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倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~  作者: 乃神レンガ
第十章

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366 VS赤い煙の裏側で

 ※女王の視点です。 


 ジン君たちが赤い煙たちと戦っている間、私はダンジョンコアの制御に勤めていた。


 事前に赤い煙がダンジョンに何かする可能性は、非常に高いという考えで一致していたからよ。


 その結果として、実際にダンジョンを支配されかけてしまう。正直事前に身構えていたけど、このままでは支配されてしまいそうだった。


 けどそのとき、ヴラシュ君がダンジョンコアと融合してしまったの。神授スキルが(こた)えてくれたと言って、気がつけば光の粒子になってダンジョンコアに吸い込まれていった。


 そのとき私は支配されないために抗うので精一杯で、止めることもできなかったわ。でもヴラシュ君のおかげで、赤い煙からの支配から逃れることができた。


 加えてダンジョンコアの能力が拡張されて、色々な事ができるようになったり、様々な条件が緩和された事を理解したの。


 またヴラシュ君は、ダンジョンコアと融合しても生きている。それが私には分かった。それに周囲には、ヴラシュ君がジン君にもらったアンデッドが召喚されたままだったというのもあるわ。


 でも同時に、この融合から元に戻せないことも理解したの。おそらくダンジョンコアとの融合には、そうした事も代償として払う必要があったのかもしれない。ダンジョンコアと私は繋がっているので、そのことがよく分かった。


 これには申し訳ない気持ちと、自分の情けなさに苛立(いらだ)ちを覚える。けど、ヴラシュ君の覚悟を無駄にするわけにはいかなかった。


 だから私はジン君が赤い煙を倒してくれるまで、この城のダンジョンを守り切らなければいけない。


 けどそんな心構えをしてから少しして、大きな試練が訪れる。


 それはジン君が赤い煙によって、どこかに連れ去られてからのことだった。突如としてジン君のコストが、異常な上昇を見せたの。


 ダンジョン内の出来事は本来なら把握できるはずだったけど、別の場所に隔離されているからか、詳しいことは何も分からない。


 けどコストが上昇したということは、ジン君が大きな賭けに出たのだと理解した。


 事前に融合のことは伝えられていたので、その準備は万端……そう思いたかったけど、二回目の融合分のコストを支払うのは、かなり痛い出費だと言わざるを得ない。


 ジン君はいなくなる前に、一度融合をしている。その時にもコストが跳ね上がっていた。


 正直その時点でも厳しかったけど、この二回目でダンジョンポイントの貯えがほぼ底をついてしまったわ。


 でもそれだけコストが上昇したのなら、勝てるはず。このとき私は、そう思っていた。


 しかしその後この上昇がかわいく思えるほどに、ジン君のコストが異常な上昇をし始める。


 こ、これは……無理だわ。


 残った僅かなダンジョンポイントは一瞬で無くなり、このままコストを払わなければ、ダンジョンが崩壊するのも時間の問題になってしまう。


 まさかジン君のコストが多くなりすぎて、崩壊の危機を迎えるとは……。


 ここでジン君にポイントの事は気にせずに頑張ってと言ったことが、裏目に出てしまう。


 でも、ここまでしなければ、赤い煙を倒せないということよね。なら、これは私がどうにかしなければいけない。


 するとそこで、私はあることに気がつく。


 それは本来なら侵入者がいる時はダンジョン内の変更が難しいところ、ヴラシュ君がダンジョンコアと融合したことで、それが可能になっていたことだった。


 これなら、行けるかもしれない。


 私は即座に財宝や使用していない武具、今回手に入れたダンジョンポイントや侵入者から得た装備などを、ダンジョンポイントに変換していった。


 このときじいが途中で止めてきたけど、崩壊したら全てを失ってしまう。だから国宝も、ダンジョンポイントに変換した。


 またダンジョン内の道や部屋、建物などの大部分を消して、ダンジョンポイントに変える。まだ侵入者が残っていることは理解していたけど、崩壊するよりはマシだった。


 するとこれでようやく、崩壊の危機を免れる。でも当然ダンジョンの変化に気がついたのか、残された侵入者たちの動きが変ってしまう。


 ダンジョンから脱出しようとしていた一団が、再び城内を目指し始めたようだった。おそらくダンジョンの変化を見て、城内に入った勇者たちが優勢だと思ったのかもしれない。


 城内の戦いには参加しなかったのに、勝ちそうと思えば向かってくるなんて、なんて図々しい者たちなのだろうか。


 しかしそんな者たちでも、ランク自体は高そうだった。勇者たちと共に城内に入った者たちよりは弱そうだけど、私たちだけで倒すのは難しい。


 なにより私が戦うということは、ダンジョンコアから離れるということを意味していた。


 じいとシャーリーだけでは、とてもじゃないけど勝てそうにはない。


 幸い侵入者全員が城内に向かっているわけではなく、一部の者はそのまま脱出することを目指している。また中にはその場で動かず、城に向って祈りを捧げている謎の集団もいた。


