403 新たな旅立ち
さて、行く場所については、実のところ既に決めている。だけどその前に、連れていく配下たちを厳選しようと思う。
何体かはこの大陸に残ってもらい、色々と頑張ってもらうつもりだ。
少しかわいそうにも思えるが、定期的にこの大陸には戻ってくるつもりである。そのときに、メンバーを入れ替えるつもりだった。
なのでまずは、復興の役立っているルルリアとアロマは置いていく。あとは女王たちに譲渡したアサシンクロウたちを鍛えるのに、アンクも置いていこう。
またドヴォールとザグール、それとエンヴァーグに集団戦などの運用方法を教えてもらうため、ルトナイもそこに加える。
あとは個人的な技術面の修行のために、ホブンとジョンも置いていく。
それとトーンも、樹液果実生成があるために置いていくことにした。実のところ樹液果実生成は一般的な果実であれば、取り込むことで生成可能になったのである。
なのでまだ食料自給率に難があり、果物が貴重のようなので、トーンにはしばらく頑張ってもらいたい。
アロマやルルリアの協力があれば、大規模果樹園もそのうち作れることだろう。
ちなみに当然だが、ユグドラシルの果実は生成することはできないようだ。取り込ませる前に、トーンから無理だと教えられた。本能的に無理だとわかったらしい。
そして最後に何があっても大丈夫なように、ゲヘナデモクレスも残しておこう。それにゲヘナデモクレスと旅をすれば、いろんな意味で問題しか起きないような気がした。
そうして連れていくネームドは、レフ、リーフェ、グライス、サンの四体となってしまう。けど戦力としては、十分なほどだった。
加えてネームド以外の配下も大量にいるし、何よりもしもの際には、残してきた配下をカードに戻すことで呼び出すことも可能だ。
またネームド以外の配下についても、いくつか残していくことにした。その内容は、以下の通りである。
・スケルトン 1,000体
・ハイスケルトン 100体
・スケルトンアーチャー 500体
・スケルトンソードマン 500体
・スケルトンソーサラー 500体
・スケルトンナイト 89体
・ガシャドクロ 10体
・ボーンリザード 99体
・アーマーゾンビ 100体
・ロットキャリア 127体
・キャリアンイーター 1体
主に復興のためと、ルトナイの指揮練習のためといった感じだ。
そうして残留組となったネームドたちにそれを話したのだが、当然のように荒れた。説得をするのに、更に一ヶ月が過ぎたほどである。
特にゲヘナデモクレスの説得には、かなり苦労した。最終的には、神授スキルでいつでも様子を見ていても構わないと言って、納得してもらった感じである。
またこれまで神授スキルで監視していたことや、色々な問題の原因になったことについても、不問にすることになった。
あれだけ不満ばかりだったのに、最後はなぜか嬉しそうだったのが印象的である。もしかしたら、最初からこれが狙いだったのかもしれない。
もちろん他のネームドたちについても、納得させるために色々と頑張った。個が芽生えすぎているのも、考えものである。
そして残していく配下たちの配置場所や調整、別れの挨拶などで、また一ヶ月が経過した。
正直ここまで苦労するなら、全員連れていくべきだったかと、今更ながら後悔もしている。
だがこの大陸の復興も手伝いたかったし、何より心機一転新たな冒険がしたかった。
なので実のところ、レフだけを連れて旅に出ることも少しは考えていたほどである。
また俺の脳内には、『新シリーズ』『電気ネズミ』という謎のフレーズがよぎっていた。
全く関係ないはずだが、新しい旅は出来る限り、ゼロからスタートしたかったのである。そう思ったら、何故か脳内に浮かんできたのだ。まあ、これについては気にしないことにしよう。
それに旅に出るとしても、流石にゼロからのスタートはダメだった。なので連れていくメンバーと、残留組に分けたのである。
結果として色々あったが、こうして無事に調整が済んだので、旅に出る日はもうすぐという感じだ。
そして俺がこれから旅に出る先だが、召喚転移を駆使して、最初の大陸に行こうと思う。
懐かしのベックたちに譲渡したカードを意識すれば、おそらく行けるはずだ。
そういう訳でやるべきことも、既にだいたい済ませた。なので流石にもうそろそろ、旅立つべきだろう。
結果として俺が旅に出れるようになった時には、目覚めてからおよそ半年の月日が流れていたのである。あまりにもこの場所は、居心地が良すぎた。
そして旅立ちの日、城の広間に俺はやってくる。俺の見送りには、多くの仲間たちが集まっていた。
「ジン君、行ってらっしゃい。いつでも好きな時に、戻ってきていいからね」
