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401 女王からの報酬 ②


 そうして女王が次にくれたのは、手のひらサイズで緑色の壺だった。


 これも二重取りで増えたので、鑑定をしてみる。



 名称:魔力貯蔵の壺

 説明

 ・込めた魔力を貯蔵し、魔力を使用する際に取り出すことができる。その場合、本来よりも発動が遅くなる。



 なるほど。これは便利だ。おそらく俺が旅に出ることを意識して、これを用意してくれたのだろう。


 また召喚転移についても、眠っている間に配下の誰かが教えたのかもしれない。確かに大陸を越えた転移について、以前はどうしようかと考えていたからな。


 しかし今では多くの成長を()げ、特大魔回節(まかいせつ)まで習得している。なので実のところ、大陸を越えた召喚転移は既に問題ではないのだ。


 加えて神力も併用すれば、間違いなく大陸を越えた召喚転移は可能だろう。


 けれどもこうして、俺のために用意してくれたのは事実である。なのでこの壺は、ありがたく貰っておくことにした。


 また希少なアイテムのような気がするので、これは増えた二つ目も真の効果で返還せずに、手元に残しておくことにしよう。いつか、役に立つ日がくるかもしれない。


 そうして壺を受け取った後は、他にも旅で役立ちそうな物を、色々と報酬として用意してくれていた。


 それらを受け取り、いくつかは一つで十分なので返還していく。まだ旅の準備は途中だったので、これはありがたい。 


 ちなみにパンドラソードのように増えても、統合されることはなかった。


 どうやらあれは装備品限定のようであり、また統合の必要はないと先に意識することで、統合自体をキャンセルすることもできたらしい。超直感を通じて、金目と銀目が教えてくれた。


 加えてあのとき魔神剣の元になった魔剣を統合したのは俺の神授スキルの拡張効果だが、二重取りがあのとき発動したこと自体には、別の理由があるらしい。


 それについては、ゲヘナデモクレスの神授スキルが関係しているようだ。何かしらの拡張効果が、発動したかもしれないとのこと。ゲヘナデモクレスの拡張効果については、金目と銀目は知らないようだ。


 これはゲヘナデモクレスの神授スキルにも、また別の存在が宿っているからだろう。


 今のところゲヘナデモクレスは、そうしたことについて何も言っていない。たぶんそれが表に出てくるのは、ゲヘナデモクレスの所持している神授スキルが、真の効果に目覚めたときだろう。


 とりあえずあのとき魔神剣に統合された理由については、今更ながら知ることができた。


 そんなことを思いながら、俺は報酬へと意識を戻す。


 また女王は報酬として、他にもいくつものスキルオーブを渡してくれた。


 どれも新しくできたダンジョンから、手に入ったものらしい。


 スキル関連は大量のポイントで強化したばかりなので、これらのスキルオーブは取っておくことにする。


 ちなみに以前お願いした縮小については、だいぶ前に渡されており、既に使用済みだったので問題ない。

 