 一応じいとシャーリーが倒されなければ、私が戦うことはない。また戦闘を有利に進めるための、仕掛けもある。だけどそれでも、勝率が低いと言わざるを得ないわ。


「女王様。ここは儂らにまかせてくだされ。このエンヴァーグ、女王様の敵を見事に討ち取ってみせましょうぞ!」

「ここは任せて待っていてください。ジンさんが敵を倒すまで、時間を稼いでみせます。そうすれば、助けが来ると思いますので。

 それに大丈夫です。別に、倒してしまっても構わないのでしょう? ふふ。これは、ヴラシュ君がいつか言ってみたいとおっしゃっていたので、私が使わせていただきました」


 すると二人はそう言って、侵入者たちを迎え撃つために行ってしまった。


 そこに不安な感じは、一切ない。加えてシャーリーは私の緊張を和らげるために、そんなことを口にしていた。


 私はそれにより、自分自身が今何をするべきなのかを改めて考える。けど、その答えは簡単だ。そう、ジン君が勝って戻ってくるまで時間を稼ぎ、この城を維持すればいい。だから私は、そのためにできることをする。


 ヴラシュ君がダンジョンコアと融合したことで、侵入者がいてもダンジョンをある程度変更できるようになった。


 なら侵入者が簡単に辿り着けないように、進む先を変更し続ければいい。


 またジン君のコストがまた上昇しても大丈夫なように、消しても大丈夫なものをあらかじめ取捨選択していった。


 するとそれから少しして、ジン君のコストが更に跳ね上がる。それも先ほど以上に、爆発的な上昇だった。


 流石にこれは、予想外にも程がある。明らかに、支払える許容量を大きく越えていた。予想を越えたそれに、私の動きが止まる。

 

 けどそのとき、ヴラシュ君がまた何かをしてくれた。それは交友を深めた上で私への好感度が高い者ほど、コストが軽減される効果らしい。結果として、一気に全体のコストが減少した。


 じいやシャーリー、ヴラシュ君に至ってはコスト0という破格の数値であり、ジン君もコストがかなり減少している。


 一応効果範囲はアンデッドが主体であり、闇冥属性を所持している者も、それに劣るがコストが減少するようだった。


 ジン君の場合、後者が影響したのだろう。またジン君の配下にいるアンデッドにも、多少は効果が出たのかもしれない。


 そうしてこれによって、追加の支払いが無くなった。破滅の危機を回避したことで、無いはずの心臓が落ち着きを取り戻したような錯覚(さっかく)に襲われる。


 ヴラシュ君には、また助けられた。彼がいなければ、とっくに破綻していただろう。


 それとこのコスト軽減の代償として、これからは安易に守護者を作る事ができなくなってしまった。


 作るにしても、莫大なコストが必要になってしまうらしい。でも崩壊することに比べたら、なんて事はないわ。


 それよりも今回のことで、ヴラシュ君とダンジョンコアの融合率が更に進んだみたい。先ほどよりも、ヴラシュ君の意志が希薄になってしまった。


 まるでヴラシュ君がダンジョンコアを通じて、私の一部になってしまったような感覚がする。


 加えてだからだろうか、ヴラシュ君の私への想いが、直接伝わって来てしまう。


 薄々分かっていたけど、ヴラシュ君は私のことを女性として好きだったみたい。こんな骸骨のアンデッドの、どこが良いのだろうか。


 いえ、何が良かったのかも、本当は伝わってきていたから理解している。


 同時にヴラシュ君の種族はヴァンパイアで、正確にはアンデッドではない。それでも先ほどコストが0だったのは、私への想いがそれだけ強かったことを意味していた。


 それにおかしな話だが、ヴラシュ君はアンデッドである私に生きてほしいみたい。本当にもう、馬鹿な子だわ。


 だからなおさら、私はこの戦いを無事に終えなければいけない。


 ヴラシュ君はダンジョンコアと融合してしまったし、ジン君も私の想像の及ばない対価を支払って、一時的に強くなっている可能性が高かった。


 それにじいやシャーリー、また他のみんなも頑張ってくれている。だからここまできたら、私も負けたくはない。


 本当は私も戦いたいけど、それは最終手段。私はこのダンジョンのダンジョンボスであり、この城の女王。前に出る訳にはいかないわ。


 だから私はここでダンジョンを維持しながら、みんなが勝つことを切に祈るのだった。


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