365 称号効果と代償
アナウンスも終わり、予想外のリザルトを得た。大量のポイントの使い道は、また今度考えることにしよう。
それよりも、手に入れた称号の効果を確認してみることにした。
俺は順番に一つずつ、称号の効果を確認していく。
名称:真の効果の名手
効果
・神授スキルの真の効果に対し、以下の効果を得る。
【代償半減】【消費神力減少(中)】
【操作力上昇(大)】【発動速度上昇(大)】
まず一つ目は、真の効果の名手である。その中の代償半減は、とてもありがたい。
ただ称号を得たのは赤い煙戦後なので今回は適応されないが、次回からは代償が半減されるだろう。
他の効果もかなり有用だ。今後真の効果を使うにあたって、大きな力になると思われる。
名称:神滅属性の名手
効果
・発動する神滅属性に対し、以下の効果を得る。
【変換効率上昇(中)】【神滅属性耐性(中)】
【操作力上昇(大)】【発動速度上昇(大)】
次に二つ目は、神滅属性の名手だ。おそらく変換効率上昇(中)とは、神力を神滅属性に変換するときの効率のことだろう。
神滅属性は実のところ、神力を変換することで生成することができる。
だがその変換効率はとても悪く、多用することは現状だと不可能だ。しかしこの変換効率(中)のおかげで、それが多少は楽になるかもしれない。
そして今後俺以外にも、神滅属性を使える者が現れる可能性がある。その時に神滅属性耐性(中)は役に立つだろう。
あとは神滅属性の扱いはとても難しいので、操作力上昇(大)はかなりありがたい。発動速度上昇(大)と合わせて、今後の神滅属性に活かしていこうと思う。
そして最後は、お待ちかねの森羅万象の天敵である。だが普通に、ぶっ壊れだった。
名称:森羅万象の天敵
効果
・この称号の発動には、神力を必要とする。
・任意で自身の与えるダメージが300%+統合した数(6)×50%上昇する。また発動%を調整することも可能とする。
・任意で自身が受けるダメージが300%+統合した数(6)×50%減少する。超過した分は相手の減少系、貫通系の効果などと相殺することが出来る。また発動%を調整することも可能とする。
・獲得するポイントが5倍になる。この効果には神力を必要としない。
以前の転移者の天敵とは違い神力を使う必要が出てしまったが、それでもこれはヤバイ。
任意で与えるダメージが最高で600%上昇し、受けるダメージに至っては最高で600%減少である。意味が分からない。
一応受けるダメージは100%減少で、ダメージを0にできるのだろう。そして超過した500%を、相手のスキル効果の相殺に使えるらしい。
おそらく相手の守りを50%貫通するなどの効果があった場合、その50%を超過した500%の中の50%を使って相殺できるのかもしれない。
また普段のダメージに関係するやっかいなデバフなどにも、発動できる気がした。
たとえば継続的に相手の生命力に〇%分のダメージを与えるとか、受けるダメージが常に〇%上昇するとかそんな効果にも、使えるかもしれない。
また消費する神力は相殺する効果のほどによって上昇しそうだが、対処の難しい効果が相殺できるのはとても優秀だ。
また獲得するポイントが5倍になるというのも、かなりぶっ壊れである。つまり俺の場合、二重取りで実質10倍になるということだ。
これまで転移者一人を倒した時のポイントは40だったのが、これからは100になるということである。
先ほどの獲得ポイント数で感覚が麻痺しているが、これもかなりヤバイことだ。
そして後の二つがぱっと見だと目立っていたが、一つ目の与えるダメージが600%上昇もぶっ壊れている。つまり100%で2倍なので、600%だと通常の7倍の威力になるということだ。
もし仮に7倍の魔力玉を放出した場合、その威力は一発で街を滅ぼすほどになるかもしれない。
また魔神剣に神滅属性を付与した上で剣系スキルを使い、7倍ダメージを発動させた場合凄いことになるだろう。
もしかしたら、無傷の赤い煙を一撃で倒せる威力が出るかもしれない。
正直この森羅万象の天敵の称号一つだけで、俺は間違いなく大幅に強くなってしまった。
これは自惚れとか舐めているのとかではないのだが、冷静に考えて、現状俺より強い転移者は果たしているのだろうか?
