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376 ユメリカとレイスの出会い


 アルハイドの教えてくれた内容を大雑把にまとめると、こんな感じだった。


 まず勇者が敗れたという噂が、何故か勇者陣営の待機組の間で流れ始める。これは先にダンジョン側が、わざと流したとのこと。


 ちなみにそれを実行することになったのは、俺の信者になった人族らしい。


 だがこの噂も当初は空と大地の色が変わったことで、勇者が勝ったはずと信じて、噂を気にせずに待機組は待ち続けたようだ。

 

 しかしある日大量のアンデッドたちが、待機組のところにやって来る。またその群れの先端には、勇者についていった者たちが多くいた。


 そしてそれを率いていたのは、モブメッツと名乗る青年であり、勇者が敗れた事実を語ったのである。


 またこの時にアルハイドが魔王の器として操られており、城のダンジョンは魔王と敵対していただけということを待機組は知らされた。


 更に勇者は魔王に利用され、負けそうになれば仲間もろとも魔王によって殺されて、魔王にその力を利用されたことを知る。


 だがそれも最終的には、城のダンジョン側にいたジンジフレによって、魔王は見事に討たれ大陸に平和が訪れた。


 そして勇者陣営とは敵対していたのにもかかわらず、こうして城のダンジョン側が和平に来たことを伝えたのである。


 ここにいる者たちは全員、城のダンジョン側と和解した者たちだと、待機組は教えられた。


 そういう訳で勇者陣営の待機組に残された道は、三つ提示されることになる。


 まず一つ目は、これから復興する城のダンジョンで暮らすこと。二つ目は、元の大陸におとなしく帰ること。そして三つ目は、それでも城のダンジョン側と戦うことである。


 当然ここまで聞いた内容を信じなかったり、三つ目の戦うを最初から選ぼうとした者もいたが、同行していたゲヘナデモクレスが山を消し飛ばしたことで、それもおとなしくなった。


 残された戦力では、どう考えても勝てないことは歴然だったからである。それでも何人かの馬鹿は特攻したが、一瞬で消されたらしい。


 ちなみにゲヘナデモクレスも魔王に操られたという設定であり、ジンジフレに救われてこのとき改心していたことになっている。


 そうして待機組は選択を考える時間を与えられ、残っていた地位の高い者たちの間で、大いに考えがもめた。


 しかし期限を過ぎても回答が無い場合、残る者は敵とみなされ、ゲヘナデモクレスがやって来ることが告げられてしまう。


 それは大変恐ろしいことだと理解していたからか、最終的にはそれぞれの派閥で自由に決めることになったようだ。


 だがあれだけ決まらなかったにもかかわらず、結局は大半が帰ることを選択する。また城のダンジョンで暮らすことを選択した者も、僅かながらにいた。その中に、ユメリカという少女もいたのである。


 色々と城のダンジョン側も暗躍(あんやく)したみたいだが、比較的穏便に勇者陣営を解散させることができたみたいだ。


 そうして帰る際にはこちら側から護衛という名の監視を出し、問題なく国境門の先へと送り返したとのこと。


 また城のダンジョンで暮らす者も、一見スパイに思えるかもしれないが、この世界には国境門がある。


 一度閉まれば、同じ大陸に繋がることは困難を極めるのだ。なので故郷を捨てるような覚悟が無ければ、残ることはできない。


 もちろん城のダンジョンで暮らそうとする者の中には、問題のある者もいるだろう。


 しかしこれは当時、無理やり集めるほどではないが、できれば人型種族を増やしたいという、ダンジョン側の思惑があったからである。


 先ほどの女王たちとの話し合いで、俺はこのダンジョンについても聞いていた。


 確かダンジョンを大きく作り変える上で、これまでのダンジョンとは一新したらしい。なんでも普通のダンジョンの側面も維持しつつ、人型種族が暮らしていけるダンジョンを目指したようだ。


