397 加護の付与について
さて、無事に大量のポイントをだいぶ使うことができたし、他にやることがあっただろうか?
俺は神授石、配下の進化、ポイントの使用の三つを行った訳だが、他に何かやっていなかった事が無いかと、思考を巡らせる。
そういえば俺の加護を、信者ではないレフに与えられるのか、試してみようと思っていたな。
ジンジフレ大聖堂にて、アルハイドたちに付与できた俺の加護。あれは、かなり有用だった。
ただ加護を与えられる神域の存在+の称号では、対象は信者となっている。
なのでダメもとであるが、俺はレフに対して加護を与えてみようと試みた。
そう思いつつ、俺は加護を与えたときを意識しながら、レフにも同じように付与してみる。
「にゃ?」
すると俺の体から大量の神力が消費されたかと思えば、レフに変化が訪れた。
「おお、もしかして付与できた感じか?」
「にゃぁ!」
どうやら、成功したらしい。ただ尋常じゃない量の神力が、消費されてしまった感じである。
これは安易に、信者以外に加護を与えるのは難しいな。まさか、通常の三十倍近くもっていかれるとは……。
神力は信者などのおかげで回復するとはいえ、この量は流石に厳しかった。
なので一度に全員は無理だが、少しずつ配下のネームドたちにも加護を配っていくことにしよう。
俺がそう思っていると、アロマも声を上げた。
「きゅぃ! きゅぃ!」
どうやら、アロマも加護が欲しいようである。
ここでお預けはかわいそうだし、神力は一応かなり蓄えられている。仕方ない。加護をやることにしよう。
この五年の間に、神力は俺の蓄えられる上限まで溜まっていた。なので、そこそこに余裕はある。
そうして俺は、アロマにも加護を与えた。しかしどういう訳か、アロマの場合消費神力が十倍程度で済んでしまう。
ん? この違いはなんだ?
「きゅいっ!」
俺が疑問に思っている間にも、アロマは加護をもらったことに喜んでいた。
とりあえず、レフとアロマの称号を見比べてみよう。
そう思いステータスを覗いてみると、称号には確かに【ジンジフレの加護】となっていた。しかしその横には、(使徒)と(眷属)という違いがあったのである。またその効果を確認したとき、明確な違いがあった。
名称:ジンジフレの加護(使徒)
効果
・選んだ属性適性と装備適性を一つずつ得る。
・一月に一日だけ、仕える神との融合をリスク無しで可能にする。
・この称号はカード召喚術の影響下にある者に対して、以下の効果を与える。
【自身の召喚維持コスト減少(大)】
【自身の復活コスト半減】
【自身の召喚中の強化(中)】
【スキル容量コスト減少(中)】
【スキル取得補正(中)】
名称:ジンジフレの加護(眷属)
効果
・選んだ属性適性と装備適性を一つずつ得る。
・この称号はカード召喚術の影響下にある者に対して、以下の効果を与える。
【自身の召喚維持コスト減少(中)】
【自身の復活コスト半減】
【自身の召喚中の強化(中)】
【スキル容量コスト減少(小)】
【スキル取得補正(小)】
まず根本的に普通の加護とは違い、レフには『使徒』、アロマには『眷属』としての加護を与えられたようだ。
レフとアロマのこの違いは、いったい何だろうか?
俺がそう思っていると、超直感を通じて金目と銀目が教えてくれる。
どうやらレフは『使徒』のスキルを所持しているため、称号に『使徒』が付いたらしい。
対してアロマは単純にカード召喚術による配下であるため、『眷属』になったようである。
そういえばレフには、そんなスキルがあったな。
名称:使徒
効果
・仕える神の神託をいかなる場所でも聞くことができる。
・仕える神からの神命を拒否できなくなる。
・神命を実行する時、あらゆる能力が増加する。
・使徒同士であらゆる情報を共有することができる。
このスキルは確か、エクストラである『アポストルスモンスター』の効果で取得していたはずだ。確か、こんな効果だったはず。
名称:アポストルスモンスター
効果
・仕える神の力が強大であるほど、生命力や魔力、身体能力などが上昇する。
・自身が信仰された場合、その信仰心は自身が仕える神へと捧げられる。
・仕える神との融合などに起因するデメリットが無くなる。
・あらゆる隷属状況下でも、自由行動を可能とする。
・知力を人と同等まで上昇させ、確固たる個を確立する。
・即死や呪い、他者からの支配に対して完全耐性を持つ。
・種族特性に【使徒】のスキルを得る。
・このカードは破棄できない。
そこで俺は、あることを思い出す。
このエクストラを得たのは、確かレフが進化する時に、神力を注いだからだよな? あの時は、そうした方が良いと思っていたのである。
だとしたら、失敗してしまった。今回の進化で、配下に神力を注ぐのを忘れてしまっていたのだ。