称号獲得時に、転移者初とアナウンスが言っていた。なので属性の魔王や勇者などを倒した転移者は、現状いないことになる。
いや、もしかしたら倒せる機会が無いだけで、それくらい強い転移者もいるかもしれない。
だがそれでも、現状の俺が負けるイメージが全く湧かなかった。
けどそれは、現状ということに過ぎない。俺が急激に強くなったように、他の転移者も一気に強くなることもあるだろう。
それに忘れそうになるが、アルティメットフュージョンの代償をこれから支払う必要があるのだ。
これは神授スキルの真の効果ではなく、隠し効果なので真の効果の名手による代償半減も意味を為さない。
またレフのアポストルスモンスターのエクストラによる、【仕える神との融合などに起因するデメリットが無くなる】という効果も、レフの分だけであり、アンクとゲヘナデモクレスとの融合分は無くなってはいなかった。
加えて俺自身も代償の数に入っており、その分代償は増えている。つまり代償は俺、アンク、ゲヘナデモクレスの三つ分となる感じだ。
それとアルティメットフュージョンの代償は、発動した時間と受けたダメージによって変わる。赤い煙との戦闘時間は実際には短かったが、どれほどになるかは未知数だ。
少なくともレフの分が無くなっているので、四分の三で済むのはありがたい。
そして肝心の代償だが、その内容は解除時に発動者、つまり俺が眠りにつくというものである。
一見その程度かと思われるかもしれないが、どれだけ眠ってしまうかは分からない。もしかしたら、数百年とかもあり得るのだ。
アルティメットフュージョンを成立させるのは、やはり相当無理があったみたいである。
であれば解除せずに一生このままなら関係ないと思うかもしれないが、このアルティメットフュージョンの発動時間は最大で一時間までだ。
なので逆に早く目覚めるために、一時間経つ前に解除する方がいいのだろう。
なので今回のリザルトで俺は強くなったが、眠っている間に他の転移者に追い抜かされる可能性もあるのだ。
長命種の転移者であれば、普通に数百年は生きているだろう。その時に目が覚めれば、手が付けられない相手になっているかもしれない。
いや、それならまだやりようがある。問題は、眠っている間に俺が殺されることだ。
もし仮に眠っている時間が数百年の場合、その分だけ無防備な状態を晒すことになる。
それに俺が眠り続けるであろう、この城のダンジョンがどうなるかも分からない。
だからできれば、もっと早い段階で目覚めることを祈るしかないだろう。
そう思いながら、俺は先にあることをすることにした。
このあと眠るのならば、先にアルハイドの魂をどうにかしておいた方がいいな。
俺は魂庫に入っているアルハイドの魂と、ストレージに収納しているアルハイドの肉体を取り出す。
肉体は過去の世界の幻だが、アルハイドによる幻属性の極みによって作られているらしい。
放置されれば消えてしまうらしいが、アルハイドの魂があればそれも変わるようだ。
そうして取り出したアルハイドの魂は吸い込まれるようにして、床に寝かしているアルハイドの肉体へと入っていく。
するとアルハイドの肉体は一瞬光ったと思えば、途端に呼吸をし始めた。無事に魂が、肉体に宿ったようである。
また見ればアルハイドは眠っているみたいであり、すぐには起きないようだ。
よし、これで無事に戻れたみたいだな。アルハイドの復活も、問題なくできた。これでとりあえずは、大丈夫だろう。
加えて本当は女王にも説明するべきだろうが、そんな時間は残されてはいない。だが説明については、別に問題は無いと思われる。
これから眠るのは俺だけだし、説明は配下たちにまかせればいい。繋がりを通じて、配下たちには既に説明は済んでいる。
ただ眠るにしても心残りなのは、倒された配下たちがまだ復活時間を満たしていないので、召喚ができないことだ。これについては申し訳ないが、俺と共に眠ってもらうことになる。
さて、これでやることは、たぶん終わっただろう。早く起きるためにも、ここでもう終わりにするか。
そうして俺は、アルティメットフュージョンを解除した。すると体が光り輝き、何かが抜けていく。見れば周囲には、レフ、アンク、ゲヘナデモクレスが立っていた。
「後のことは頼んだ。俺が目覚めるその時まで、俺の体とこのダンジョンを守ってやってくれ。女王を助けてやってほしい。
それとゲヘナデモクレスとの約束だが、申し訳ないが延期させてくれ。そしてこれは俺のわがままだが、ゲヘナデモクレスにもここを守ってほしい。
まだ配下ではないが、お前が俺の配下の中で一番強い。だから、頼んだぞ」
俺はアルティメットフュージョンを解除すると同時に襲ってきた耐えがたい眠気の中、そう頼み込んだ。
「にゃふふんっ! にゃにゃん!」
「ガァ、ダーリン、まかせて!」
「ふ、ふんっ、よ、よかろう! 汝の力は十分に見させてもらった。そもそも決闘は、汝が我にふさわしいかを確認するためのものである! ゆ、故に、仮ではあるが、あ、主として認めようではないか!
だから安心して眠るがよい! あ、主の眠りを妨げる愚か者は、我が打ち滅ぼしてくれよう!」
どうやらレフとアンク、そしてゲヘナデモクレスは、俺の頼みを聞き入れてくれたようだ。
「グォオウ!」
「ごしゅ~! 私もごしゅとみんなのこと、守るよ~!」
またグインとリーフェも、力になってくれるらしい。これだけの戦力があれば、大抵の敵は退けられるだろう。
ついでに俺は最後の力を振り絞り、ネームドの生き残りであるアロマと、今回出番がなかったクモドクロ、そして一部例外を除き、残っていた他の配下たちを全て召喚した。
するとその途端に俺は足の力が抜け、後ろ向きに倒れる。だが頭部に強い衝撃は無く、サイズが大きくなったレフの柔らかいお腹に受け止められていた。
やっぱり眠るときは、レフが枕になってもらうに限るな……。
「にゃぁん」
「ああ、おやすみ」
そうして俺は赤い煙との長い戦いを終え、眠りにつくのであった。