SS ボンバーという男
※推奨読了話数136話までくらい。
自称ハイエルフの一人、ボンバー。
短髪で、筋骨隆々の脳筋エルフだ。
声が大きく、大雑把。自分で決めることが苦手な性格をしている。
故にいつもは、誰かの指示を受けて行動をしていた。しかし指示された内容から逸脱して、悪さをすることもしばしば。
そんな欠点があるものの、戦闘能力はとても高い。
特に神授スキルの【スパークボンバー】は、超攻撃型の神授スキルである。
魔力を消費することで、爆発する電撃の球体を放つことができる神授スキルなのだ。
しかも隠し効果によって地雷のように設置することもできたり、細い線のように爆発する雷撃を放つような使い方もできる。
また爆発を利用して、空中を高速移動することも可能だった。
正面から攻撃を受ければ、Aランクモンスターも容易に倒せてしまう。
シンプルでありながら、多様性に富んだ高性能の神授スキル。それが【スパークボンバー】だった。
故にボンバーの性格面に問題があると理解しつつも、他の自称ハイエルフたちは見逃してきたのである。
しかしそんなボンバーのエクストラは、おかしなものばかりだった。
その理由は、ボンバーがキャラクターメイキングの際に全てのポイント、つまり100ポイントが必要なランダムを選んだからだ。
実際にそのステータスを見れば、それは一目瞭然である。
名称:ボンバー
種族:エルフ35p
年齢:32
性別:男
種族特性
【無属性適性】【小波】【パワーアップ】
【魔力上昇(小)】【魔法耐性(小)】
神授スキル
【スパークボンバー】
エクストラ
【重装備不可】+5【バッタの友達】3
【拳適性】10【ラッパの奏者】3
【恐怖耐性(大)】10【ミルク生成】3
【鷹の目】5【身代わり人形】10
【同族言語習得】1
スキル
【強打】【連撃】【鉄の拳】
【中級鑑定妨害】【隠密】
【シールド】【警戒】【挑発】
もし仮にこれらのエクストラをキャラクターメイキングで普通に選んでいた場合は、このような点数になる。
またそれらを合計した場合、75ポイントだった。
ちなみに重装備不可は、デメリットスキルであるため、逆にポイントが増える。またこのデメリットは、通常では選べない希少なものだった。
キャラクターメイキングで選べるデメリットは、腰痛+3ポイントだったり弱視+3ポイントなど、デメリットらしいデメリットが多い。
重装備不可などといった、重装備をそもそも装備しなければ実質デメリット無しのような部類は、通常選べないのである。
なのである意味、ランダムで選ばれるデメリットの中では当たりの方だった。
しかしそれでもボンバーは、ランダムで100ポイントを消費したのにもかかわらず、総合的な結果では損をしている。
また得られたエクストラも、役に立たないものもそれなりにあった。
なのでもし仮にボンバーの神授スキルがショボかった場合、おそらく悲惨な結果になっていたことだろう。
ランダムで優秀なスキルを得られる可能性もあるが、実際はこのようになる場合が多いのである。
故にランダムに賭けるよりは、自身の神授スキルを基準にエクストラを自分で選んでいった方が、最善なのだ。
しかしボンバーは自分で決めることがあまりにも苦手であったため、エクストラを選ぶことができなかった。
故に一定時間の経過と消極的な場合に現れる、このランダムに賭けてしまったのである。
ちなみにこのランダムを選ぶまでにも、相当の時間を要していたが、それは割愛しておく。
そうしてランダムを選んだ結果は、散々なものだった。ボンバーもこの事実に、当初はかなり荒れたのである。
一度ランダムを選ぶとやり直すことは不可能であり、そのまま異世界に転移してしまうことを知らなかったというのもあった。
しかしそれにより荒れていたボンバーだったが、神授スキルが優秀であったことで、後に調子を取り戻した経緯がある。
またその後は様々なことがあり、自称ハイエルフの集団にボンバーは加わった。
自分で決めることが苦手なボンバーにとって、何も考えずに言われた通りに暴れられる環境は、居心地がよかったのである。
加えて多少欲望に忠実な動きをしても、見逃してもらえるのだ。
自分で決められない分、身体が勝手に動くような本能的な部分では、逆にボンバーは我慢があまりできない。
故に自称ハイエルフの集団は、ボンバーにとっては最高の居場所だった。
だがそんな日々も続き安定し始めれば、ボンバーにも醜い野望が生まれ始める。
いずれは自分こそが自称ハイエルフの王になるべきだと、ボンバーはそう考え始めていたのだ。
加えて面倒なことは配下が全て決めれば問題ないと、そう思っていたのである。
しかしそんな野望を抱きながらやってきたダークエルフの村で、ボンバーはまさかの敗北を喫することになった。
結果その醜い野望は、誰にも知られることなく終わってしまう。
また自身を殺した相手が誰なのかも知らないまま、ボンバーはその身を焼かれたのである。
優れた神授スキルを持ちながらも、こうしてボンバーはこの世から退場したのだった。