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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第十二章

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426 ハンスとの試合の結果


 キングの銭投げが、まっすぐとハンスに向かっていく。このままでは、ハンスへの命中は免れない。


 たとえ魔道具がバリアーを張っているとしても、銭投げの威力には耐えられないだろう。


 そしてあわやハンスの命運もこれまでかと思われたが、そうはいかなかった。


 サンの発動したライトバリアが複数展開され、銭投げを見事に防ぎ切ったのである。


「え……?」


 ハンスは銭投げの恐怖で尻もちをついていたが、自身が助かったことを一瞬理解できなかったみたいだ。


 けれども数秒後、その表情は笑みに包まれる。


「は、ははは! 俺はやはり選ばれた存在だ! 見ろ! ジンジフレ様が、俺を助けてくれたぞ!!」


 ある意味それは正解なのだが、ハンスは俺が助けたとは思っていないみたいだ。


 まあ、あのままスルーしてもよかったのだが、今ここで死なれるのは困るから仕方がない。


 それとハンスは自信満々にそう言うが、観客からはサンがライトバリアで助けたのは明らかだった。


 何度も使ったライトバリアと、ハンスを救ったものは同じである。当然、見た目も同様だ。


 流石に観客も、ジンジフレが神の奇跡でハンスを助けたとは信じづらい。


 そしてハンスは浮かれているが、試合の途中だということを忘れているのだろうか。


「ぶぎゃっ!?」

「なっ!?」


 ハンスを仕留められなかったことと、自身のしてしまったことに動揺して、キングは唖然(あぜん)としていた。


 隙だらけのうしろ姿は、攻撃する絶好の機会である。加えて、倒すならここだろう。たとえ倒しても、ハンス側も言い訳がしやすいはずだ。


 故にサンは聖剣アルフィオンを振り、隙だらけのキングの首を、そのまま切断したのである。


 キングは切断されてからようやく、そのことに気づいたのか、驚きの声と共に瞳孔(どうこう)が開く。


 そして光の粒子になり、ハンスの手元にカードとして移動したのだった。


「……え?」

「おわった……のか」

「なんだよこれ……」

「うわっ……」


 観客もその終わり方に、唖然とする。あまりの光景に、辺りは静まり返った。


 だがそこで、俺が言葉を発する。


「審判。これは、俺の勝ちだよな?」

「ッ!? ……勝者、流浪(るろう)の者、ジン」


 離れた場所で、魔道具に守られた審判役の初老の執事は、拡声された声で渋々(しぶしぶ)そう口にする。


 流石に明らかなこの状況では、俺の勝ちを宣言するしかなかったようだ。


「酷い試合だったな」

「いや、でも途中までは凄かった」

「というか、あのジンという人物は何者だ?」

「そもそも何で、サーヴァントを複数召喚できるんだよ」

「う、嘘だろ……絶対ハンス様が勝つと思って、全財産賭けたのに……」

「あのサンとかいうサーヴァント、強すぎだろ」


 すると俺の勝利が決まった瞬間、観客席からは様々な言葉が飛び交った。


 中には賭け事もしていたのか、馬券のように紙吹雪が発生する。負けと分かって、その券を持っていた者が一斉に放り投げたのだ。


 ハンスに賭けていた者は、相当多かったらしい。逆によく賭けが成立したな。


 そんな事を思いつつ、俺は言葉を失っているハンスへと視線を移す。


 するとハンスはここで、事前の予定通りに動きを見せた。


「さ、詐欺だ。こいつは詐欺師だ! サーヴァントを複数持てるはずがないだろ! こいつはサモナーだ!! いかさまだ!」


 ハンスは大きな声を上げて、俺を指さす。魔道具によって拡声された声が、闘技場中に響き渡った。


「え? 詐欺?」

「そうだー! 詐欺師だー!」

「負け惜しみでは?」

「ぶざま……」

「偽装系のスキルで、誤魔化しているに違いない!」

「あの戦いのあとじゃ……なあ?」

「カードも使っていたし、サーヴァントが倒された時も自然だったぞ?」

「あいつが店売りのカード玩具を買っているのを見た! それを使っていたんだろ!」

「というか、なら何で試合前に止めなかったんだ?」

「負けた時に、こうしてひっくり返すためじゃないか?」

「そもそも、最後は助けられていたじゃないか」


 サクラなのか、いたるところから俺を疑うようなセリフが飛び交っている。


 しかし試合の結果から、観客の多くはハンスにあまり同調しなかった。逆にその言葉に、疑問を抱いたようである。


「ぐっ、俺がそう言ったらそうなんだ! こんな試合は無効だ! 相手は魔力を使い切っているに違いない! お前ら! 全員であの骨モンスターを倒せ! 今なら倒せるぞ! 倒した者には賞金を出す!」