 そのために当時は、暮らしている人型種族から安全に魔力などを徴収するシステムの構築をしていたとのこと。


 侵入者という定義から完全に切り離すには、色々と難しい課題が多かったみたいだ。


 一時的な中立勢力化したり、ダンジョンから自分の力で脱出したと判定することも可能だが、それは今後の事を考えれば健全ではなかった。


 またそうした裏技や変更手続きをし続けると、予期せぬ問題の原因になる可能性があったのである。


 だが当然新たなシステムを導入するのは試行錯誤であり、サンプルが多いことに越したことはない。また正式に適用する前に、テスト段階の状態を何度か先に試す必要もあった。


 つまりそうした試みには、問題を起こす者が必要だったのである。善良な市民で、試す訳にはいかなかったのだ。


 結果として問題のある者は姿を消し、代わりにダンジョンシステムが最適化されるという、一石二鳥という訳である。


 そして話を少し戻すが、そんなダンジョンで住むことになった者の中に、ユメリカという少女がいたのである。

 

 またここまでの流れでユメリカがなぜ城のダンジョンにやって来たかというと、噓を見抜くスキルが魔王に効かなかったことを糾弾(きゅうだん)されたからだ。


 ユメリカが魔王の嘘を見抜いてその正体を暴いていたら、勇者が勝ったはずだと一定数の者は思ったようである。


 なので負けた八つ当たりとして、目をつけられたのだった。


 加えて元々ユメリカは、十歳の時に授けられたスキルが噓を見抜くスキルであったために、その有用性から両親に売られたのである。


 奉公という名の奴隷として、ある貴族の元に送られたらしい。そこでスキルを使って働いていたのだが、ある日勇者の話を聞いた貴族が、より権力を手に入れるために、ユメリカを息子とその手勢と共に派遣したのだ。


 そうして紆余曲折(うよきょくせつ)あって勇者と出会い、勇者陣営を築く上で重宝されたのである。


 貴族の息子も、それを鼻にかけて周囲ではやりたい放題していたようだ。ちなみに勇者の前では、かなり猫をかぶっていたらしい。


 だがそんな日々も終わりをつげ、それが一転して勇者が負けた理由にされてしまう。


 そして戦わずに待機組として残っていた貴族の息子は、当然のように責任を全てユメリカに押し付けて、自分は関係ないと追放したのである。


 またそれにより後ろ盾を失ったユメリカは、見知らぬ者たちから八つ当たりで、暴力を振るわれていたようだ。


 その中には当然のように、性的な欲望を押し付けようとした者たちもいた。ユメリカは暗がりに連れ込まれて、あわや欲望のはけ口にされそうになったのである。


 だがこの危機的状況で、動いた存在がいた。それこそが、このレイスだったらしい。結果として悪漢たちは倒され、ユメリカはレイスに助けられたのである。


 ちなみにレイスはDランクモンスターだが、一般的に非戦闘員からすれば、危険な存在だ。悪漢たちはドレインタッチにより、一瞬で気を失ったらしい。

 

 またこのときどうしてレイスがいたかというと、どうやらアルハイドは最初からユメリカのことを気にかけており、もしかしたらと思って事前にレイスを派遣していたようだ。


 器だったとはいえ、間接的に関わっていたから意識が向いたのだろう。結果的に、それは正解だったという訳である。


 そうして当時やることがなかったレイスは、その影の薄さを活かしてユメリカを警備していたのである。


 だが当時は助けるにしても、周りに見つかるのは極力避けるようにとも言われていたらしい。なので暗がりに連れ込まれて、ようやく動くことができたようだ。


 故にユメリカとレイスの仲が良いのは、こうした出会いがあったからなのは間違いない。


 またそれが切っ掛けになり、城のダンジョンに来ることを決めたという。元々追放されて帰る場所がなかったので、ちょうど良かったみたいだ。自分を売った両親にも、未練は無かったらしい。


 こうしたユメリカの個人的な部分の情報は、レイスから繋がりを通じて教えてもらった。仲良くしているうちに、そうした話しを聞く機会が何度もあったとのこと。


 そうして城のダンジョンに辿り着くと、アルハイドの計らいでユメリカはメイドになったようだ。また助けてくれたレイスとは約五年間仲良くしながら、平和に過ごしていたらしい。


 これが勇者陣営の待機組のその後と、ユメリカがメイドとして働くようになった理由だった。



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