「ジン様、行ってらっしゃいませ。母が恋しいような気持になったら、いつでも私が見てあげますので、是非お気軽に戻ってきてくださいませ」
「ジン殿! 本当に世話になった! 後のことは儂にまかせてくれ! 何があっても、女王様たちを守り通そうぞ!」
女王、シャーリー、エンヴァーグがそう声をかけてくれる。
「ジン君、僕は出会った時と違ってクモドクロになっちゃったけど、変わらずジン君とは友達だからね! 困ったときは、いつでも頼ってね!」
「ジン君、ジンジフレ教のことは任せてください。また現地の宗派が誕生していたら、お願いしますね」
「ジンさん! ワーシ、もっと強くなる! それと、ワーシのことはパパと呼んでもいいからな! 父が恋しいきもちになったら、いつでも来てくれよな!」
ヴラシュ、アルハイド、ギルンが続けてそう言った。
ちなみにギルンはシャーリーを本気で狙い始めているのか、こうして度々俺の父親的ポジションに収まろうとしている。かなり頭の痛い問題だ。
またそれに加えて、シャーリーもあの事件の発覚当初は俺と距離を取っていたが、ある日吹っ切れたのか、俺の母親を自称し始めるようになった。これもかなり頭が痛い問題である。
だがこの半年の間に、それについてはもう諦めていた。色んな意味で覚悟が決まっている者は、もう止められないのだ。
「ジン殿! 我々は、変わらず門を守り続けますゆえ、ご心配なさらずに! なあザグールよ!」
「その通りだドヴォールよ! そしてルトナイのことは任せてくだされ。我々が、しっかりと面倒を見よう!」
「ジンさん、息子のギルンがご迷惑をおかけしてすみません。あれはもう、矯正できそうにはないです」
「ふふふ。私のことは、おばあちゃんと呼んでくれてもいいのよ。いえ、おばあちゃんは嫌ね。私のことは、ナーちゃんって呼んでほしいわ」
するとドヴォールとザグール、そしてギーギルとナンナがそう口にする。
ギーギルはカード化して譲渡した元配下なので、老けることはない。けれども心労的な問題なのか、出会った当初よりもやつれていた。
加えてナンナに至ってはギルンの恋を応援しているらしく、その関係で今では俺の祖母を自称している。
色々と頭の痛い問題が重なって、もう頭が痛いどころか、はじけ飛びそうな勢いだった。もうこれらについては、深く考えることは止めよう。
ちなみに残していく配下たちについては、この場所には現在いない。いたら面倒になることは、目に見えているからだ。
それに繋がりを通して、いつでも会話は可能である。今も色々と言ってきているが、一度に聞き取るのは面倒なので、スルーしていた。
また使徒のスキルによるネットワークができてからは、ネームドたちで頻繁にやり取りをしているらしい。
その使徒ネットワークについて俺が覗くことも可能だが、あえて介入はしないことにした。配下たちだけによる、そうした空間は必要だと思ったからである。
「みんな世話になった。それじゃあ行ってくる」
「にゃんにゃにゃん!」
そうしてレフを横に連れて、俺は新しい旅へと出る。大量の魔力を消費して、これまで不可能だった、大陸間の召喚転移を可能にした。
さて、あのとき出会った者たちは、果たしてどのように変わっているのだろうか。
俺は様々な人との再会を思い浮かべながら、初めてこの世界に降り立った大陸へと、そうして転移するのだった。
これにて、第十一章は完結です。またある意味、『第一部完!』という感じでしょうか。
正直これで、完結してもいいくらいかもしれません。しかし、まだもう少しだけ続くと思われます。
何事も無ければ、私がある程度満足するまで続くことでしょう。いや、正直かなりお腹いっぱい感はありますけどね。(笑) なのでここからは、別腹という感じでしょうか。
そして次章からは、いよいよ旅を再開します。最初の大陸です。懐かしのあのキャラとも、再会できるかも?
あと色々話すと長くなるので、今回も活動報告にまとめておきます。気になる方はどうぞ。
また今回も、一週間ほどお休みをいただきます。その間は、本編400話突破と第一部完結を記念して、SSをアップしようと思います。
内容は毎度おなじみの、カクヨムでサポーター様用に書いていたSSになりますね。
そして次章の連載再開時にですが、同時に久しぶりに【新連載】も始めようと思いますので、よろしければそちらもよろしくお願いします。
ちなみに新作は、現代ファンタジー+デスゲームものです。その中で主人公が、クリーチャー側になっていくかもしれない物語です。お楽しみに!
そういう訳で引き続き、『モンカド』をよろしくお願いいたします。
乃神レンガ