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SS 老婆になったエリシャの過去 ②

※推奨読了話数149話までくらいです。

 そうした日々が続いたある日のこと、ティニアがクイーンフェアリーを倒しに行くと口にする。


 クイーンフェアリーはエルフと比較的友好的なモンスターであり、エルフの国からは特別に自治区の一つとして、その住処(すみか)を認められていた。


 なのでクイーンフェアリーの住処である妖精の森に攻め込むエルフなど、ほぼ皆無なのである。


 故にエリシャとルフルフは、当然それに反対をした。しかしそれでも、ティニアは止まらない。


 なによりティニアには、大義名分があった。


 この大陸で過ごしてきたことで、三人は国境門のことや、エルフの閉鎖的な気質、何より他種族を見下す性格を知ったのである。


 個人的な記憶がなくとも地球での知識があったことで、これが後々どのような悲劇を生むかについて、ティニアは予想ができていた。


 結果としてティニアはそのことを大げさに前面へと出して、このままではエルフは滅ぼされるか、奴隷にされる未来しかないと告げる。


 これを変えられるのは転移者である自分たちだけであり、きっとそれが、この場所にいる理由なのだと言い切った。


 それによってまだティニアを尊敬していた二人は、その言葉に感銘(かんめい)を受ける。


 またティニアは、クイーンフェアリーには契約に関する特別なスキルがある事を告げ、それがこの大陸を変えるのにどうしても必要であると、二人に話した。


 大きな変化を早急に行うには、犠牲が必要だとティニアは本気で思っている。


 それに対して二人は少々戸惑いながらも、納得してティニアの考えに同意した。


 結果として三人はクイーンフェアリーのいる妖精の森に攻め込み、見事クイーンフェアリーを打倒す。


 その時にティニアは自分たちをエルフたちを導く存在、ハイエルフを自称し始めたのである。


 またクイーンフェアリーを倒したあとに、その場の雰囲気と勢いで、エリシャとルフルフはティニアと契約をしてしまう。


 この時はティニアを助ける気持ちがとても大きく、まるで歴史の一ページの瞬間のようで、少々雰囲気に酔っていたのである。


 後にこれがエリシャにとって悲劇へと繋がるのだが、このときはまだ知る(よし)もない。


 そうして契約の力を得たティニアは、契約によって従えたフェアリーたちに妖精の森を任せて、一度森を離れた。


 理由は、自分たちに従うエルフたちを増やすためである。そのためにティニアたちは、旅を始めたのだった。


 しかしこの辺りからだろうか、少しずつ二人がティニアの性格に、違和感を持ち始めたのは。


 最初は、ちょっとしたことだった。ティニアが少しだけ、わがままになったのである。


 自分の事を優先したり、欲しいものを我慢できなくなっていった。


 それについてエリシャとルフルフも、最初はそこまで気にしていなかったのである。


 だがそれが何日も続き、更には少しずつ悪化していったことで、ようやく不味いことに気がついたのだ。


 けれどもその頃にはもう遅く、出会った頃と比べて、ティニアは別人というほどまでに変化していたのである。


 夜になればいなくなり、朝帰りも当たり前になった。


 そしてエリシャとルフルフを対等な仲間ではなく、自分の手下のように扱い始めたのである。


 当初はもちろんそんなティニアに元に戻ってもらおうと、二人は頑張った。


 けれども結果は上手くいかず、時間だけが過ぎていく。


 またどうしてティニアがこうなってしまったのか、二人には全くもって分からなかった。


 加えてティニアの性格が変わったことで、契約に対する躊躇(ちゅうちょ)や罪悪感などが、ティニアには皆無になっている。


 故に自称ハイエルフに従う者は、想像以上に増えていった。


 中には権力者などもおり、村単位で実質支配している場所も存在している。 


 しかしそんなティニアの変化とは裏腹に、計画は順調そのものだった。


 そうしてそんな日々が続いたあるとき、他の転移者とも三人は出会い始める。


 これがよりティニアに力を与え、状態を悪化させることに繋がってしまう。


 しかしそのことを、エリシャはまだ知らなかった。

 今後解説する機会がおそらく無いと思うので、この場で解説しておきます。


 まず地球が世紀末世界なのに、ティニアがエルフの閉鎖的な気質、何より他種族を見下す性格が不味いという知識があったのには、理由があります。


 ティニアの転移前の前世はいわゆる上級国民であり、特別な街に住んでいました。


 そこで上級国民は、崩壊前の知識を勉強する機会があります。それにより鎖国的な状況や、相手を過小評価して見下すことが不味いことを知っていた感じです。


(なお知っていてもティニア自身が相手を過小評価して見下してしまうのは、また別問題です)


 また上級国民にもランクがあり、ランクの低い上級国民は生まれてすぐに魔石を食べさせられます。


 そして覚醒者になった者だけを、育てる感じですね。上級国民の上澄みを、護衛するために。


 ティニアはそうして覚醒者になり、結果的に異世界に転移することになりました。


 あとは結果論ですが、ティニアが狂わずにエルフの大陸をもし支配していたら、知識はそれなりにあるので、上手く行っていた可能性もあるかもしれませんね。

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