390 城での進化 ③
そういう訳で俺は次に、サンのカードを取り出す。事前に決めていた通り、融合素材となるのは、Cランクモンスターのボーンリザードだ。
巨大な爬虫類系のスケルトンであり、同じスケルトン系のサンとは相性が良いはずである。
おそらく大丈夫だと思われるが、悲しきモンスターにならないことを願う。
そうして俺は、フュージョンを実行した。ボーンリザードのカードを取り出して、重ねる。
すると先に、スキルの引継ぎを求められた。サンは二回目の進化なので、スキルを二つ引き継ぐことが可能である。
またこれは、素材となるボーンリザードからも選択が可能だった。
なのでここは無難に、サンの【陽光再生】と【闇光属性適性】を残しておく。特に光属性適性は、消えてほしくはなかった。
前回はスケルトン、今回はボーンリザードなので、光属性適性が失われるかもしれない。
そういう訳引き継ぐスキルも選択できたので、進化を続けて行う。結果としてサンのカードが光り、新たな姿を現した。
種族:サン・ドラゴンスパルトイ・ウィンドソードマン(サン)
種族特性
【風竜牙兵】【陽光師】
【剣適性】【スラッシュ】【連撃】
【サークルスラッシュ】【飛行】
【生命探知】【技量上昇(小)】
エクストラ
【フュージョンモンスター】
サンはサン・デビルズサーヴァントから、新たにサン・ドラゴンスパルトイ・ウィンドソードマンに進化したみたいである。
種族名が、かなり長い。明らかにこれは、良い意味で普通のモンスターではないだろう。何となく、唯一無二の種族のような気がした。
またカードから分かる容姿を簡単に説明すると、二足歩行の人型ドラゴンスケルトンである。竜人のスケルトンとも、表現できるかもしれない。
ちなみに全体的に色は純白であり、骨の白さというよりも、聖なる白さという感じがする。
それと背中には骨の翼が生えており、尻尾も当然存在していた。頭部には、二本の角もある。また手には、両手剣を持っていた。
これには緑斬のウィンドソードの面影はないので、おそらく種族固有の武器だろう。
緑斬のウィンドソードが消えてしまったことは残念だが、代わりに吸収されて、他に活かされていると思われる。
それについての確認も兼ねて、気になったスキルの効果を確かめてみた。
名称:風竜牙兵
効果
・このスキルには以下の効果が内包される。
【風闇属性適性】【風闇属性耐性(小)】
【シャドーネイル】【ウィンドカッター】
【爪強化(小)】【顎強化(小)】
【身体能力上昇(中)】【物理耐性(小)】
【威圧】
名称:陽光師
効果
・日照時に自身の基礎能力を上昇する。
・日照時に光属性の効果を増加させる。
・日照時に消費魔力が減少する。
・このスキルには以下の効果が内包される。
【光属性適性】【光属性耐性(小)】
【陽光再生】【ライトアロー】
【ライトバリア】【ライトレーザー】
【魔法制御】【魔力上昇(小)】
思っていた以上に、内包されているスキルが多い。この二つのスキルで、サンは三属性持ちになったようだ。
また緑斬のウィンドソードの風属性は、風竜牙兵に吸収されたようである。
風竜牙兵自体に特殊な効果は無いが、十分優秀なスキルと言えるだろう。
そして陽光師であるが、これは引き継いだ二つのスキルが関係しているのは明らかだった。
どうやら引き継いだスキルは、こうして変化することもあるみたいだ。結果として良い方向に変化しているので、問題は無さそうである。
それと相変わらず、サンはスケルトン系にもかかわらず、夜ではなく朝に強さを発揮するタイプのようだ。
特に気になるのは、『日照時に消費魔力が減少する』という部分である。属性指定などがないので、おそらく全ての魔力消費に影響するのだろう。だとすれば、かなり有用かもしれない。
加えて光属性の攻撃魔法では、強力なライトレーザーも備わっている。
これまで何度も敵側が使っていて、強いと思っていたスキルだった。ライトレーザーは、威力と速度が優れている。きっとサンにとっても、役に立つことは間違いないだろう。
またこの二つのスキル以外でも、サンは念願の剣適性を手に入れている。こちらも、緑斬のウィンドソードが影響しているのかもしれない。
それも合わせて全体的に見ると、サンは多彩な空飛ぶ魔法剣士という感じだろうか。
ランクとしては、おそらくAに近いBランクモンスターだと思われる。強いことは確かだろう。
とりあえず能力の確認はできたし、早速召喚してみることにした。
「サン、出てこい」
「ギギッ!」
そうして召喚したサンは、180cmほどの大きさだった。鳴き声も、少し低くなっている。
どうやらサンはルトナイとは違い、喋られないようだった。同じスケルトン系でも、そうした違いがあるらしい。
うむ。しなやかな骨格と、鋭い迫力があるな。博物館に飾ってあったら、連日行列になりそうな感じだ。
白亜色の骨格は、とても美しく見えた。
何となく触れてみると、少しひんやりとしており、また触り心地も素晴らしい。
「ギッ……」
「ん? ああ、くすぐったいのか」
どうやら骨なのにもかかわらず、高ランクモンスターであるからか、触れられた感覚がとてもあるようだった。
なるほど。こうした感覚にも優れているようだな。アンデッド系はどうしてもそうした部分が鈍いが、サンの場合はそうではないらしい。
俺は撫でていた手を離すと、同時にそんな事を思った。
それじゃあ次は、サンがどれくらい強くなったのか確かめてみるか。
俺はそう判断を下すと、次に訓練場にあった無数の丸太の前へと移動する。使っていいのかメイドのルイーザに訊くと、問題ないと返ってきたので、サンの試し斬りに使わせてもらうことにした。
「サン、この丸太で試し斬りをしてみてくれ」
「ギギ!」
そう命じると、サンは持っていた両手剣を振るい、丸太を容易に両断してしまう。見事な剣さばきだった。
また丸太は好きなだけ使っていいみたいなので、そのまま続けさせる。
次にサンはウィンドカッターを使い、丸太を両断してみせた。
ちなみに緑斬のウィンドソードを使っていたからか、サンは両手剣を振ってウィンドカッターを発動している。
それによる影響なのか、心なしかより速く、より鋭くなっている気がした。
他にも爪によるシャドーネイルや、ライトアロー。そしてライトレーザーを使い、次々に丸太を破壊していく。
更には背中にある骨の翼を羽ばたかせ、空を飛んで空中から魔法を放ってもみせた。
翼は骨であるものの、普通に飛べている。これはおそらく、スキルの飛行で飛んでいるのだろう。
またモンスターの中には飛行のスキルが無くても、何故か普通に飛んでいるモンスターもいるので、それは今更ではあるが。
そうしてサンは、その実力を俺に披露してくれた。一見その容姿は戦士系だが、魔法の威力も十分に優れている。
魔法剣士としては、かなりの完成度だった。空も飛べるし、陽光でパワーアップできて更には再生まで可能なので、単体戦闘能力はとても高い。
ちなみにもしルトナイと戦わせたら、おそらくサンが勝つと思われる。単体戦闘能力は、サンの方が高そうだった。
よってサンの進化は、大成功と言えるだろう。ボーンリザードとの相性は、やはりとても良かったようである。
そうしてサンの進化も無事に終わったので、俺はサンをカードへと戻す。
さて、いよいよ最後は、アロマの進化だな。アロマもフュージョンモンスターなので、どのような進化をするのかは未知数だ。
俺はアロマの進化についても、楽しみで仕方がなかった。