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374 グインの行方


 俺が目覚めた当初、グインは旅に出たと聞いていた。いったいグインは何故旅に出たのか、俺は気になって仕方がない。


 そしてようやく、グインの旅に出た理由を知ることができた訳だが、その内容は驚きのものだった。


 なんとグインは、嵐属性の魔王の元へと修行に行っているのだという。


 最初聞いたときは、正直意味が分からなかった。倒しに行くためや、強くなるための旅ではない。魔王の元で修行しているという、詳細を聞かなければ突拍子の無い内容だった。


 しかしそこへ至る経緯を聞いたことで、俺は納得することになる。


 どうやら始まりは、この城のダンジョンに嵐属性の魔王候補であるラギウスと名乗る者が、現れたことらしい。


 その者は一見青い肌をした人型種族の青年だったようだが、所々に鱗やエラなどがあったとのこと。


 手にはトライデントと呼ばれる三又の槍を持ち、頭部以外は緑色をした鱗の軽鎧に身を包んでいるらしい。


 他にも特徴として、赤いマントを着けた堂々とした雰囲気であり、またその身長は190cmほど。更に赤い瞳と、腰までの長い金髪をしていたようだ。


 そんな人物が城のダンジョンへやってくると、この場所に嵐属性の魔王候補がいるはずだから出せと声を上げたらしい。


 だが当然嵐属性の魔王候補について、知るはずもなかった。


 なのでそのような者はいないと、最初は追い返そうとしたようである。


 しかしラギウスは嵐属性の魔王様が他の魔王から直接居場所を伝えられたから、間違いないと言ったらしい。


 そこで何か知っている者がいないか急いで話し合いをしたところ、過去の幻の世界で、赤い煙がグインに何かしたということが判明する。


 もしかしたらそれが原因かもしれないと、集まった者たちは考えたようだ。


 だが過去の幻の世界から何かしたとして、現代の属性の魔王に伝わるのかという疑問もあったらしい。


 しかしそれについては、アルハイドが可能だと証言したようだ。なんでもあの空間は過去の幻の世界だが、現代と完全に遮断されている訳ではないらしい。


 行き来するための小さな概念的な穴があり、過去の赤い煙がそれを利用した可能性や、もともと自動的に出口を見つけて、別の属性の魔王に伝えることが可能だったかもしれないという。


 また結果的にこうしてやって来ているので、過去の幻の世界から現代の属性の魔王に伝わったのは、間違いないとの結論に至ったみたいだ。


 そして理由がわかれば、次にグインをラギウスに引き合わせるかどうかの話し合いが始まった。


 だがそこで、一つ問題が起きる。


 業を煮やしたラギウスが、出さないのならこのダンジョンを破壊すると騒ぎ始めたのだ。


 しかしその結果、女王たちが話し合いをしている間に、ラギウスはゲヘナデモクレスにボコボコにされていたらしい。


 ダンジョンの門の前で相手をしていたドヴォールとザグールが、なんとかゲヘナデモクレスを止めていなければ、そのまま倒していたのは間違いなかったようだ。


 もし倒していれば一応嵐属性の魔王候補であり、その魔王の使いなので、面倒なことになっていたことだろう。


 なのでドヴォールとザグールは、かなり(あせ)って必死に止めたらしい。


 だが結果的にゲヘナデモクレスがボコボコにしたことによって、ラギウスはおとなしくなったみたいだ。こちらの言い分を、聞くようになったらしい。


 そこでドヴォールを間に挟み、女王がラギウスと話し合いをして様々な条件の元、グインと合わせることになった。


 ゲヘナデモクレスが常に側にいることで、安全も確保されていたからである。


 そうしてラギウスとグインは対面したのだが、その瞬間、ラギウスは大きく落胆したようだ。


 なんでもこの程度で魔王候補を名乗るのは、おこがましいとのこと。


 また魔王の称号も無く、属性も水は持っているが嵐属性の条件である風属性を未所持。更にこれではダンジョンコアもまともに喰ったことが無いだろうと、見透かされたのである。