 観客が同調しなかったことに腹を立てながら、ハンスは事前の作戦通り、闘技場の壁際に待機させていた親衛隊と、雇った冒険者たちにそう命じた。


 すると親衛隊は、次々にサーヴァントを召喚していく。冒険者たちも一部納得はしていないが、雇われたので武器を抜いた。


 さて、予定通りハンスは、こうして動いてくれたな。試合の終わり方は俺としても予想外の結果だが、悪くはない。観客がこちらの味方につきやすくなっている。


 そしてここからが、ある意味本番だ。俺はストレージから、ジンジフレ教のシンボルであるネックレスを取り出すと、目の前に掲げた。


 加えて事前に考えていた通りの言葉を、ここで発声する。


「それがお前たちの選択か。いいだろう。ジンジフレ教にて異端審問官(・・・・・)の役職を持つこの俺が、神判を言い渡す。襲撃の意思をみせた信者は、全員有罪だ。これより天罰が降り注ぐだろう!」


 唐突なその宣言に、周囲は唖然とした。


「は、ははは! 異端審問官だと! 笑わせる! それにジンジフレ教だと! ジンジフレ教の教祖であるこの俺、ハンス様の目の前で、よくそれが言えたものだな!

 形勢が悪くなったからといって、あまりにもみっともない嘘だ! ジンジフレ様に寵愛(ちょうあい)を受けたこの俺が、天罰なんて受けるはずぐぁあああ――ッ!?」


 そして、ハンスがそのように反論した時である。ハンスの足元から現れた光の柱が、その身を焼いた。


 以前にブラッドが消し飛ばされた、あの光の柱に酷似した光景である。


 更に、それだけでは終わらない。俺は襲撃の意思を見せた信者は、全員有罪(・・・・)と言ったのだ。


「ぎゃぁああ!?」

「ひぃぎぃい!」

「な、何で俺までぇええ!?」

「いやあぁぁぁ――ッ!」


 それは既にサーヴァントがやられている、ハプンやサマンサ、ガマッセにカザーセも同様である。


 試合に参加しただけで、同罪だ。ハンスの目的を知らないはずがないだろう。またこれまで甘い汁を吸っていたことには、変わりない。


 加えて他の親衛隊たちも、次々に光の柱に焼かれていく。


 そうして数多くの光の柱が発生し、辺りは光で包まれた。


 観客たちは何が起きたのか理解できないほどに、言葉を失う。逃げ出すことすら忘れたかのように、その光景を見続けていた。


 ふむ。これが称号である神域の存在+に内包されている、天罰か。初めて使ったが、中々のものだな。


 ちなみに神域の存在+は、このような効果である。



 名称:神域の存在+

 効果

 ・神名を得た状態であれば、以下の効果が発動する。

【光癒聖神神滅属性適性】【光聖属性無効】

【神属性耐性(中)】【神滅属性耐性(小)】

【神力生成(中)】【創神力生成(微)】

【神属性スキル習得】【神の威光】

【魔力自動回復(大)】【消費魔力減少(大)】

【スキル取得補正(大)】

【スキル容量コスト減少(大)】 

・神名を得た状態であれば、信者に対して以下の効果を得る。

【信仰スキル『サーヴァントカード』付与】

【信仰スキルの徴収・抹消・封印】

【信者鑑定】【心の声】【神託】【天罰】

【加護付与】【カード付与・徴収・抹消・封印】

 ・信者の数と捧げられる信仰により、神力の自然回復量と上限が上昇する。



 いくつか気になる効果はあるが、今は割愛しよう。


 それはそうと、ブラッドの時に見た光の柱ほどの威圧は、目の前のそれからは感じない。


 おそらくアレは神滅属性であり、目の前のそれは単なる神属性という違いだろう。まあ、根本的に似ているようで、全く違うものという可能性もあるが。


 また天罰は、使ってみて初めてその効果を理解した。思った以上に、色々とできるみたいである。


 ただ存在ごと消し飛ばすことだけが、天罰ではない。もっと面白いことができたのだ。


 故に光の柱が消えた後、ハンスたちは普通に生きていた。ダメージはそこまで大きくはないが、焼かれている間は様々な苦痛が襲ったはずである。


 結果としてその場に力なく倒れ、痙攣(けいれん)していた。しばらくの間は、まともに起き上がれないだろう。


 その間に俺は信者でなかったことで、難を逃れた冒険者たちの対処をすることにした。


「それで、お前たちは俺に立ち向かうのか? 来るなら、遠慮はしないぞ?」


 すると光の柱を目の当たりにしたのか、何人かが武器を手放して両手を上げる。


 また何人かがそうすると、つられたように全ての冒険者が降参した。


 単なる雇われの冒険者に、そこまでの覚悟はなかったみたいだ。加えてハンスの行動には、そもそも賛同できなかった者も多かったみたいである。


 俺に武器を向けたのは、あくまでも依頼を受けたからに他ならない。


 正直どのような依頼内容かは不明だが、まあ今回は見逃そう。今後のことを考えれば、その方が最善だ。


 ここでレフを(けしか)けて一掃することは可能だが、そうするとここまで手の込んだことをした意味が無くなる。


「いいだろう。お前たちは、そこでおとなしくしていろ。それよりも、神判はまだ終わってはいない。言葉くらいは聞けるだろうし、ここで続きを述べさせてもらおう」


 そうしてハンスたちが絶望の表情を浮かべる中、俺は神判の続きを口にするのだった。


 ハンスたちの終わりは、もう目の前である。


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