表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/469

044 ノブモ村での大会予選 ②

「ここに各ブロックを勝ち上がった者がそろった。これより選手の紹介を行う!」


 決勝トーナメントが始まり、俺は会場となる場所にやって来た。


 周囲には多くの人々がおり、視線が次々に向けられる。


 現在俺は、試合会場の中央にいた。


 職員の男が高らかに声を上げ、俺を含めた四人の紹介を始める。


「まずはAブロックを勝ち上がった男、29番のジブールだ! 彼の連れるオークにゴブリンなど、相手にはならないぞ!」


 まず初めに紹介されたのは、ジブールという冒険者の男。


 どうやらオークを使って勝ち進んだらしい。


「続いてBブロックを勝ち上がったのはこの美少年! 26番のジンだ! 彼はたった一匹のグレイウルフだけで勝利したサモナー! 果たして残りの二匹を見ることはできるのか?」


 美少年か。傍から言われると、何だかむず痒い。


「次にCブロックを勝ち上がったのはこの女性! 5番のアミーシャだ! 彼女はここでは珍しい状態異常攻撃を得意とするモンスターで勝利した! 上手く決まれば優勝も十分狙えるぞ!」


 俺の次に紹介されたのは、紫色の瞳と同色の髪を腰まで伸ばした、村人風の服を着た女性。

 

 年齢は二十歳前後であり、少女から女性に変わったばかりという印象だった。


 なるほど。状態異常を得意とするモンスターか、これはやっかいだな。


 下手をすると、負ける可能性もある。


 油断できない相手になるだろう。


「そして最後にDブロックを勝ち上がったのはこの男性! 17番のジョリッツだ! なんとジャイアントボアを使役していることに加えて、優勝候補のホブゴブリンを事前に倒してしまった強者だ!」


 それを聞いて、周囲の観客が盛り上がる。


 やはり一番の強敵は、この人物になるだろう。


 選手紹介の場にモンスターはいないが、その巨体はこの場からも見えている。


 どのような試合になるのか、今から楽しみだ。


「それでは選手の四人は、この棒を同時に引いてくれ! 同じ番号の相手と試合になる」


 そうして、棒の入った箱が用意された。


 俺と他三人はそれぞれ棒を手に取り、同時に抜く。


 ふむ。一番か。


 相手は……さっそくか。


「決勝トーナメント第一試合は26番のジン対17番のジョリッツだ! そして第二試合は29番のジブール対5番のアミーシャに決まった!」


 番号の書かれた棒を見て、職員が声を張り上げる。


 こうして俺の決勝トーナメント最初の相手は、ジャイアントボアを使役するジョリッツに決まった。


 そして試合はさっそく行われるようであり、俺は会場でジョリッツと向かい合う。


「よろしくお願いしますね。もちろん、勝たせてもらいますが」


 ジョリッツは優しそうな中年男性だ。腹が出ており、ジョリッツ自身は戦闘が不得意そうに見える。


「ああ、俺も負けるつもりはない」


 軽い会話を終えると、それぞれ会場の端へと移動した。


「ではまずは小手調べといきましょう。ブレロ、いきなさい」

「ぶひっ!」


 そう言ってジョリッツが最初に繰り出してきたのは、なんとオークである。


「レフ、行け」

「ウォン!」


 対して俺は、Bブロックと同じようにレフを召喚した。


 そして二匹のモンスターが場に出ると、審判役である職員の男性が声を上げる。


「両者とも準備はいいか? それでは、決勝トーナメント第一試合を開始する! 始め!」


 その開始の合図と共に、レフが駆けた。


 瞬く間にオークに接近すると、背後を取る。


「ぶひ!?」


 相手のオークは振り返り棍棒を振るうが、既にレフはいない。


「ヴァウ!」

「ぶぎゃ!?」


 気が付けば、既にレフがその左足に噛みついていた。


 オークは確かに腕力もあるし、耐久力も優れている。


 だが、圧倒的に速度が不足していた。


「な、何をしているのですか! 後ろですよ!」


 ジョリッツが慌てて命令を下すが、オークはレフを捕らえきれない。


 ふむ。どうやらジョリッツは、命令を出すのがそこまで上手くはないみたいだ。

 

 ジョリッツ自身も戦闘が得意じゃなさそうに見えるし、もしかしてモンスターを買ったのだろうか?


 服装も普通の村人より質がよさそうだし、十分にあり得る。


 おそらくこの村に来たのは、全体的にモンスターの弱い予選に出て優勝するためだろう。


 確かにオーク一匹でも、決勝トーナメントには十分勝ち上がれる。


 だがそれでも、ここで俺と戦うことになったのが運の尽きだ。


「ぶひぃ!?」

「ブ、ブレロ……」


 結局オークはレフに(なぶ)られ続け、出血により動けなくなる。


「オークは戦闘の続行が不可能だと判断する!」

「くっ」


 そして審判役である職員の判断により、オークの敗北が告げられた。


 すると同時に、観客席から歓声が鳴り響く。


「すげえ!!」

「何だよあれ!」

「おい、あいついつ命令していたんだ?」

「凄すぎだろ!」


 そうしている間に、オークはポーションで回復して下がっていった。


「ま、まだ負けていません。もう一匹オークがいます。しかしこれで出しても結果は同じでしょう。なので早いですが、この子に出てもらいます。行きなさい! ボアザード!」

「ブヒイイ!!」


 するとジョリッツは、大将であるジャイアントボアを先に出してきた。


 まあ当然か。二匹目のオークが出てきても、結果は同じだろう。


 判断力はあるようだ。


 しかし、これは不味いな。


「ワウン!」

「ブギ?」


 何とか回り込んで噛みついても、レフの攻撃が全く通らない。


 ジャイアントボアの皮膚は、それほどに硬かった。


「ブギィ!」

「ギャウ!」


 だが会場という広さ制限があるからか、ジャイアントボアも突進をそこまで活かせないようだ。


 観客の中にはジャイアントボアが突っ込んでくるかもと思い、席を立っている者もいる。


 これはダメだな。攻撃は単純で避けやすいが、ダメージが全然通らない。


 流石に試合で目を狙うことはできないし、体力勝負ではレフが不利だろう。


 なら、仕方がない。


「レフの敗北を宣言する」

「ジン選手の宣言により、グレイウルフを負けとする」


 それを聞いて、ジョリッツが安堵の表情を浮かべた。


 対してレフは尻尾を股の下へと挟み、恐る恐る戻ってくる


「くぅん」

「あれは仕方がない。気にするな」

「ワゥン」


 そう言って俺はレフの頭を撫でると、召喚を解いた。


 さて、どうしたものか。


 中堅はオークにしていたが、おそらく勝つのは無理だろう。


 たとえ攻撃が通ったとしても、逆に避けることができない。


 噂通り、ジャイアントボアに()かれたオークになってしまう。


 それなら、こちらも大将を出すしかないか。


「いでよ、ホブン」

「ゴッブ!!」


 俺はそう判断して、ホブゴブリンのホブンを繰り出した。


「おや、ホブゴブリンですか? それなら先日倒しましたねぇ」


 ジョリッツはホブンを見て、既に勝った気のようだ。


 だが、その油断が命取りだぞ?


 俺のホブンが普通のホブゴブリンではないことを、今見せてやろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