その事に対してやってしまったと思っていると、金目と銀目からこんなフォローが入ってくる。
聞けば今回神力を注いでいたら、配下のカードは消滅していた可能性があるという。本来神力は猛毒であり、適性の無い者へ与えるのは危険なことのようだった。
レフがあのとき神力に耐えられたのは、ノワールの残滓を受け継いでいたからだという。
そういえばレフは、文香の配下だった黒猫のノワールの影響を受けていた。
どうやらノワールの残滓も地球から移動した関係から、転移者ほどではないにしても、創造神の影響を受けていたらしい。
なので神力を受け入れるための耐性があり、その残滓を受け継いだレフにもそれが備わっていたようだ。
だとすれば、今回の配下を進化させるときに神力について忘れていなければ、そのときに直感で止めた方がいいと言われていたことだろう。
神力の上位互換である神滅属性のことを思えば、神力にもそうしたリスクがあることは当然だったかもしれない。
それに俺が簡単に神力を扱えたのは、それこそデミゴッドの種族があったからだろう。やはりデミゴッドの一番の利点は他の種族特性よりも、神属性関連にあったのだと思われる。
ちなみにノワールの影響を受けたレフが神力に耐えられるのなら、ゲヘナデモクレスもまた耐えられることになるだろう。
ゲヘナデモクレスは、地球で俺を殺した黒い鎧の影響を受けている。なのでその可能性は大いにあった。
実際金目と銀目からも、ゲヘナデモクレスなら大丈夫だと言っている。
またセイクリッドモンスターのエクストラを持つルルリアや、盗賊の極意の神授スキルを持つアンクも、神力を受け入れられる耐性があるらしい。
どうやら重要なことは、信仰や神に関連した何かを持っていることのようだ。
もちろんその程度が低ければ、そうした関連のものを持っていても、神力には耐えられないらしい。
なるほど。神力を受け入れるにも、そうした条件が必要だったのか。
であればルルリアとアンクも次の進化のときには、神力を注ごうと思う。ゲヘナデモクレスについては、そもそも進化をするのだろうか? 既に限界まで、ランクアップをしているような気がしてしまう。
いや待てよ、確かオーバーモンスターのエクストラには、『あらゆる進化方法が不可能になる』とあったはず。だとしたら、ゲヘナデモクレスが進化をすることはないだろう。
例外なのは俺との融合や、何かを吸収して強くなることくらいである。
まあ、ゲヘナデモクレスは進化で神力を注がなくとも、既に十分に強いからいいだろう。
それとルルリアとアンクも、Sランクモンスターだ。進化は、相当後になってしまうと思われる。
しかし強い配下にも、どうにかして加護を与える前に、神力を与えたい。上手くいば与える時に、加護の内容が(眷属)ではなく(使徒)になるはずだ。
そう思っていると、金目と銀目が創神力を使って、神授スキルを拡張してくれると伝えてくれた。
また時間をかけた方が良い物ができるらしいので、少し待ってほしいとのこと。
俺からしたらそれは朗報なので、当然待つことを選ぶ。
これまで神授スキルの隠し効果は、実のところ神授スキルに宿る存在が、創神力を使って行っていたのである。
また超直感にランクアップしたことで、金目と銀目とのやり取りがかなりスムーズになった。それにより俺の願いが、伝わりやすくなったのだろう。
しかしだとしても、創神力は大変貴重だ。神域の存在+の称号によって少しは生成できるようになったが、それは雀の涙にも満たない。
神授スキル自体からも創神力は生成されるらしいが、それも僅かとのこと。俺の場合は神授スキルが二つなのでそれだけ多くなるが、それでも少ないことには変わりない。
なので基本的には、節約して溜めることに専念をした方がいいだろう。ただ今回は今後にも影響することだし、このまま頼むことにした。
故に他の配下への加護についても、しばらく付与を待つことにする。
ちなみに既に付与したレフとアロマには、加護による属性適性と装備適性について、好きに選んでいいと言っておいた。
どちらも一つずつ、自由に得られるはずだ。神力に意識が向きがちだったが、普通にこれも凄いことである。
レフとアロマはじっくり考えてから、何にするのか選択をするらしい。属性適性や装備適性は数が多いので、悩むのは仕方がないだろう。
大いに悩んでくれて、構わない。旅にはいずれ出るつもりだが、もうしばらくはこの城に留まるつもりだ。時間はたっぷりある。
またそういえば神域の存在+には、『神属性スキル習得』というスキルが内包されていたことを思い出す。
さきほどスキルをランクアップさせたり統合したばかりなので、正直増やすかはまだ分からない。
だが一応確認しておく方が、今後のためにはなるだろう。
なので次はその『神属性スキル習得』というスキルについて、意識をし始めるのであった。