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SS 老婆になったエリシャの過去 ①

※推奨読了話数149話までくらいです。

 自称ハイエルフの集団の中に、エリシャという見た目こそ老婆だが、十三歳の少女がいた。


 しかしこの見た目は、後天的にそうなってしまっただけであり、当初は年齢通りの容姿をしていたのである。


 また元々おどおどした性格であり、引きこもり体質でもあったエリシャ。


 そんな彼女が異世界に放り出されれば、苦労が絶えないのは必然である。


 幸い植物の母という神授スキルのおかげで、野菜や果物を創り出して飢えを(しの)ぐことができた。


 けれども戦闘はからっきしであり、生き物を殺すことにも抵抗があったことで、いつも逃げてばかり。


 エルフの村を見つけても不安からどうにも一歩踏み出せず、関わりを持つことができなかった。


 植物の母で食料や簡易的なシェルターを創り出せていたことで、何とかなっていたことも災いしたのである。


 またついでに服も用意できたことで、衣食住が自己完結していたのだ。


 転移者故に記憶は無いが、本能的に人と関わることを避けていたというのもある。


 結果としてエリシャは、しばらくの間はひっそりとボッチで暮らしていた。


 しかし生活に余裕が出てくると、やはり人恋しくなってくる。だがそれでも村に入るのは、どうにも怖かった。


 どうしようどうしようと、日々悩んでいたエリシャ。


 だがそんなエリシャに、運命的な出会いがやってくる。


 なんとエリシャの元に、後にハイエルフの女王を自称する人物、ティニアがやってきたのだ。


 聞けばエリシャは度々他のエルフに目撃されており、不審がられていた。


 故に冒険者ギルドに、調査依頼が張られていたのである。


 しかし村のエルフは、あまり冒険者ギルドを活用しない。自分たちで大抵のことは、どうにかなるからだ。


 また依頼したエルフ本人にも、少々問題があった。普段から心配性でありながらも、その心配ごとはいつも杞憂(きゆう)に終わってしまうのである。


 それもあって他のエルフたちはまたいつものことだろうと、依頼を受けなかったのだ。


 加えて依頼したエルフ自身も怖がりであり、自分で調査に行く度胸は無かったのである。


 結果誰も受ける者がいなかった依頼を、冒険者になりたてのティニアが手に取ったのだった。


 幸いにも低ランクでも受けられる依頼の割に、報酬が良かったというのもある。


 そうして依頼を受けたティニアが調査に出たことで、運命的にもエリシャと出会ったのだ。


 結果として人恋しく思っていても人と関わる勇気のなかったエリシャは、この出会いに思わず我慢の限界を迎えてしまう。


 ついティニアへと自身が転移者であることや、神授スキルの名称とその効果まで口にしてしまったのである。


 この頃のエリシャは純粋であり、優しくも頼もしい雰囲気のティニアとの会話で、簡単に信用してしまったのだ。


 またこの頃のティニアの方もまともであり、本心からエリシャのことを心配していたのである。


 それに加えて、ティニアも自身が転移者であることを明かしたことが大きい。


 そういう訳でボッチだったエリシャは、ティニアとの出会いを切っ掛けにして、この生活から抜け出したのである。


 更にティニアの仲間として、冒険者にもなった。村に入るのには勇気が必要だったが、ティニアがいたことで、それも乗り越えたのである。


 またエリシャは戦闘こそ苦手だったものの、神授スキルである植物の母が万能であり、また所持していたエクストラも補助系や便利系が多かった。


 逆にティニアは戦闘系ばかりであり、他が疎かになっていたのである。


 故にお互いの足りない部分を補うことで、様々な相乗効果を生み出していった。


 この頃にはティニアのことを、エリシャはお姉ちゃんと呼んで慕っていたのである。


 また強いモンスターに襲われているルフルフを助けたことで、彼女も仲間に加わった。


 ルフルフも転移者であり、同じ女性ということもあって、仲間に加わることにも抵抗は無い。


 他にもルフルフの性格は優しく、真面目で頼りになる人物だった。これにはエリシャも以前の人見知りが嘘のように、すぐに懐いたほどである。


 ルフルフも年上であり、最年少のエリシャは新たなお姉ちゃんの登場に喜んだ。


 この時がエリシャにとって、一番幸せなときだったのは確かだろう。


 しかしそれは、残酷にも徐々に変化していく。


 ティニアが少しずつおかしくなっていったことで、その歯車が狂い始めたのだった。


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