるかは、不明である。
けど何となく、セマカの町で関わったブラウンやグリンくらいでは、微妙な気がした。
これらは神に関係することだからか、金目と銀目もだんまりである。
なのでもしかしたら、他にも理由があるのかもしれない。それについては今後旅を続けていれば、いずれは何かしらの結果として、判明する可能性もある。
とりあえず俺と一定基準以上の関わりがあった者は、強いサーヴァントが生まれることがあるかもしれないと、そう思うことにしよう。
しかしこの三つ目を口にする訳にもいかないので、二つ目までの理由を話しつつ、偶然ということにしておく。まあ結局は、運の要素が大きい。
ブッチ代官は少々納得しづらいようだが、それを飲み込んでくれた。
やはりハンスにBランクのサーヴァントが現れたことには、未だに不服のようである。
まあ、それについてはどうしようもなく、もう終わったことなので諦めてもらう。
あとハンスの屋敷についてだが、当初は俺の物になる感じだった。
しかし俺としては不要なので、売却を決める。また金銭も既に満ち足りているので、不要だった。
なので売却した後は、ハンスたちの被害者への救済に使うことになっている。おそらく足りないかもしれないが、ないよりはマシだろう。
後のことは、ブッチ代官にまかせることにする。きっと上手くやってくれることだろう。
そうして話し合いも無事に終わり、ついでにセマカのダンジョンについて俺も訊いた後、解散になった。
ちなみにブッチ代官は、これからハプンとサマンサに対して、色々とぶちかますらしい。
他にも当然ハンス親衛隊も解散させ、これまで分かっていても手出しができなかった者たちを、牢屋にぶち込んで罪を償わせるようだ。
他にもハンスから甘い汁を吸ってきた者たちは多く、特にエゴチ屋のアクダカーンはその筆頭とのこと。
それらの人物たちも権力から引きずり降ろし、これまでの悪事を暴いて地獄に叩き落とすようだ。
何故だかよくわからないが、ブッチ代官の背後から処刑のBGMが聞こえてくるような気がした。
俺としてもアクダカーンなどは正直どうなってもいいのだが、ただエゴチ屋の山吹色の焼き菓子が無くなるのは困る。
するとエゴチ屋の親類でまともな人物がいるようなので、引き継がせることも考えているらしい。
既にその人物とは接触しており、もしそれが叶うようであれば、エゴチ屋からエゴチ製菓に名称を変えるようだ。
とても旨そうな菓子を作りそうな名称である。なんとなくその判断は、正解のような気がした。
またその親類とはそんな夢物語を語り合った仲らしいが、本当にそれが実現できそうなことに、ブッチ代官は喜びを隠せないようである。
これからブッチ代官の革命劇が、セマカの町中で起きそうだった。ぜひ頑張ってほしい。
セマカの町が良い方向に向かっていくことを、俺は願うことにしよう。まあ、神なので願う対象は別にいないのだが。
◆
そんな事があったことを思い出しつつ、俺はレフと共に歩き、セマカのダンジョンの入り口付近までやってくる。
ちなみにここまでは、徒歩で来た。馬車を用意してくれると言われたが、断っている。
理由は別にいらないし、ダンジョンを踏破したらそのまま町を去るからだ。馬車を使ったら、俺が出てくるまで待っているような気がした。
それについても、ブッチ代官には言っている。また一応そのうち、シルダートの街に行くことも告げておいた。
どのみちゴートレール辺境伯に気づかれるなら、先に根回しをした方がいいと考えたからだ。
そうしてやることを終えたので、こうして最後にセマカのダンジョンにやってきたのである。
さて、久々のダンジョンだ。観光感覚で、楽しもう。
「行くぞ」
「にゃぁん!」
俺はレフにそう声をかけると、セマカのダンジョンに入るのであった。




