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SS エルフの大陸の変化 ②

※推奨読了話数156話くらいです。


 幸いユグドラシルには、ジンから譲り受けたカードがある。


 飲まず食わずで二十四時間文句も言わずに働く配下に、ユグドラシルは満足した。できればもう少し数が欲しかったが、それは仕方がない。


 しかしそれでも、エルフやフェアリーは力仕事をあまり得意としないので、この数でも頼りになったのである。


 そうして無事に復興が進んでいくが、ユグドラシルには一つだけ、不満があった。


「ルフルフ、いったいどこに行ってしまったの?」


 そう、自称ハイエルフの一人、ルフルフの所在が分からないことである。


 エルフの何人かに命じて、ルフルフの捜索を頼んだが、一向に見つからない。


 更に当初ルフルフがエルフと戦うために率いてた軍も、いつの間にか解散されており、それぞれ散っていた。


 しかし散った多くはこの森に戻ってきたことで、その理由を知る。


 どうやらルフルフは突然慌てふためくと、進軍を停止して、解散を命じたらしい。


 そしてエルフたちが戸惑っている間に、ルフルフは姿を消したという。


 幸い自称ハイエルフ軍が優勢であり、次の戦場に向かう途中だった。斥候の情報では敵は待ち構えの姿勢であり、こちらに先制攻撃をしてくる可能性は低い。


 故に混乱が発生しても、それを落ちつかせるだけの時間があった。


 またルフルフがいない中で、地位の高いエルフたちが何人かで集まり、どうするかを話し合ったという。


 結果ルフルフの命令通り、エルフたちは軍を解散することにした。勝手に進軍して、後から問題になったら困るからである。


 またこの軍の中で一番の実力者であるルフルフがいなければ、尋常(じんじょう)ではない被害が出てしまう。


 更に言えば正直仕方がないとはいえ、同族のエルフを攻撃することに対して、忌避(きひ)感もあった。


 そういう理由から進軍続行を不可能だと判断したエルフたちは、行く場所を失ったこともあり、そのまま森へと戻ってきたのである。


 ちなみにその際に脱走兵が少し出たが、追う者はいなかったという。


 そんな話をエルフたちから聞いて、ユグドラシルはある確信をする。


 それはエリシャが自分と一つになる間際、念話のスキルでルフルフに、全てを伝えたのだろうということだった。


 詳しいやり取りの内容までは不明だが、ルフルフが全てを捨てて逃げ出すほどのものだったのだと、そう理解をする。


 だとすれば、ルフルフは既にこの大陸から脱出している可能性も高い。


 ユグドラシルはそれに対して、何とも言えない悲しみと、寂しさを感じた。


 おそらくルフルフは、もう戻ってくることはないだろう。それを、強く理解したのである。


 ユグドラシルにとって、これは由々しき事態だった。


 どうしてこうなったのかを考えると、エリシャを取り込みながら、ルフルフもすぐに一緒になるから安心してほしいと、芽生え始めた個で伝えたのが不味かったのかもしれない。


 もしかして、取り込んで一つの存在になることは、間違ったことなのだろうか?


 試しに幾人かのエルフやフェアリーに尋ねてみると、取り込まれると勘違いをしたのか、真っ青な顔をして許しを乞うてきた。


「こんなに幸せになれるのに、ダメなことだったのね……」


 そしてこのとき初めて、植物系モンスターである自身と人族の価値観が、根本的に違うことをユグドラシルは知ったのであった。


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― 新着の感想 ―
あ、割とすぐ取り込むのだめだと気付いたんだ、意外
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