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SS エルフの大陸の変化 ④

※推奨読了話数156話くらいです。


 神聖ジオス軍の侵攻は、エルフたちにとってはまさに、青天の霹靂(へきれき)だった。


 ダークエルフたちとユグドラシルたちによる、二方向からの進軍に、エルフたちの対応は大きく遅れてしまう。


 両者を下に見て(あなど)っていたことによる、大きな油断。また準備の遅さや同じエルフ内での不和など、理由は多岐に渡る。


 更にはその進軍に合わせて、投獄していたはずのメース・ガッキ・ワカラッセが、解放されてしまう。


 またメース・ガッキ・ワカラッセ側のエルフが離反して、神聖ジオス軍へと寝返ってしまったのだった。


 これはユグドラシルによる情報収集の結果と、ダークエルフ側の族長であるダザシャ・ラズン・フィルスールによる提案から、救出することが必要だと考えたからである。


 加えてメース・ガッキ・ワカラッセ側のエルフや、ワカラッセ氏族にも連絡を取り、協力する約束を取り交わしていた。


 その迅速なやり取りは行動が遅いことが当たり前のエルフでは、対処することができなかったのである。


 もちろん神聖ジオス軍側にも裏切者が出そうになったが、それはユグドラシルが事前に察知して、物理的に消していた。


 エルフの大陸内であればユグドラシルの目から逃れることは、もはや困難な状況なのである。


 大陸中には、既にユグドラシルの影響下にある植物が大量に分布していた。


 人ではなく大樹のモンスターと化しているユグドラシルにとって、大量の情報処理は苦ではないのである。


 ちなみに人が同じことをすれば、その情報量の膨大さから、脳が破裂してもおかしくはない。


 そうして敵側に知られずに事は済み、神聖ジオス軍はメース・ガッキ・ワカラッセと、その仲間たちを加えて、エルフ側へと内部からも襲いかかった。


 それによりエルフ側は混乱の渦に飲み込まれて、まともに戦線が維持できなくなっていく。離反者も増えていき、更には勝ち馬に乗ろうとした日和見まで参戦する。


 最終的にその結果は言うまでもなく、神聖ジオス軍の圧勝となった。中央はそのまま陥落して、大長老とそれに従った四長老の一部や権力者たちは、無事に捕縛されたのである。


 ユグドラシルとしては別に処刑でもよかったが、話し合いの結果地位と権力をはく奪した上で、隠居させることに決まった。


 そして新しい大長老には、四長老の一人でもあった、メース・ガッキ・ワカラッセが選ばれたのである。


 加えて新たな四長老も選出され、エルフ側は瞬く間に掌握されていく。


 更には今後のことも考えて、民たちにジオスの物語(ユグドラシルの補足版)を広めるのだった。


 またそれと同時に、ユグドラシルはかなりの無理をしながらも、大陸全体に僅かながらだが恩恵を与える。


 もちろんユグドラシルの森とは天と地ほどの差はあるが、それでも大地は豊かになり、魔力や怪我の治りが早くなった。


 その奇跡を見て、エルフとダークエルフたちはジオスの物語を信じると共に、ユグドラシルとジオスという夫婦の神がいるという認識をしたのである。


 まだ信仰まではいかない者も多いが、それも次第に吟遊詩人の歌や劇団による演劇、神殿などが建てられていくことで、信者が増えていくのだった。


 そして同じ神を信じることによって少しずつ、エルフとダークエルフの関係も修復されていく。


 またジオスには複数の名前と姿があり、その一つがジンジレフであることも浸透していった。


 理由は気がつけばエルフとダークエルフの中で、信仰スキルに目覚め、サーヴァントカードを扱える者が増えていったからである。


 これについて後からユグドラシルから、信仰の(あつ)い者であれば、目覚めることがあることに加えて、ジオス=ジンジフレであることも告げられたのだ。


 ちなみにジンジフレのことはユグドラシルも知らなかったが、ジンの名前と似ていたため、おそらくそうだろうと考えていた。


 なによりジオスを信仰した結果得られた信者スキルにそう記載されていたのであれば、まず間違いないと判断したのである。


 そうして目に見える恩恵が得られたことで、信者数は加速度的に増えていく。


 他にも排他的な部分を緩和して、他大陸からの者もそれなりに受け入れるようになった。


 するとその中に、ジフレを神と崇める者が現れて布教し始め、一時は問題になりかけてしまう。


 だがそのジフレもまた、ジオスの複数ある名前と姿の一つであることが判明した。


 なぜならその者も、同じ信仰スキルが使用できたからである。


 その者はケモノスキー一派の中で、最も早く巣立った一人なのだという。元々絵師として食っていたこともあり、学ぶ事が少なかったというのもある。


 そんな絵師は普段こそジフレ以外ではケモノしか描かないが、同一存在であるジオスは例外として、描き始めた。


 それによってエルフの大陸にジオスと、ついでにジフレの肖像画が出回り、ますます認知度と信者が増え始める。またジフレのファンも、増加していった。


 ユグドラシルもこれについて、率先して情報の拡散と信者確保に動いたのである。


 その結果としてエルフの大陸で、ジンは絶大な影響力を有することになるのだが、本人はそれを知るはずもない。


 だがしかしユグドラシルはここまですれば、ジンが喜んでくれると本気で思い込んでいた。あとは、ジンがやって来るのを待つばかりである。


「ふふ、旦那様。私、何千年、何万年でも待っているわ。でも、途中で飽きちゃったら、その時は……」


 そう言ってユグドラシルはジンの帰りを待ちながらも、日々妄想をし続けるのであった。


 こうしてエルフの大陸は、ユグドラシルとジオスという神の名のもとに、統一されたのである。


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