 それともちろん、俺の所持している方を優先して使用している。そうして縮小が必要な配下には、十分配ることができた。


 しかし女王には今後も必要になると思われたのか、この渡されたスキルオーブの中にも、縮小のスキルオーブがいくつか存在していたのである。


 何となくランクが高くなると、巨大なモンスターも増える傾向がある気がするので、正直これはありがたい。


 そうして最後に女王がくれたのは、こんなものだった。



 名称:葡萄酒(ぶどうしゅ)の無限大杯

 効果

 ・魔力を込めることで、無限にワインを生成する。使用者の魔力の質が高いほど、ワインは美味になる。



 それは黄金色の杯であり、美術館に置いてあるような雰囲気を醸し出すゴブレットである。


 大きさとしては、両手で抱えるくらいには大きい。なんだか、優勝した気分になるような感じがした。


 またどうやらこの大杯は、赤い煙戦で唯一残った国宝らしい。


 ちなみに唯一残った国宝だったので、エンヴァーグは報酬として渡すことに反対したようだ。


 用意に時間がかかったうちの一つが、エンヴァーグの説得だったのだろう。


 それとエンヴァーグは別に報酬を渋ったり、俺を軽く見ているという訳ではない。


 国のことを想い、誰か一人は反対する必要があったのだろう。俺への感謝とは別に、客観的な視点を持つことも大事である。


 女王たちは俺に感謝するあまり、可能な限り全てを差し出す勢いだった。それは俺としても、遠慮したい。


 赤い煙を倒したことによる感謝の表れかもしれないが、あの勝利は俺一人で為したことでは無かった。


 直接の戦闘は俺がしたが、それ以外の面で女王たちも戦っていたのだ。故にこれについては、チームとしての勝利という印象が強かったのである。


 それに赤い煙を倒すことは、俺にとっても重要なことだった。また赤い煙を倒したことによる恩恵は、既に十分得ているのである。


 なので正直なところ、女王からの報酬は擬剣パンドラソードだけでも満足していた。


 そうしたこともあり、俺は二重取りで増えた方の大杯を女王に差し出す。この状況で返すというのは色んな意味で問題なので、貸し出すという形にした。


 エンヴァーグはそれに感動して、仕切りに俺へとお礼を言う。どうやらこの大杯は、国の歴史的に大変価値のあるものだったようだ。


 既に他の国宝が赤い煙戦で失われている以上、その価値は計り知れない。あの戦いで、他はダンジョンポイントに変換してしまったのだ。


 それにダンジョンポイントが必要だったのは、誰も口にはしなかったものの、何となく理解してしまう。


 おそらくだが、俺の維持コストが爆増したことと、関係がありそうなのである。


 赤い煙戦では、何度も俺は強くなった。それよって追加コストが必要になり、女王はそれを捻出するために、国宝を犠牲にした可能性がある。


 だとしたら逆に、かなり悪い気がしてしまう。不可抗力だったとはいえ、歴史的に価値のある物を失わせてしまったのは、心が痛い。


 これは旅に出たときに、何か必要のない価値のある物を手に入れたら、女王に理由をつけて渡すことにしよう。


 そうして物品の報酬は終わったが、女王はこれにまだ満足をしていなかった。


 大陸を救ってくれたのに、この程度しか用意できなくて申し訳ないと口にする。


 なのでこの国は未来永劫、俺の力になることを定めたらしい。歴史書にも、そう記載するとのこと。


 またジンジフレ教を国教にしたことに加えて、布教活動も活発的に行い続けるようだ。


 更には何かあれば、即座に軍を編成するらしい。加えて俺が何か必要になれば、その都度可能な限り用意するとのこと。


 なんだか、とても内容が重い。まるで俺を信仰しているように思えるが、不思議なことに女王はこれでもまだ、俺の信者ではないのだ。


 見ればシャーリーとアルハイドはニコニコしており、エンヴァーグは何度も頷いている。そしてヴラシュは、なぜか震えていた。


 とりあえずは、今後も助けてくれるという感じだろう。必要があれば、そのときに頼むことにした。


 またこの国はある意味、俺の帰る場所みたいな感じだ。なので何かあれば、俺も迷わずに助けるつもりでいる。


 女王の言った内容が重かったのは、一旦気にしないことにしよう。


 そうしてこれまでの活躍による報酬を受け取ったわけだが、そのときアルハイドが俺に大量の物を渡してきた。


 これは報酬とかではなく、ジンジフレ教に関する様々な物である。特に信者ということを示す、あのネックレスなどが多い。


 どうやら旅に出るなら、絶対に必要になると思ったようだ。俺(みずか)ら率先して信者を増やす気はあまりないが、気がついたら増えているということもあるだろう。


 そうした時に放置しておくと、同じジンジフレ教なのに、まるで別の宗教のようになってしまう可能性があるらしい。


 最悪の場合同じジンジフレ教で、解釈の違いから戦争になるかもしれないようだ。それは俺としても困るので、素直に受け取っておく。


 また間違ったジンジフレ教ができているようだったら、可能な限り正してほしいようだ。


 とても面倒だが俺が神の宗教なので、これについては仕方がない。無駄に宗派が増えるのも困るので、そのときは正していこうと思う。


 ちなみにだが、そのあと葡萄酒(ぶどうしゅ)の無限大杯で、試しにワインを生成してみた。


 このメンバーで飲めるのは俺とレフ、そしてアルハイドだけである。


 他はアンデッドであり、ヴラシュもクモドクロの体なので飲めない感じだ。


 一度に作れる量は調整できるみたいなので、軽く試飲する程度であり、小さな杯を別に用意してもらって飲んでみた。


 飲んだ感想はチープな表現になってしまうが、表現するなら、こんな感じだろう。


 凝縮感のある濃厚さとほどよい酸味、他にもまろやかな渋みが恐ろしいくらいに調和が取れており、大変美味である。


 旅の途中でエールとかを飲む機会があったが、あれはドブだったかもしれない。そんな印象を思わず受けてしまう。


「にゃ~!!」


 レフにも少し分けてやると、旨かったのか嬉しそうに鳴いた。


 そしてアルハイドというと、両目をつぶって静かに涙を流していたのである。


 少々それに引いていると、飲めない女王たちも羨ましそうにしていた。


「こういうとき、アンデッドだと不便よね。余裕が出来たら、味覚だけでも再現できないか頑張ってみようかしら」

「くぅ、遥か昔に飲んだワインを思うと、儂も非常にその味が気になりますぞ」

「酒類をあまり飲んでいなかった私でも、見ていたら思わず飲みたくなってしまいますね」

「いいなぁ。僕もこの体でなければ、飲みたかったよ」


 女王、エンヴァーグ、シャーリー、ヴラシュという順番で、それぞれワインへの想いを口にする。


 それくらい、俺たちが旨そうに飲んだように見えたのだろう。実際このワインは、すごく旨かった。


「これは、神の血ですね。ジンジフレ教の教典にも記載しておきましょう。ワインは神の血であり、ジンジフレ様は、天にも昇るような至高のワインを生み出せると」


 ワインに感動したアルハイドが、そう言って新たに涙を流し始める。


 どうやらジンジフレ教にとって、ワインは重要なものになったみたいだ。ならついでに、カニも付け加えてもらおう。


 そうして俺はアルハイドにカニの素晴らしさを教え、カニもジンジフレ教にとって、重要なものになった。


 ただこの大陸では今のところ残念だが、カニ系モンスターはいないらしい。


 なのでいずれは、野生のカニ系モンスターが生息している大陸から直接連れてきて、カニ系モンスターを養殖するとのこと。これは実に、楽しみである。


 なんだか久しぶりに、マッドクラブが食べたくなってきた。もう残りは少ないが、せっかくだしカニも振る舞おう。俺はカニを布教する。


 そうして無事に報酬についても終わり、俺はアルハイドにカニを振るまった。


 当初はその見た目に少し引いていたが、実際に食べるとそれも気にしなくなる。アルハイドも、カニの旨さを気に入ったみたいだ。


 また最初は後で飲食できるメンバーだけで堪能しようと思っていたのだが、他の面々もカニが気になったのか見学をしている。


 結果として飲食ができない面々はその見学によって、いずれは味覚を取り戻したいと、ますます思うようになるのだった。



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