 その舐められた態度に、グインは怒りを(あら)わにしたようだ。結果収集がつかなくなりそうだったので、ラギウスとグインとで決闘をすることになった。


 ラギウスもここまで来たからには、元からそのつもりだったようである。


 一応殺すことは禁止というルールを設け、ラギウスとグインの決闘が行われた。


 だがその結果は、散々(さんざん)たるものだったという。


 終始ラギウスが圧倒しており、グインは遊ばれていたようだ。最終的に手も足も出ずに、グインは敗北したという。


 ゲヘナデモクレスにボコボコにされたから強くない印象だったが、ラギウス自身の強さはSランクを超えていたのは、間違いないらしい。


 だとすればAランクのグインでは、負けても仕方がなかった。更に技術面や戦い方でも上回られ、完敗だったとのこと。


 そしてラギウスはグインに対して、嵐属性の魔王の伝言を口にしたという。


 その内容は強くなりたいのであれば、自身の元へ来るようにという事だったらしい。候補の中で頭角を出せば、魔王の座を譲る可能性についても、口にしたようだ。


 ラギウスも候補であるので、正直面白しくなさそうだったが、嵐属性の魔王の命だったので仕方なく言っていたらしい。


 結果として旅に出たという話からついていったのだが、グインも様々な葛藤(かっとう)があったみたいだ。


 しかしそれでも、グインは嵐属性の魔王の元へ行くことを決めたのである。


 ただそこで大陸を渡ることになったので、当時眠っている俺への負担が圧倒的に増えることが問題になった。


 大陸を超えた場合、カードを召喚し続けるために消費される魔力が爆増するからである。


 なので女王からいくつか自分で魔力を維持するために必要なスキル宝珠を譲ってもらい、またゲヘナデモクレスからは、俺から魔力を受け取るのを遮断する方法を学んだらしい。


 その間ラギウスは待つことになったのだが、ゲヘナデモクレスからの説得(・・)もあり、おとなしくしていたようだ。


 もちろんラギウスも待っている間、情報収集をしていたらしい。


 それにより幻属性の魔王が倒されたということに、終始驚いていたようだ。


 また赤い煙を倒したのは、ゲヘナデモクレスだと思っていたらしい。


 眠っている俺については徹底的に秘匿(ひとく)されていたので、周囲もそういうことにしたみたいだ。


 そして魔王を倒した存在であれば、魔王候補に過ぎない自分より強いのは当然だと、ゲヘナデモクレスに敬意を示すようになったとのこと。


 当初は偉そうな雰囲気だったラギウスだが、接しているうちにそこまで悪い性格ではないことも判明したらしい。武人肌で、真面目な性格みたいだった。


 それによりグインのことを任せても、ある程度は問題なさそうだと判断できたようだ。


 加えてそんなラギウスから、嵐属性の魔王についてもある程度話を聞けたらしい。


 嵐属性の魔王は厳しいが優しい魔王のようで、理由なく誰かを傷つけるような存在ではないようだ。


 現在は新たな魔王候補を集めながら、平和に暮らしているという。野心もあまりなく、人型種族とも関係は良好なようだ。


 嵐属性の魔王のことを話すラギウスからは、心からの尊敬などが伺えたので、嘘では無いだろうと考えたらしい。


 また暇な間は他の者とも手合わせをしており、

ギルンとは意気投合していたとのこと。どれくらいかと言えば、ラギウスはギルンもついてこないかと声をかけるほどだったようだ。


 ギルンは少し迷ったが、残る事を選んでいる。それに対してラギウスは残念そうにしつつも、すぐに引き下がったみたいだ。


 そうして準備が終わり、グインはラギウスと共に城のダンジョンを出て行ったのである。


 時期としてはおよそ三年前なので、俺が眠って二年ほど経った時の出来事らしい。


 果たして旅立ってから三年のグインは、無事に嵐属性の魔王の元に辿り着いたのであろうか?


 国境門が閉じると同じ場所に行くことは困難なので、もしかしたら辿り着いていない可能性も考えられる。


 だが魔王候補であるラギウスが城のダンジョンにやってこれたということは、行き先が分かる方法があったのだろう。


 だとすれば帰りについても、何かしらの方法があってもおかしくはない。


 まあどちらにしても、いずれ魔王の座を継がせるための候補だとすれば、長い期間をかけて決めるのだろう。


 下手をすれば決まるのは、数百年後かもしれない。なので辿り着くまで時間がかかっても、あまり関係ない可能性もある。


 そしてもし今後グインが嵐属性の魔王になったのであれば、創造神との約束である残りの属性の魔王の打倒あるいは、配下にするかの一つを満たすことができる。


 また逆にグインが嵐属性の魔王になれなかった場合は、改めてそのときの新しい嵐属性の魔王に会いに行けばいい。


 それに残りの属性の魔王をどうにかするのも、長い期間を要するだろう。


 だとすればグインが嵐属性の魔王の元に行ったのは、俺にとっても悪くはない。


 ラギウスという者の話しを聞く限り、その主である嵐属性の魔王も、あまり無体を強いることはしないだろう。


 だがもし仮にグインへ取り返しのつかない最悪な結果をもたらした場合、許すことはできないけどな。


 そして最終的にグインとの再会がいつになるかは分からないが、実にその時が楽しみだな。


 俺はそう思いながら、グインの旅の行方について、女王から聞くことができたのであった。


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